【No.12】
高等教育開発・支援系/部門ニュースレターNewsletter 第12号(3/16)

PDF版:2019ニュース(12号)

 

スタンフォード大学d. school・ファカルティ・ワークショップ参加報告

高等教育開発・支援系/部門長 吉永契一郎

2004年に設立されたスタンフォード大学d. schoolは、MITのメディア・ラボと並ぶ、イノベーション教育のメッカであり、デザイン思考を提唱・実践している場として知られている。ここは、共同利用施設として、学部生や大学院生が、自由に制作活動を行うことができる他、地域や他大学に開放した研修活動も多く行っている。今年度、1月10日から14日まで開催されたファカルティ・ワークショップに参加する機会があったので、ここで報告したい。

5日間のワークショップには、48名が参加者した。アメリカ以外の参加国は、日本、台湾、中国、香港、シンガポール、レバノンである。多くは、大学教員であるが、数名、大学職員も参加していた。それに対して、教授陣は、講師が5名、助手が2名、コーチが6名という充実ぶりで、グループワークは、通常、4名で実施された。

なぜ、今日、デザイン思考が注目されているのかは、知識基盤社会の台頭と切り離すことができない。産業社会においては、作り出す製品・サービス・工程が定まっており、大学教育も、専門性の体系を重視し、定められたカリキュラムを段階を追って習得することに主眼を置いてきた。そのため、学生のオリジナリティが発揮されるのは、卒業研究以降、大学教育の最後の段階になってからである。これに対して、知識基盤社会においては、まず、社会的ニーズやデザイン、ビジネス・モデルを考慮に入れた製品やサービスの発想から始まる。その上で、知識や技能の習得がなされ、場合によっては、専門家に委託することもある。そのため、大学教育においても、早期の段階から、自由研究やプロジェクト・ベースド・ラーニングにおける試行錯誤・課題探求・問題解決が重視されるようになってきている。

すなわち、知識基盤社会においては、これまでのように分業体制において、個人が限定された領域において専門性を発揮するのではなく、少人数のグループが、観察・課題発見・発想・模型・検証という5つの段階を繰り返すことによって、製品やサービスを生み出し、マネジメント自体も常に変革を伴う。ここで求められるのが、デザイン思考である。今回のワークショップにおいて、最終目標は教育や学習をどのように変えるかということであり、具体的には、FDをどのようにデザインするかということである。

デザイン思考の5つの段階を経験するために、4人のグループは、3つのテーマに取り組んだ。それらは、(1)空港をより快適にすること、(2)学校教育の外での学び、(3)レストランでの長い列の活用法である。(2)では、キャンパス内での街頭インタビューや試供品のテストを取り入れ、(3)では、学外からのボランティアがグループ活動に加わった。同じグループ活動であっても、(2)と(3)が加わることによって、意見は多様になり、議論が活発化し、4人では気づかなかった視点を獲得することができた。

課題発見・発想において用いられるのが、ポスト・イットを用いたブレイン・ストーミングである。日本ではKJ法として知られている。関連するアイデアをポスト・イットに書いた後、ボードやテーブル上で、グループ分けをする。ブレイン・ストーミングに特徴的なことが3つある。一つは、制限時間を3分、5分など極めて短くしていることである。これは、思考に時間を費やす日本人には違和感が持たれるものであるが、右脳の活性化にはなっている。もう一つは、ブレイン・ストーミングの途中で、「低予算」、「女性限定」、「屋外」など、恣意的な限定条件を付け加えることである。このような限定は、時として、独創的なアイデアを生み出す。そして、最後は、質よりも量である。これは、実際、製品開発の現場で行われていることであり、少数のアイデアを熟考するよりも、多数のアイデアから選ぶ方が効率的・効果的であるという事実に基づいている。当然のことながら、このグループ活動においては、専門性も準備も問われていない。そのため、すでに実現されているようなアイデアが出てくることも事実である。しかしながら、ありふれたアイデアであっても、その説得力に耳を傾けること、関連事実をもう一度確認することは、自分自身のプレゼンテーション技量を改善するために、貴重な機会である。

