【No.590】
高等教育開発・支援系/部門ニュースレターNewsletter 第7号(11/1)

PDF版:ニュースレター第7号

中国有名大学物理学部訪問記

高等教育開発・支援系長 吉永 契一郎

本年9月、科学研究費補助金(「挑戦的萌芽研究」)により、北海道大学鈴木久男教授、帯広畜産大学斉藤準講師とともに、中国の北京大学、清華大学、上海交通大学、復旦大学物理学部を訪問することができたので、ここで報告したい。

近年、世界大学ランキングにおける中国の大学の上昇はめざましい。2018年度、THEのランキングによれば、北京大学が27位、清華大学が30位である一方、日本は、東京大学が46位、京都大学が74位にとどまっている。また、2018年度、NSFが発表する科学技術分野における論文数において、中国はアメリカを抜いて、世界第1位、日本は第6位になっている。そこで、訪問の目的の一つは、大学ランキングで急上昇している中国の大学の実情を探ることである。

また、アメリカの有力理工系大学院生の半数以上が、海外からの留学生であり、そのうち、有名大学においては、北京大学・清華大学の卒業生が多数を占めていることは承知の事実である。これらの留学生のうち、多くの優秀な人材がアメリカの大学で研究者として活躍しており、中国は、自国出身の研究者と戦略的に提携する、あるいは、帰国奨励策によって、中国の大学の研究レベルを高めている。

そこで、訪問のもう一つの目的は、科学技術人材の供給源としての中国の大学の教育力である。中国が、優秀な理工系人材を輩出し、短期間で世界的研究大学を生み出したことは、世界最大の人口や、大学受験競争の厳しさだけでは説明できない。訪問では、授業見学やインタビューを通じて、中国の大学生の置かれた環境についても考察した。

1学年の学生数と教員数をみると、北京大学物理学院の場合200名・200名、清華大学物理系の場合100名・80名、上海交通大学物理天文学院が70名・123名、復旦大学物理学系が100名・70名である。これらは、東京大学理学部物理学科の70名・39名と比較して、かなり大きく、日本では学部レベルの規模である。

さらに、4大学に特徴的なことは、それぞれ、学部の中に「普通物理教学センター」、「基礎物理教学センター」、「教学研究センター」、「物理教学実験センター」があり、専任教員が他の物理学研究分野の教員とともに、全学の基礎教育を担当していることである。教養部の改組以降、日本の大学における基礎教育は基盤が弱くなっているが、これらの大学において、物理教育のためのコア組織が確立されていることは注目される。これらのセンターは、これまで、教育組織であったが、今後は、教授法の研究に取り組みたいとのことである。特に、上海交通大学の研究センターは、全国的な物理教育の研究拠点にも認定されている。

いずれの大学においても感じることは、キャンパスに溢れる活力である。それは、キャンパス中が建設ラッシュであることと、学生たちが意欲に満ちていることの双方から生じている。訪問者である我々に対して、学生は礼儀正しく、英語で正確な応対ができる。道を尋ねた際、目的地まで同行してくれることが、度々、あった。

大規模教室では、前列から席が埋まり、スマホをいじったり、寝たりしている学生は皆無である。教員が熱心に語りかけ、学生が食い入るように聞いているという光景は、新鮮な驚きであった。このような教育は、単に教育方法の改善や制度の導入で実現できるものではない。その背景について、以下、考察をしたい。

(1)入学選抜

毎年、6月に実施される「高考」と呼ばれる大学入学のための統一試験が難関であることはよく知られている。そのために、中国の受験競争が熾烈であることも事実である。しかしながら、今回訪問した物理学部に関する限り、必ずしも正確ではない。

それは、これらの大学では、定員の半分を「高考」のスコアで受け入れるものの、他の半分には、国内で開催される数学・科学オリンピック入賞者を合格させていることによる。これらの学生については、サマー・スクールに招き、インタビューや個別試験を課すことによって、入学を認めている。これは、AO入試に近いものであり、場合によっては、「高考」のスコアさえも免除することができる。数学・科学オリンピックの問題は、「高考」の問題はおろか、大学での物理学より難易度が高い。この点において、これらの大学は、受験秀才よりも、理数系の才能発掘に力を入れていると言える。

