【No.460】
学士課程教育改革の状況について

○●○ 学士課程教育改革の状況について ○●○

大学改革の方向が、量から質的転換へ、マクロからミクロへ、プログラム化した学士課程教育構築に向かっている中にあって、教学マネジメントあるいはガバナンスについてどのように当事者に認識され、さらにどう変わるべきなのか、という問いは、今後の個々の大学での改革のあり方・方策を考える上で、重要であると思われる。2008年「学士課程教育の再構築」答申以降に実施された主要な全国調査(注1)の分析結果は上記のことを考察するのに有効な材料となるので、それらを参照しながら述べていきたい。

基本的な問いは3点で、学士課程教育における現在の問題は大学側それとも学生側に原因があるのか、様々な改革道具は意味があるのか、教学マネジメントにおいて関係者間でズレがあるのかということである。

まず「学生が自分の大学で学ぶに当たっての課題はどこにあるか」との問いについて、学長は学生側に多くの問題点があると考えており、「自ら学び考える習慣が不足している」(回答比率8割)、「大学での学修に必要な基礎的知識や技能が不足」(7割)、(「モチベーションや積極性が不足」(6割)といった点を指摘する。学部長からの回答傾向もほぼ同様であり、加えて「授業外の活動(アルバイト・部活・就活等)に時間が取られていること」に問題を感じているようである。一方で、「学士課程教育を充実させるための(自分の大学の)課題はどこにあるか」との問いについて学長は、「科目内容が教員の裁量に依存し教員間の連携が十分とれていない」(7割弱)、「きめ細やかな指導をサポートするスタッフの不足」(6割)、「科目の細分化し開設科目数が多いこと」(6割弱)、「課程を通じた学生の学修成果が適切に把握できていないこと」(5割)といったことが問題であると認識している。この部分に関して、11の質問項目中7つで差がみられ、全体的に学部長の方が大学側の課題としての意識が低いことが示されており、注意すべき点である。

次に改革の取り組み状況についてみると、「授業シラバス」(9割)、「TA等の教育サポート」(8割)、「履修系統図(カリキュラムツリー等)」(5割)などは整備されつつあるものの、「GPA制度」「ナンバリング」の実施は2~3割にとどまっているようである。また、教員の教育力向上に関するものについて、「学位授与方針に基づく組織的な教育改善のためのFD」の実施は8割弱であるが、教育内容・方法改善のための専門スタッフ配置」や「優れた教育実践への顕彰」など2~3割程度にとどまっており、様々な道具が期待する力を発揮するまでにはまだまだ、と認識されている。もう一つ重要なこととして、学士課程教育改革の成果の一つとして期待される学生の学修時間の(確保の)側面について、授業出席・受講は十分であるが、授業外の学習は不十分(全体の8割)であると回答しており、これらの問題は、学長・学部長とも大学側に原因があるのではなく、学生側の問題がマイナスの影響を与えていると認識されていることは興味深い。さらに付け加えると、学修時間の把握が学修成果の改善につながるとは学長・学部長とも認識されていない。

基本的な認識構造としては、学生側の問題・責任を指摘し、学修成果の改善も学生側のそれが影響しているということであり、また学修成果にプラスの影響を与える学士課程教育改革の方策があったとは認識されず、また見つけることが現在のところ難しいという状況にあると整理される。

これらを踏まえつつ、教学マネジメントはどうあるべきかということについてみると、部分的に学長と学部長の間に(問題の認識や取り組む方向などで)「裂け目」のようなものがあること、また別の調査の知見からは、(1)組織の規模が大きい(学部数が多い)ほど、学内コンセンサスの形成が難しい、(2)国立大学の方が組織長の相対的積極性(組織全体から浮いている)が垣間見れる、(3)組織内(部局内)の意見がまとまっており(コンセンサスが取れている)組織長が浮いていない方が(組織長の)教育に対する自己評価が高くなる傾向にあることが示されている。

以上のことから得られるインプリケーションとしては、「相互理解」が必要で、そのための機会の設定や有効なシステム・インフラが整備されるべきであること、大学が(現実に)学部・教員を中心に編成されている(同僚性)ことは前提になっているために、学内の情報共有を有効に推し進め、また全学的な意思決定(のプロセス)の可視化が重要になっていることが示されている。上記の相互理解や情報共有などのために、例えば、全学・学部横断的な知識・スキルをもった教学マネジメント人材の養成と配置も考えられる。

先に触れた3つの基本的な問いも含め、本学にあっても今後、総合的な検証とともに必要に応じた修正・改革が求められてこよう。

(文責 評価システム研究部門 渡辺達雄)

※(注1)

・『大学における教育内容・方法等の大学教育改革に関する調査分析』平成21年度文部科学省先導的大学改革推進委託事業報告書(研究代表者:山本眞一)2010年

・私学高等教育研究所『学士課程教育の改革状況と現状認識に関する調査中間報告書』『第2回学士課程教育の改革状況と現状認識に関する調査報告書』2010年および2011年

・『大学教育改革の実態の把握及びそれに伴う調査分析』平成24年度文部科学省先導的大学改革推進委託事業報告書(研究代表者:藤村正司)2013年

 

 

○●○ 前期「角間ランチョンセミナー」終了 ○●○

平成25年度前期の「角間ランチョンセミナー」は、今週をもちまして、全ての日程を無事に終えることができました。4月10日より毎日開催し、のべ67回となりました。ランチョンセミナーに参加して下さった皆さん、また様々なテーマで、ご報告をして下さいました学生・教職員の方々、テーマ企画に快く応じていただきました各部局の方々に対し、心から感謝申し上げます。後期のランチョンセミナーは、随時開催の予定です。部活動・サークルの日頃の活動成果を発表したり、大学祭などイベントの事前広報、卒論やコースゼミ等の研究発表の場としても活用できます。

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