ワークショップを通じて言えることは、デザイン思考においては、社会的・情緒的側面が重要なことである。グループ活動では、まず、アイス・ブレーキングに時間をかけている。そして、優れた回答も愚かな回答もないことが強調され、発言は、まず、称賛で受け止めることが奨励される。これは、何より、メンバーが心理的な抵抗感を下げ、どのような意見であっても尊重されるという意識を持つためである。デザイン思考において重要なことは、積極的な姿勢であり、どのような意見に対しても、決して否定的なコメントはしない。実際、グーグルの社内調査では、グループが業績を上げるための条件は、メンバー個人の才能や天才の存在ではなく、メンバー間の安心感や信頼関係であることが知られている(「プロジェクト・アリストテレス」)。教育改善の手法として、相互授業参観が有効であることは知られているが、日本において、自分の授業を公開すること、また、他人に批評されることに抵抗を示す教員は多い。これは、同僚間に、安心感や信頼関係が構築されていないことを示すものである。

グループ活動を活性化するためには、他の仕掛けもある。ペアで、交互に1から3までを数えるゲームでは、3のかわりに手拍子や足踏みを入れることで、より熱中度が高まり、親近感を増す。また、ジャンケン・ゲームでは、負けた人が勝った人の応援をすることで、最終的に、全体が二つのグループになって、盛り上がる。あるいは、同じテーブルで、厚紙や発泡スチロールを用いた模型作りも、手を動かす作業自体が楽しい上に、対話の機会を増やす。さらに、参加者全員の一体感を生み出すのに最も効果があったのは、ダンス・レッスンである。軽快なリズムに乗って、様々なダンスを踊った後では、参加者が非常に親密になった。アクティブ・ラーニングは、身体表現を含む自己表現の機会でもある。

グループ活動とは別に、コーチとは、1対1でレッスンを受ける機会もあった。ここで、報告者は、「大学内でアクティブ・ラーニングを浸透させるには」というテーマを選んだ。最初は、漠然とした提案を行ったが、ここで厳しく指摘されたのは、期限、目的、対象者、得たい結果、結果を証明するものは何であるかということである。最終的には、まず、小さな規模で、一つのアクティブ・ラーニングを実施し、その効果を宣伝することによって、アクティブ・ラーニングを広めることが適当であるというアドバイスを得た。

最後に、デザイン思考に関連して、ライフ・デザインということが強調されていたことにも触れたい。それは、単に教育方法を学んだり、改善したりするだけではなく、自分が何が好きで、何を目指しており、どのような懸念を抱えているかを、常に意識するということである。教育が人間的な営みである以上、教育者の意欲や価値観と切り離すことができない。デザイン思考も教育も、その根源を辿れば、生き方や哲学、人間関係によって規定されると言えよう。

 

2019年度高等教育開発・支援部門シンポジウム「高大接続の課題と可能性」報告

高等教育開発・支援系 堀井 佑介

 

2019年12月22日(日)に金沢商工会議所において、鈴木久男氏(北海道大学総合教育部・部長)、斉藤準氏(帯広畜産大学講師)、渡曾兼也氏(金沢大学附属高等学校教諭)の三氏を講師として、2019年度 高等教育開発・支援部門シンポジウム「高大接続の課題と可能性」が開催された。同シンポジウムは、アクティブ・ラーニングに代表されるように、知識基盤社会を迎え、大きく変わろうとしている大学教育および2020年度から実施される大学入試改革、2024年度から実施される新学習指導要領により、学校教育のあり方、学力の測り方が大きく変わる高等学校の両面から、実践事例報告、現状の課題共有を行うことで、高大接続を考える機会となることを目指したものである。石川県内を中心に50名以上の参加があった。

全体の趣旨説明の後、渡曾氏からは、金沢大学附属高校での物理授業におけるアクティブ・ラーニング、共同学習の事例紹介の後、大学入試改革・共通テストについて、ペーパーテストの公平性、調査書・ePortfolio活用の課題などが提起され、高校においてアクティブ・ラーニングは自然な流れであること、能力、学力の多様化が進む中、高校・大学の相互理解促進に資する高校現場と大学を接続する人材の必要性などに言及された。

斉藤氏からは、大学物理基礎科目におけるアクティブ・ラーニングの実践とその評価について、米国、シンガポール、香港視察の情報も盛り込みながら報告が行われた。加えて、帯広畜産大学での取り組みとして、ジグソー法、LMS(Moodle)、反転授業動画、授業スライドなどを活用した授業での成績評価と学生アンケート結果に基づき、ジグソー法の有効性やログ解析による学習態度の可視化などの成果が上がっている点などが報告された。