ただし、このような入試形態の場合、教員の負担も大きい。教員は、サマー・スクールの他、日頃から、才能のある高校生を探して、全国を回っている。優秀な高校生の獲得については、大学間で競合しているので、いかに早く合格を出すかが決め手となる。オリンピックの金賞受賞者は、北京大学か清華大学のいずれかを選択すると言われている。最近では、アメリカの有名大学が、これらの受賞者に、直接、奨学金を出すケースも出てきているようである。

日本の場合、国際的な数学・科学オリンピックの入賞者であっても、医学部に進学するケースがほとんどである。中国で、同様の問題がないのか尋ねてみたが、中国では、医師が高収入で魅力のある職業であるというイメージはなく、科学者やエンジニアの人気が高いとのことであった。

(2)教育法

物理の入門科目が、講義・実験・演習からなっていることは、日本と同じである。ただし、講義が週2回で、シアター形式の講義室に準備室が付属し、演示実験が容易にできることは、アメリカと同じである。演習は、週1回、大学院生が受け持っている。

上海交通大学では、ベスト・ティーチャー賞受賞者の授業を見学したが、パワーポイント、タブレットによる板書、クイズ、ビデオを活用していることは、日本の大学と同じであった。ただ、教員からの問いかけに対して、学生が競って回答していること、疑問点を進んで質問している学生がいたことが特徴的であった。授業の様子からは、学生が綿密に予習をした上で、授業に望んでいること、毎回、授業後に、多くの宿題が出されていることがうかがえた。テキストは、教員が大学出版局から出版しているものである。

特に、自由な討論の時間もなく、授業は教員主導で進められていた。しかしながら、授業構成は理路整然としており、学生が強く関与している。ここでは、グループワークではなく、教員対学生の真剣勝負が高い密度を生み出している。学生は、授業の終了後も、熱心に教員に質問をしていた。

上海交通大学、復旦大学では、実験室とは別に、古典的な物理の実験装置を集めた博物館が設置されている。学生に開放されている他、高校生のオープン・キャンパスにも活用されている。展示された装置や年表、科学者の肖像画を見学していると、自然科学においても、歴史や伝統を伝える重要性を感じる。

特に、優秀な学生に対しては、少数特別コースの設置や、試験のみで単位を認定する制度が設けられている。清華大学の初年次生向け特別コースは、ファインマン物理学である。上海交通大学では、英語で学ぶ特別コースを設置している。また、復旦大学では、特別コースのことをオナーズ・コースと呼んでおり、学生プロジェクトや研究活動も行うことができる。

中国においても、アクティブ・ラーニングは取り入れられており、教室の改修も行われている。また、反転授業を試行中である。WeChatなどのアプリも、大学が積極的に活用している。清華大学はRain Classroomという教育ポータルを開発し、教員と学生のあらゆるやり取りが容易になった。

これらの大学の学生の学習態度が熱心であることは、自然科学に対して、知的関心が高いということと同時に、卒業後、アメリカの大学院進学という目標が明確であることによる。さらに、アメリカの大学院進学は、海外への移住希望と切り離すことができない。

ただし、今日、アメリカの有名大学院はGPAだけで、合否を判定していない。エッセー等を通じて、学部時代にいかに研究経験があるかということを重視しているとのことであった。これは、かつて、アメリカの大学院で調査をした際、「大学院生の選考基準は、研究パートナーとして適当であるかどうかである」という回答と符合する。

上海交通大学には、ミシガン大学と共同で設置した工学部がキャンパス内に存在する。これは、2006年に開設されたもので、ミシガン大学工学部のカリキュラムを英語で開講するものである。現在、300名の中国人学生が、上海交通大学の一角で学んでいる。

これは、中国人学生の海外志向に応えるものであり、学生は、2年間を両大学で過ごすことと4年間上海で過ごすことを選ぶことができる。入学に際しては、上海交通大学入学と同じ学力が求められる。年間100万円と授業料は高額であるが、人気が高く、卒業生も8割がアメリカの有名大学院に進学している。このような共同プログラムでは、学生には、アメリカと同じ環境で学ぶことができるといるメリットがあり、ミシガン大学にとっては、収益事業とともに、優秀な大学院生をリクルートできるというメリットがある。上海には、現在、デューク大学とニューヨーク大学が同じようなプログラムを開講している。

