【No.458】
単位互換と学習成果について(その2)

●○●単位互換と学習成果について(その2)●○●

センターニュースNo.453において、国内外の大学との間での質保証された単位互換の前提は、教育プログラムの学習成果および教育プログラムを構成する授業科目の学習目標の明確化とそれらの達成度評価(アウトカム・アセスメント)の妥当性であることを欧州の大学が主導する「チューニング・プロジェクト」を参照して述べた。学習成果の明確化とその達成度評価は、欧州ばかりでなく、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、香港、南米など、まさにグローバルな動きであり、いかに学習成果(コンピテンス)を育成し、その達成度をどのようにして測定すればよいのかについて検討が進められている。達成度の検証可能性、達成度評価方法の妥当性について十分に検討された教育プログラムの学習成果および授業科目の学習目標を学外にも公表することにより、大学間での学習成果、授業科目の学習目標の対応関係が明確となり、授業科目の単位互換の信頼性が担保される。

 本学はすでに学類ごとに学習成果と学類専門科目の学習目標との対応関係を示すマトリックスであるカリキュラム・マップを公表している。単位互換を検討しようとする大学が学習成果を公表していれば、双方の学習成果の等価性を確認することにより、単位互換が可能な授業科目群がカリキュラム・マップ上で特定される。本学のカリキュラム・マップでは、各授業科目の学習目標、開講年次が確認できる。また、やはりすでに公表されている学類ごとのカリキュラム・ツリーも併用すれば、特定の授業科目のカリキュラムにおける位置を知ることができる。しかし、海外の大学との間での単位互換をより円滑に行うためには、カリキュラム・マップにおいて各授業科目にカリキュラムでの位置を示す番号を付記すること(コースナンバリング)が望ましい。コースナンバリング制度は主としてアメリカの大学において科目間の順次性を可視化するために用いられているもので、主に1年生が履修する初級科目群には100番台、主に2年生が履修する中級科目群には200番台、3、4年生が履修する上級科目群には300番台、4年生が行う卒業研究など最上級科目には400番台の番号が付けられる[1]。およそ初年次教育科目、専門基礎科目、専門科目、卒業研究や相当のゼミナールに対応づけてよいであろう。あるいは本学の場合、カリキュラム・ツリーに基づいたナンバリングの方針を定めることも考えられる。当センターでは、25年度計画に沿ってコースナンバリングに関する情報収集を今年度の重点活動の一つとしている。

 単位互換のツールとしてコースナンバリングを含めたカリキュラム・マップを活用するためには、カリキュラム・マップ自体の信憑性を継続的に検証し、学外に保障することが必要であり、これは教育の質保証に他ならない。学位授与方針に基づいた教育プログラムの学習成果の明確化、その学習成果を達成するための戦略である教育プログラム(カリキュラム)の構造の可視化を始点として、教育プログラムを構成する授業科目の学習目標の達成の累積が学習成果の達成につながっているか、授業科目の学習目標の達成度評価の方法(成績評価基準)は妥当か、授業科目の教育内容・教育方法は学習目標および学習成果の達成に妥当なものとなっているか、学習成果は達成されたのか、これらを検証するための方法論を確立する必要がある。本学では、昨年度から学類ごとの学習成果の達成度を卒業予定者および2年次以上の在学生に自己評価させる調査が行われ、今年度も継続してデータ収集が行われる。昨年度のデータの集計および統計分析についてはカリキュラム検討委員会が主体となり現在進めており、当センターはその支援を行っている。今年度から、(知識や能力を獲得したことの証拠として)具体的にどのようなことができるかを記述した各授業科目の学習目標の達成度を半期ごとに受講生に自己評価させるシステムを運用することについてカリキュラム検討委員会で現在検討しており、学内での合意が得られれば、今年度前期終了時からデータ取得が可能となる。また、当センターは昨年度から始まった学類ごとの学習成果の達成度の自己評価、今年度からの授業科目の学習目標の達成度の自己評価と成績評定、これらの間の相関の有無を分析するためのシステムの導入を予定しており、例えば学習成果の達成度の自己評価とカリキュラム・マップで特定の学習成果に紐付けされている授業科目群の学習目標の達成度の自己評価との相関を調べるなど、カリキュラム・マップにおける学習成果と授業科目の学習目標との整合性を検証するための分析の準備を行っている。

 授業科目の単位互換の可否の判断は最終的にはシラバスによって行われる必要がある。授業行程表であるシラバスは学生にとって学習計画、つまり授業時間外の学習、特に予習のための情報を得るものであることが望ましい。事前の自己学習によって授業における能動的かつ双方向の授業が可能となる[1]。また、授業時間外の学習時間の確保の根拠となり、学習目標、授業内容・授業方法とともに、単位互換の検討のための必須の情報となる。現在、カリキュラム検討委員会から共通教育機構、学類、研究科に対して、授業時間外に期待される具体的な学習についての記述がシラバスで行われているかどうかの検証と必要に応じた修正等が要請されている。

 教育の質保証と単位互換との関連に焦点を当てたが、重要なのは、授業や研究を通して社会で活躍できる力を学生に身に付けさせる教育を行うことであり、各授業科目で設定された学習目標をいかに達成するか、そしてその達成度をどのように評価するか、当然のことであるが、これらの最適解を得ることができるのは各教員である。     (文責 大学教育研究開発部門 西山宣昭)

[1]鈴木典比古、村中均「学士力空間の構築と国際単位互換制度―高等教育国際化の基礎―」大学評価研究、第11号(2012)83-91.

 

●○●12FD研究会・第19回学生・学習支援研究会●○●

日時:2013年7月5日(金)16時30分~18時00分

場所:総合教育1号館2階大会議室

報告者:末本 哲雄(大分大学 高等教育開発センター講師)

指定発言者:久保田 進一(金沢大学 大学教育開発・支援センター 特任助教)

テーマ:相互評価を取り入れたライティング能力育成の試み-双方向授業のさらなる発展を目指して-

趣旨:大学教育において、双方向授業を行うことが重要であることはいうまでもない。既に、教員と学生間での双方向性を意識した教室内での授業改善はかなり普及してきている。今回は、大分大学高等教育開発センターの末本講師に、授業外の学生の学び合いを促進する試みを取り入れた授業実践を紹介していただく。具体的には、本学のポータルにも組み込まれているWebClassの新機能(本学は未導入)を活用した、受講生たちの相互学習の授業実践について、複数の科目における事例紹介となる。講師のご報告に基づき、授業をどのようにすれば学生たちの成長の実感が伴う学習成果に結び付けていくことができるのかについて、参加者一同で考えていきたい。