鈴木氏からは、学力測定の信頼性確保検証のため実施された北海道大学模試について詳細なデータ分析、思考力を筆記試験で測れるのかなどについての報告がなされた後、高校成績と大学成績の課題として、大学では授業時間数に比して知識量が多く、それらを削ることも難しい点が指摘された。さらに、学力だけでは入学できないアメリカの大学受験事情を紹介した上で、入試時点での学力重視なのか、将来性(ポテンシャル)重視なのか、入学者選抜における公平性、平等性など幅広く深く高大接続の課題を取り上げられていた。

参加者アンケート結果での「今回の研修会は、刺激になりましたか」、「今回の研修会は、期待に沿う内容でしたか」、「今回の研修会は、今後の授業改善・研修開発に繋がりそうですか」などの設問に対して、4件法で肯定的な回答が90%以上と概ね好評であったことが確認出来た。また、自由記述からも参考になった、印象に残った、考える機会になったなどの声が確認出来た。これらの発表内容、アンケート結果を踏まえ、今後も、再検討となった高大接続改革・大学入試改革に注目し、部門として高等教育関係者に資する調査研究、成果報告に努めていきたい。

 

 

サバティカル研修報告(その4):ファカルティ・ラーニング・コミュニティ

高等教育開発・支援系 杉森 公一

専門職業人による学習コミュニティの一類型である、ファカルティ・ラーニング・コミュニティ(FLC)は、米国の初中等教育から高等教育に広く取り組まれ、省察的教育実践を促す手法として注目されている。古くは、実践共同体(Community of Practice)として位置づけられるような教員ミーティングの色合いを帯びているが、管見では、一過性の研修を越えて持続的な研究グループの形成と見ている。高等教育の文脈では、FD特定のテーマに関心のある学部等の教員で構成されることが多く、少人数集中研修(インスティテュート)、合宿(リトリート)、コホート形成(フェロー制度)などの手法が発展し、多様なFLCとして取り組まれている。

元となった語であるプロフェッショナル・ラーニング・コミュニティ(専門職業人の学習実践共同体)は、学校組織改革との関連で言及されており、以下の5つの要素を持つ。

・学習に向けた信念、価値観、ヴィジョンの共有

・共有された支援的なリーダーシップ

・集団的な学習とその応用

・構造的・関係的な支援的条件

・個人的実践の共有 (Hord & Sommers 2008, 三品陽平 2017)[1]

本邦で初めに紹介されたFLCの定義では「ティーチング・サークル(6~8人が、共通のテーマについて学期単位で定期的に集まる)に比べて、持続性と情報の供給源の両方においてよりも広範囲にわたるFDであり、教員を支援する。FLCは、学期単位、もしくは、学期よりも通年単位の方が多いが、通年にわたって重点事項を取り上げ、さまざまな専門分野の教員8〜10人で構成される」 (ガレスピーら2014)[2]とされる。

これまで紹介してきたように、タフツ大学CELTにおけるFLCの類型には、ティーチング・スクエア(=ティーチング・サークル)、アクティブ・ラーニング・コンソーシアム(大人数講義をテーマにした、月例ワークショップ)、ブッククラブ(毎月、分野別・テーマ別に開催)、授業設計インスティテュート及びアセスメント・インスティテュート(4日間集中)、CELTフェロー(学期ごとにコホートを形成)などがあり、特徴として、

・学際的 ・8~12名 ・逆向き設計方式

・活動と振り返りの場 ・講義型ではなく実践型

・教員個別の課題  ・コミュニティーの形成

を合わせもち、教員間のダイアローグを重視している。図は、

『学習する学校(学習する組織)』(センゲ2014=2012, 1990)[3]から 「推論のはしご」をDonna Qualtersが改変したものを訳出したものである。互いのもつ想定(assumption)を保留し、実際に行動をするなかから新しい教育方法への価値や意味を見出していくような、実践共有の機会が本学内においても、また本邦の大学教育にも広がればと願っている。

[1] Hord, S. M., & Sommers, W. A. (2008) Leading Professional Learning Communities, Thousand Oaks, CA: Corwin Press.; 三品陽平(2017)『省察的実践は教育組織を変革するか』ミネルヴァ書房

[2] ケイ・J・ガレスビーほか(2014)『FDガイドブック:大学教員の能力開発』玉川大学出版部.

[3] ピーター・M・センゲ(2014=2012)『学習する学校』英治出版, Senge, P. (1990) The fifth discipline, Doubleday, NY: Currency.