(3)卒業後

これらの大学から、アメリカを中心とした海外の大学院への進学は、3割から5割である。かつては、アメリカの大学院への進学は、生活費を含む奨学金が不可欠であったが、近年の特徴は、私費でアメリカのプロフェッショナル・スクールに進学する者が出てきたことである。これは、中国における富裕層の台頭を反映している。

海外の大学院へ進学熱は、大学にとって、負の側面もある。これらの大学の大学院は、定員を埋めることができず、それほど優秀ではない学生を他大学から迎えている。そのため、博士課程で実施される認定試験のレベルが、近年、低下していると危惧する大学もある。また、ある大学では、大学1年生の方が、TAよりも優秀であるために、演習が混乱するという事態も生じているようである。

以上が、中国の有名大学を訪問した報告である。見学できたのは、あくまで、低年次のコースワークにおける学生の様子や規律ある授業風景である。4年次の卒業研究や大学院教育がどのように実施されているのか、研究室がどのように運営されているのか、いかにして研究アウトプットが生み出されているのかについては、知ることができなかった。大学ランキングの妥当性を考察するには、これらの項目の検討が不可欠である。

現在では、その地位を確立したかに見える中国の大学も、本格的な発展が開始されたのが1990年代の開放政策からであり、まだ、30年程度の歴史である。今後、中国の大学がアメリカにかわる「学問の中心地」となるのか、それとも、今後とも、アメリカの大学院に研究者養成を依存し続けるのか、興味は尽きない。

学際教育について

高等教育開発・支援系 西山 宣昭

平成26年度以降、学際系学部の新設が続いており、それらの新学部は文理融合あるいはtransdisciplinaryの教育理念を掲げている。その中で、全学部を横断する教育プログラム(21世紀プログラム)を平成13年度から実施してきた九州大学は今年4月に共創学部を新設している。8月10日、九州大学で開催されたリベラルサイエンス教育開発FD「これからの教養教育・学際教育を考える~これまでの批判的検討とともに~」では、平成23年度に設置された基幹教育院の下で行われている文理混成少人数クラスの基幹教育コア科目群と共創学部の教育理念、教育プログラムとの接続性について解説された後、渡邊浩一氏(大阪経済法科大学)による講演を交えて、なぜ、そしていかに学際なのかという批判的考察が行われた。

共創学部では、個別の学問だけでは解決できない世界規模の課題を解決するために、ディシプリンベースの方法論を有機的かつ最適に連携させる方法論を身につけさせることを教育目標とし、プロジェクト型科目群をコアとする文理融合型カリキュラムが設定された。システム生物学を専門とされる総長特別顧問の岡本正宏氏(九州大学)は、従来の学部教育のディシプリンベースの方法論は要素還元的解析手法であり、一方、共創学部の教育理念は要素間相互作用系(複雑系)の解析手法の修得であると対比された。このような共創学部の教育理念は、渡邊氏によって解説された学際interdisciplinaryへの要請の背景と合致する。渡邊氏によれば、interdisciplinaryの語は、社会科学分野での共同研究のためのキャッチワードとして導入された。社会の全体的・統合的認識に立つべき社会科学で進んでいた専門化・細分化を背景として、近代化に伴う複雑な社会問題の解決のために求められた社会科学の各分野の知的協働が学際interdisciplinaryの起源とのことであった。渡邊氏によれば、学際interdisciplinaryという知的協働のプロセスには、いくつかの専門分野の間での緩やかな対話あるいは相互作用と考え、統合の役割は小さく不明瞭で不必要なものであるとする立場(一般主義)と、専門分野の間に共通基盤を作り出す認知的プロセスと捉える立場(統合主義)の2つがある。学際という知的協働をどこまで深めようとするのかは、岡本氏の解釈になぞらえれば、要素間相互作用をいかにデザインするかということになる。渡邊氏は学際教育において、教員ひいては学生が実際に「学際」してみせることを提案された。教員ができないこと(・しないこと)は学生もできない(・しない)のだから。共創学部ではproblem based learning をカリキュラムの核としており、その成否は、教員そして学生が深い学際を必要とする課題(問い)を設定できるかどうかにかかっている。