 

共通教育科目の授業アンケート分析報告(その3)

高等教育開発・支援系 渡辺 達雄

共通教育科目について授業評価アンケートのデータにもとづき分析を進めている。分析の目的として、(平成28年度に)刷新された共通教育カリキュラムの実施による教育効果ないし(前後の)変化について検証していくことを狙っている。

具体的には、2015年(平成27年)および2018年(平成30年)にアカンサスポータルで実施された共通教育科目「授業改善のための学生アンケート」にもとづき、全体・領域別に集計されたものをベースにしている(各年度におけるアンケートの質問項目は項目対応が可能なものになっているが、詳細はここでは省く)。今回は、初習言語科目についての分析結果をごく簡単に紹介する。細かい手続きとして、2018年共通教育科目開講科目中で1年生を対象とし受講生数がのべ100名を超える「ドイツ語」A、「フランス語」A、「中国語」Aと、また2015年開講科目として同様に「ドイツ語」A、「フランス語」A、「中国語」Aを開講時期(Q1/2、Q3/4に対応させて前期/後期)ごとにグループ化し、質問項目毎の平均値を算出・比較した(平均値の間に統計的有意差があるかどうかを判断するためにt検定を施している)。

 

2018年初習言語全体と2015年初習言語全体】

GS科目や英語科目と比べて、相対的に高評価の回答の割合が高く(平均値4以上)、また2015年初習言語と比較して2018年初習言語は「予習復習」を除きすべての項目において上昇していることが分かる。

細かくみていくと、ドイツ語について、「予習復習」を除いたすべての項目で有意な上昇(P<0.05)がみられ、「フランス語について、「教員の説明の仕方」(4.11->4.28)、「教材使用方法」(3.99->4.23)、「教員の授業熱意」(4.37->4.51)の各項目で有意な上昇(P<0.05)がみられ、また中国語も同様に「出席」(4.64->4.76)、「予習復習」(3.38->3.67)、「教員の説明の仕方」(4.32->4.43)、「教材使用方法」(4.17->4.33)、「教員の授業熱意」(4.47->4.65)、「学生の受講態度」(4.06->4.24)、の各項目で有意な(P<0.05)上昇がみられた。「教員の説明の仕方」「教材使用方法」「教員の授業熱意」といった項目に示されるような教員側の工夫改善による授業環境の変化が影響しているものと考えられる。

2018年初習言語A1・2と2015年初習言語A1・2】

2015年初習言語前期と比較して、2018年初習言語Q1・2はすべての項目において上昇している。詳細にみると、ドイツ語についてすべての項目で有意な(P<0.05)上昇がみられ、フランス語について「出席」(4.70->4.84)、「教材使用方法」(3.99->4.17)の各項目で有意な(P<0.05)上昇がみられ、さらに中国語では「出席」(4.70->4.85)、「予習復習」(3.40->3.65)、「教員の授業熱意」(4.49->4.64)、の各項目で有意な(P<0.05)上昇がみられた。

2018年初習言語A3・4と2015年初習言語A3・4】

2015年初習言語後期と比較して、2018年初習言語Q3・4は、ドイツ語とフランス語の「予習復習」を除く全ての項目において上昇している。詳細にみると、ドイツ語について「教員の説明の仕方」(4.14->4.56)、「教員の声」(4.51->4.74)、「教員の授業熱意」(4.45->4.67)、「学生との交流」(4.39->4.65)、「学生の受講態度」(3.90->4.33)、「授業興味・満足」(4.12->4.56)の各項目で有意な(P<0.05)上昇がみられ、フランス語について「教員の説明の仕方」(4.04->4.34)、「教材使用方法」(3.94->4.34)の各項目で有意な(P<0.05)上昇がみられ、また中国語は「出席」(4.41->4.65)、「予習復習」(3.32->3.70)、「教員の声」(4.49->4.74)、「教員の授業熱意」(4.40->4.66)、「学生との交流」(4.27->4.48)、「学生の受講態度」(3.83->4.23)、の各項目で有意な(P<0.05)上昇がみられた。

 

以上の結果をまとめてみると、フランス語と中国語については、2015年初習言語前期と2018年初習言語Q1・2を比較した場合に比べ、2015年初習言語後期と2018年初習言語Q3.4との間で、有意なプラスの変化を示す項目数の増加、つまり前者では「教材使用方法」もしくは「教員の授業熱意」に限られていたものが、「教員の説明の仕方」「学生の受講態度」が加わり総体的に向上していることが指摘できる。また各初習言語において前半部分に配置されているA1(文法),A2(会話)では、主に入門的な基礎知識の習得に主眼が置かれているが、後半部分を占めるA3(文法),A4(会話)では、ともに習得した語彙・文法事項が増えることで、授業における応用練習や実践的な課題への取り組みにつながっている。2018年度の結果は、各教員の不断の工夫改善が、学生の学修に大きな影響を与えたことを示しているものと考えられる。