基幹教育院の谷口説男氏(九州大学)は、基幹教育の核をなす初年次の基幹教育セミナーと課題協学科目について説明された。これらは接続しており、学部混成の文理融合、少人数クラスでグループ討議やデータ収集、文献調査が行われる。これらの科目は、共創学部においてはプロジェクト型科目群と接続している。教育改革推進本部の深堀聡子氏(九州大学)と渡邊氏は、ディシプリンを体得していない学士課程の学生を対象とする集団での知的協働の場はどう解釈されるべきかとの問いを示し、分野を横断する思考プロセスを理解し、学際に必要な下地を与えるとの見解が提案された。リベラル・アーツ教育の理念である「考え方の基礎学」であり、異論はない。やはり、その成否は、どのような課題(問い)を用いるかにかかっている。

 

 

研修報告(英国滞在 その1)

高等教育開発・支援系  堀井 佑介

2018年4月から8月末まで研修で英国ケンブリッジに滞在した。今後、この英国滞在についての適宜ニュースレターで報告を行っていきたいと考えている。先ず一回目として、2018年4月24日(火)、25日(水)の両日にカーディフのRoyal Welsh College of Music and Dramaで開催されたQAAの年次大会(QAA Annual Conference 2018 (The UK Quality Summit),  “Delivering Impact Through Innovation”)について紹介させていただく。このカンファレンスは、英国の「高等教育質保証機構(Quality Assurance Agency for Higher Education, QAA)」が毎年開催しているもので、タイトルにThe UK Quality Summitとある通り、英国における教育質保証を担う機関、関係者の集う集会である。今回のテーマは、”Delivering Impact Through Innovation”であった。

24日は、”Data-driven impact and innnovation”と題して、Professor John Latham氏(Vice-Chancellor, Coventry University)によるデータ分析による大学改革論についての講演が行われた。内容は、全国レベルでのNational Student Survey(NSS)、大学レベルでのCourse Quality Enhancement & Monitoring (CQEM)や、League Table、Times Higher Education Rankings、Guardian rankingsなどのランキングに関するデータをどのように大学改革につなげるのかであった。学生の学習経験、情報共有、質的データ/量的データ、学生団体・卒業生とのデータ共有、関係者との継続的意思疎通などがキーワードであった。 25日は、”A vision of innovation in higher education”と題してProfessor Liz Barnes氏(Vice-Chancellor, Staffordshire University)によるICTを最大限活用した大学教育イノベーションについての講演が行われた。Staffordshire Universityでは、ICTやdistance learningを活用したConnected Universityを目指しており、それに向けて個々の学生の特性に合わせた学習支援としてAIを組み込んだチャットボット(chatbot)による24時間365日対応環境なども整備されている。大学教育におけるイノベーションにおいては、Responsive(反応がいい)、FlexibilityFlexible(柔軟な)、Agility(機敏さ)が重要とのことであった。

続いて、”Quality in a changing landscape”と題してDouglas Blackstock氏(Chief Executive, QAA)が登壇し、2018年から動き始める新しい教育機関質管理体制を通して英国の教育に改革をもたらそうとする流れについて講演が行われた。「政策提案書(Green Paper, Fulfilling Our Potential)」(2015年)、「高等教育白書(Higher Education White Paper Success as a Knowledge Economy)」(2016年)を受けて2017年に成立した「高等教育・研究法(Higher Education Research Act 2017)」による高等教育質管理体制改革で誕生した「学生局(Office for Students, OfS)」主導におけるQAAの役割が紹介された。QAAはOfSからの推薦を受け新しい制度での質保証機関に指定されている。なお、この改革により「イングランド高等教育財政カウンシル(Higher Education Funding Council for England, HEFCE)」は廃止され、「高等教育機会均等局(Office for Fair Access,OFFA)」)はOfSに組み込まれることとなった。新体制においては、高等教育機関の権限および地位として、学位授与機関(Degree Awarding Powers, DAPs)としての認定、、大学の称号(University Title)授与がOfSにより管理されるとともに、教育面では、「教育卓越性および学生の学習成果枠組み(Teaching Excellence and Student Outcomes Framework (TEF) )」が導入されている。TEFについてはその結果がTEF awards金・銀・銅としてOfSサイトに掲載されている。同カンファレンスでは、これらの他にも、中華人民共和国およびナイジェリア連邦共和国の教育質保証事例を紹介する講演や、Breakout Sessionとして18の分科会で教育質保証に関する個別の発表も行われた。

 

全国大学教育研究センター等協議会参加報告

高等教育開発・支援系 渡辺 達雄

2018年9月10日、11日に広島大学で、全国国立大学法人に設置されている大学教育センター系(学生支援機構)の関係者が一堂に会する全国大学教育研究センター等協議会に参加した。今回は「学士課程教育の質保証と学習支援」を全体テーマとして、目標達成型のプログラムへと変化する中で学生が適応できるようその教育状況に合わせてとくに留意されている重要項目について、各機関の質保証の取組の発表と分科会での意見交換がなされた。

公開講演会「学士課程教育における学習支援-その歴史・現状・課題」(谷川裕稔氏)では、アメリカでの学習支援の歴史と日本にそれが輸入され加工された経緯(学習支援と学修支援の枠組みと関係性など)が述べられ、学習成果と一体化した出口管理の明確化の中で学士力育成を妨げる要因を解決するための可能性として「学習支援」が位置づいていることを主張された。ただし、学習支援の知識技術の共有や伝達・実践基準などの専門性の確立、統合された学修支援の効果測定を意図し教学IRから進んだ学修支援型IRの策定といった課題も示した。

代表校による発表では、北海道大学の学習支援として、総合入試とラーニングサポートに関わる取組みが報告され、スタッフによる個別学習相談や学生の利用状況が良好な一方で、主体的学習の支援として逆に依存を生んでいないかとの疑問も投げかけていた。また、愛媛大学の取組みとして、愛大学生コンピテンシーを作成し、学習支援の能力を測定するための基準としても活用し、様々な場面で必要な時に支援するという特徴をもつ学習支援活動が展開されていること、一方で基礎学習技能習得という(支援の)内容をどこまで正課教育に組み込むかという課題も提示された。

そして分科会では、学士課程教育の質を保証するための仕組みについて、テーマ別に内容・成果・課題・改善すべきことについてグループで議論を行った。簡単にまとめると、①「教職協働」の必要性が高まっている中、教職協働を実質化するのに考慮しておくべき重要事項」を検討していた。②「学修成果のアセスメント」ではどのように行い、アセスメント結果をどのように教育プログラムのさらなる向上に結びつけるのか(アセスメントポリシー・アセスメントプランの策定)を具体的に検討していた。③「到達目標達成型教育プログラム」では、コンピテンシーベースの成果の可視化、教育プログラムのPDCAの現状と課題について議論を深めていた。④「教養教育の今後の在り方」では、専門分野を受験時に指定しない「大括り入試」を行い、教養教育科目の履修を通して専門を定めるというSpecialty Findingタームの実績を積み上げている大学があって、この場合の科目構成の適切化等どのような点に留意して教養教育の充実を図ればよいのかについて、具体例を共有、教養教育充実のための今後の在り方を検討していたようにみえた。⑤「文理融合教育」では、数理的思考ができ社会トレンドも掴み異分野の人と協働できるイノベーション人材への期待が高まる中、注目される一つの文理融合教育について広く解釈し、具体的な実践例を踏まえ、その成功の鍵と失敗の陥弄について整理を行った。⑤「学修ポートフォリオ」では、どのような正課を期待しそれを誰が測るのか、カルテ型かブログ型の形式といった内容に関すること、また誰がシステム開発に携わり学部の異なる要望をどう取りまとめ応えていくべきかという運営に関することについて議論を進めていた。

 