 

総合教育部の振り返りと高大接続

高等教育開発・支援系 中野正俊

総合教育部2期生の学類移行がまもなくとなり、総合教育部におけるアカデミック・アドバイザーとしての活動に一区切りを迎えることとなる。これまでの業務を振り返った上での課題と今後の展望について述べる。

課題としては以下の2点が現状抱える主な課題である。

  • 相談件数
  • 学生の移行制度や履修・カリキュラムの理解度

以上の2つの課題については以下のように考える。

①の相談件数について考えると、初年度と比較して相談件数は減っている。学生は先輩や友人に聞く事が多く、昨年度と大きく異なる点は同じ学部の先輩がいるという点であり、初年度より相談件数が少なくなっている一因であると考えられる。初年度の相談件数も決して多くはないが、担任教員との役割分担がされており、学生自身が相談先を選んで相談している結果である。

また、反省点となってしまうが、初年度と比較して学生と接する機会が少なくなり、学生との距離が遠くなった点も相談件数の減少につながっていると考えられる。高校のキャリア教育を見ると、担任教員を始め生徒と教員が非常に近い距離感を保ちキャリア教育を行っており、大学のキャリア教育においても学生との距離感の重要性は活動を通して感じられた。授業を中心として学生とアドバイザーが接する機会をより設け、学生が相談しやすい環境を作る事は今後の課題として挙げられる。

②の学生の理解度については、オリエンテーションやガイダンスを実施して説明を行ってはいるものの、入学時のオリエンテーションは情報過多となっており、他のガイダンスにおいても学生自身の振り返りが不十分である事が理由として挙げられる。一部導入科目などで履修指導の時間を設け、キャリア教育の一部としてレポートなどの振り返りを行う事も必要ではなかろうか。

 

2つの主な課題はアメリカ型のアカデミック・アドバイジング を参考とした「学生が相談に訪れる」ことを想定した設計に起因するものと考えられる。今後の展望としては、アカデミック・アドバイザーが今まで以上に授業の中に入り、履修指導・キャリア教育を行う機会を増やすことで、アドバイザーとの接点も多くなり、学生との理解度の向上につなげたい。

4月より高大接続コア・センターでの業務を担うこととなるが、アカデミック・アドバイザーとしての活動も継続して行う予定である。今後は高大接続の視点も合わせ、初年次教育とキャリア教育にどのようにつなげるかを考えた上でアカデミック・アドバイジング について考えていきたい。

 

English Hour!実施報告

高等教育開発・支援系 井上咲希

今年度後期も附属図書館において留学生との英会話イベントであるEnglish Hour!を開催した。後期の実施報告を行う。

English Hour!とは、附属図書館所属のピアサポーターであるLeCIS(留学生学習コンシェルジュ)や短期留学生がファシリテーターとなり、日本人学生や他の留学生と簡単な英会話を行うイベントで、セメスター中に中央図書館と自然科学系図書館とで開催されている。

2019年度後期に開催した際のテーマ、開催日、参加者数とその内訳を以下にまとめた。

日時 場所 テーマ 参加人数 日時 場所 テーマ 参加人数
10/23 自然 スポーツ 7 12/5 中央 休暇の過ごし方 6
11/6 自然 秋のイベント 7 12/11 自然 10
11/11 中央 5 12/19 中央 2019年を振り返る 9
11/18 中央 English Hour+ 8 1/8 自然 新年の抱負 2
11/20 自然 冬に備える 8 1/16 中央 6
1/22 自然 金沢での暮らし 4

後期参加者合計72名

参加者の内訳をみると、特筆すべきは「その他」の参加者の多さである。これは主に短期留学生の参加が多かった結果であり、後期開催の特徴ともいえる。その結果、後期のEnglish Hour!は英会話のレベルが高くなる傾向があり、ターゲットとしている英語学習者の参加が減ったという可能性が考えられる。また、前期よりも1年生の参加が減り、修士学生の参加が増えた(特に自然科学系図書館開催の場合)。全体として参加者は例年の傾向と変わらず前期(計122名)よりも減少した。

しかしながら、同時期に開催されたスペイン語会話イベントSpanish Hour!は後期に3回開催し平均参加者20名と好評であり、後期でも言語学習のニーズはあると考えられる。また留学生は日本人学生と交流できる機会を欲しているため、今後も多様な学生のニーズを的確に捉えて開催していきたい。