FDランチョン・FDワークショップ

高等教育開発・支援系 河内真美

金沢大学の大学教育再生加速(AP)事業では、国際基幹教育院スキルアップセンターとの共催により2017年度後期よりFDランチョン・FDワークショップを開催している。これは、アクティブ・ラーニング型授業の推進に向けて、授業設計、教育方法、学習評価、学習支援などに関わる教職員の知識や能力を高めることを目的に開始したものである。FDランチョンでは、昼休みの30分を利用し、基礎的な理論や授業手法の紹介、授業実践事例の報告などを行っている。他方のFDワークショップは、参加者自身が議論したり何かを作成したりと活動に参加するもので、内容に応じて1時間半〜4時間で実施される。主な対象は、本学の教職員であるが、大学院生や博士研究員なども参加可能となっている。

今年度後期に予定しているFDランチョン・FDワークショップ(一部、実施済みのものを含む)のタイトルは、以下の表に示すとおりである。

このようにFDランチョンは毎月2〜4回、FDワークショップは毎月1回程度、異なるテーマで開催し、それぞれの関心や時間上の都合に応じて参加できるようになっている。これらすべてはAP事業のFDリーダー研修会を兼ねており、FDリーダーに選定されている教員には年間2回以上の参加が求められている。

なお、FDランチョンについては、授業録画配信システムを利用して自動収録し、配付資料とともに後日、学内ポータル上で学内教職員に対して公開している。これにより、時間の都合がつかず参加できなかった場合などでも受講することが可能になっている。FDワークショップは、知識などの提供以上に参加者間での情報共有や相互作用を重視しているため学内配信は行っていないが、所属や担当科目を超えた教職員の交流の場としても機能している。

各回の日程や概要などの詳細や最新情報については、高等教育開発・支援部門のWebページ(http://herd.w3.kanazawa-u.ac.jp/support/fd/)をご参照ください。みなさんのご参加をお待ちしております。

第3回アカデミック・アドバイジング・サロン報告

高等教育開発・支援系 中野 正俊

 

10月20日(土)、テンプル大学ジャパンキャンパスにおいて第3回アカデミック・アドバイジング・サロンが開催された。

アカデミック・アドバイジング・サロンは昨年10月に第1回が開催され、その後半年に1回開催されている日本のアカデミック・アドバイジングに関する情報交換と知見を深める事を目的とした会である。

 

初めに、追手門学院大学の清水栄子先生より開催意義等のご説明の後、2大学による事例報告が行われた。

まず、昭和女子大学の井原奉明先生より、「多様性時代の学生サポート-教職協働の観点から-」というテーマでの報告がされた。

大学として教職協働での取り組みがされており以下の3点を方針として掲げている。

  • 学生が学修に専念し主体的に学び、個々の可能性を伸ばして自己の研鑽に励むことができるよう支援を行う。
  • 欠席が多い学生や成績不振の学生を想起に発見する体制を整え、留年・休学・退学の可能性がある学生に対してケースに応じた適切な支援を行う。
  • 必要に応じた補習・補充教育を実施する。

 

大学全体の方針として、「受動的支援」ではなく「能動的支援」が重要であり、欠席が多い学生や成績不振の学生を早期に発見する体制を整え、留年・休学・退学の可能性がある学生に対してケースに応じた適切な支援を行なっている。

欠席状況などを調査し、授業担当者からの情報を基に学科会議で情報共有がされる事で個々の情報を可視化に取組んでいる。

昭和女子大学では教員が授業担当者でありアドバイザーである。学生には必ずクラスアドバイザー(教員)が付き、学科ごとに事なるが1教員あたりの学生数は10〜40名程度である。学期毎に1回の面談を実施しており、履修・生活・キャリアデザイン&デベロップメント・留学等の面談内容を記録&報告(教職員間で情報共有)を行う。教員からの呼びかけや学生からの希望により面談を行うこともあり、場合によっては家族に連絡&面談を行っている。

学生からの相談を待っているだけではなく、出席状況や成績を調査した上で、早期に能動的に支援を行っている点が印象的であり、大学全体での意識共有し早期対応する体制を取っている。