 

「大学教育再生加速プログラム」(AP)事業の成果と課題

高等教育開発・支援系 河内真美

2014年度にテーマⅠ(アクティブ・ラーニング)・Ⅱ(学修成果の可視化)複合型の大学教育再生加速プログラム(AP)事業に採択された本学の取組「学生の主体性を涵養するカリキュラム・教育方法・学修支援環境の統合」(以下、本学AP事業)は、今年度が補助事業期間の最終年度である。6年間にわたって実施してきた本学AP事業の成果と課題を明らかにするため、今年度さまざまな調査を行った。それらすべてを紹介することは紙幅の都合で難しいため、本稿ではアクティブ・ラーニング・アドバイザー(ALA)制度を利用した教員に対して実施したアンケート調査の結果について概要を報告する。

ALA制度は、本学AP事業で導入した独自の取組のひとつである。アクティブ・ラーニング(AL)型授業において、授業時間内外で学生の学修を支援する学生(ALA)を採用することによって、受講生の学修の充実を図ることを目的としている。特に、受講生が中~大人数である講義・演習科目のAL型授業への移行と実験・実技・実習科目を含めた授業時間外学修を充実することを意図した制度である。2015年度前期より人間社会学域・理工学域で試行的に開始し、その経験を踏まえて翌年度には全学に展開した。アンケート調査は、授業におけるALAの活動や運用実態、ALAの授業参画による教育上の効果と課題などについて把握し、ALA制度の効果検証と改善点の検討を行うことを目的として、2019年7月29日から8月30日に実施した。対象は、2016年度から2018年度にALA採用科目を担当した教員(調査時点で在職中の教員に限る)129名、有効回答件数は41名、回収率は31.8%であった。以下は結果の概要である。

まず、ALAがどのような学修支援を行ったかについて、授業時間内ではグループワークの支援、演習問題に関する助言や質問対応が多く、授業時間外では授業内容や課題に関する解説や助言と質問対応、受講生の成果物に対するフィードバック、次の学修支援活動に向けた準備や教員との打合せが多かった。また、約95%の回答者が授業や学修支援の内容、受講生との関わり方や様子について、学期開始前や各授業回の前などにALAと対面での打合せを行っていた。さらに、約半数の回答者はALAが授業に参画することによって、グループワークや受講生間の対話を増やしたり、受講生に質問する機会を増やしたり、成果物に対するフィードバックを実施したりと、授業方法や学修活動を以前と変えた。ただし、以前と変えなかった場合というのは、元々AL型授業を教員のみで実施していたが十分に目が行き届きにくいなどの理由によってALAを申請したものである。

ALAの学修支援による受講生に対する教育効果として、学修活動の活性化、学修活動やその成果物の質向上、授業内容や学修活動の理解の深まり、授業や学修活動に対する意欲の向上、授業における安心感の醸成について、80%を超える回答者が「とてもあてはまる」「ある程度あてはまる」(4件法)とした。自由記述では、上記のほか、受講生の学習態度の涵養や考える力の向上、質問しやすい環境づくりなどにおいても効果がみられたという回答を得た。また、ALAについても、授業内容に関する理解の促進、学習態度の涵養、教える力やコミュニケーション能力の向上、教えることや教師の視点の理解といった点で教育上の効果があったとされ、すべての回答者がALAとして学修支援を行う経験は学生にとって有意義かについて「はい」と答えている。さらに教員にとっても授業改善や学生理解につながったかについて、それぞれ90%前後の回答者が「とてもあてはまる」「ある程度あてはまる」(4件法)と答えた。このように受講生、ALA、教員の三者それぞれにとって効果がみられた一方、制度や手続きの煩雑さ、教員やALAの負担、ALAになる学生確保の難しさ、ALAの参画を組み込んだ授業設計の難しさなどが課題として挙がった。

本学AP事業下でALA制度を運用してきた人間社会学域と理工学域については次年度より学内予算で継続していくこととなるが、申請手続きの簡素化やALA学生確保のための働きかけなど、アンケート調査で指摘された課題や運用上明らかになった他の課題に対応する改善を講じつつ、学生の学修を支える環境のひとつとしてALA制度をより発展させていきたいと考えている。

 

 

Webサイト情報

「系/部門の紹介・ミッション」、「ニュースレター」ほか、FDランチョン&FDワークショップ開催情報、授業設計支援・教育コンサルティングの申込を随時行っています。

https://herd.w3.kanazawa-u.ac.jp/