次に立命館大学のヒューバート眞由美氏より「立命館大学における包括的学生支援体制構築の試み-学修支援を切り口として-」というテーマでの報告がされた。

学生の多様化が進み、それに伴って様々な支援が必要となる学生が増加している。また、障害学生数も増えており、調査対象や、問題の顕在化により一層の支援の必要性が増している。しかし、現在も顕在化しているものはごく一部に過ぎず、支援を必要としている学生が潜在的に多いという点を理解する必要がある。

一方で学生自身が学生支援の必要性に気づいていない場合も非常に多い。学生がつまずきやすいポイント・時期をピックアップし、そのタイミングに学生が支援の必要性に気づく事が支援を広げる一歩となる。学生が主体的に支援を受けるような仕組みが必要であり、対話の中で学生の主体性を引き出す支援が重要である。

支援目標として、①自ら気づく力の養成、②自己理解に基づき相談する力の養成、③主体的に支援を活用する力の養成の3つを掲げており、支援の必要性に気付き、それを活用する力を身につけることで、主体的に支援を受けることにつながる。

学生支援の担当者にとって、学生が主体的に支援を受けるような体制作りは喫緊の課題である。金沢大学でも様々な支援があるが、支援が必要な学生ほど支援を活用しない現状がある。2大学の事例を参考に、担当者が能動的に動き主体的に支援を受けやすい仕組みづくり、それにより学生が支援の必要性・重要性に気付き自ら支援を活用するような取り組みが必要である。

NACADA年次大会参加報告

高等教育開発・支援系 井上 咲希

 

2018年9月30日~10月3日の日程でアカデミック・アドバイジングの世界的な学術組織であるNACADA年次大会がアリゾナ州フェニックスで開催された。今年度のテーマは「Life Stories: the Art of Academic Advising」で、アメリカ全土、また15か国から約4000名が参加した。ポスターセッション、ワークショップ、プレゼンテーション、展示など様々な見どころがあり、至る所で活発なディスカッションが行われていた。

総会では新たな代表としてKaren Archambault氏(Rowan College)が選ばれたことが発表され、新役員も併せて発表された。基調講演はストックトン大学一般教育副学部長兼アカデミック・アドバイジングセンター ディレクター、Peter Hagen博士が、アドバイジングにおけるPositivist(実証主義者)と Constructivist(構成主義者)の考え方を基にしたアドバイジングについて興味深い問いかけを行った。

全体を通して今回の大会におけるキーワードは”Generation Z”, “Student Engagement”, そして“Narrative” であると感じた。Generation Zは1995年以降に生まれたインターネット・SNS世代であり、日本でいう「さとり世代」とほぼ同年代の若者世代であり、Generation Zの特徴として

・対面でのコミュニケーションを好む

・親と仲が良く、進路等に関する決定に親の影響が強い

・実践的な経験を積むことを好む

などが挙げられていた。こうした学生の変化に合わせてアドバイジングの手法も変わらなければならない、ということで様々な事例の報告があった。両親とアドバイザーとの付き合い方のプレゼンテーションもあり、アメリカにおいて学生生活に親の介入度が高まっている現状が伺えた。

学生エンゲージメントについては様々な取り組みが行われていたが、学生とのコミュニケーションにインスタントテキストメッセージアプリを使用した事例に注目が集まっていた。今の学生世代はeメールを嫌う傾向があり、インスタントテキストメッセージを使用し始めたところ、学生のエンゲージメントが高まったという報告があった。テキストメッセージのやり取りは非常にカジュアルで、個人化されており、学生とアドバイザーとの距離が非常に近いと感じた。また他にもテクノロジーをうまくアドバイジングに取り入れており、学生用のアプリなども開発され、利便性が非常に高くなっている。

最後に、印象に残ったことは、アカデミック・アドバイジングは学生にとって評価も競争もない「安全な場所」でなくてはならない、ということであった。そういった場所が大学にあるだけで学生はより安心して通うことができる。日本においてもそれは同じで、学生の大学生活がより充実するように支援を行うとともに、学生が安心できる場所づくりを行っていきたい。

イベント情報

 

・2018年12月22日(土)

2018年度 第1回「University Developmentシンポジウム」

「大学職員3.0 キャリアの振り返りから探る大学の今後10年」

 

詳細は以下、Webサイトを参照ください。

http://herd.w3.kanazawa-u.ac.jp/research/