【No.454】
共通教育改革について

○●○共通教育改革について○●○

 現在、共通教育機構長の笠井先生から各学類に対して「共通教育の将来計画について」協議依頼が行われている。この改革案で問題点とされているのは、1. 総合科目は本当に「総合」科目なのか、単なるオムニバス科目の別称ではないか。2. 総合科目、テーマ別科目、一般科目の違いは何なのか。3. 基礎科目を一般科目に含めているのは妥当な区分なのか、といった点である。また、履修体系としても、上記で指摘されているように区分が不明瞭な科目群からいくつかを選択する形が中心で、体系的な履修とはなっていないのが、金沢大学における共通教育であるとも指摘されている。「共通教育の将来計画について」においては、これらの問題点を解消するための改革案が提示されている。それは、平成23年からスタートし、現在9つにまでなった「共通教育特設プログラム」の考え方を基礎にして、教養教育のコアとなる「共通教育コアプログラム」を開設することを柱とするものである。この改革案は、現在、大学教育で主要テーマとなっている「学士課程プログラム」構築につながる教養教育(共通教育)の体系化を目指すものであると考えられる。

 この「共通教育コアプログラム」の先行事例として、「長崎大学 全学モジュール[1]」がある。平成24年度から導入された仕組みで、「現代社会が抱える課題、例えば、安心・安全、健康、環境などを中心とした科目を一まとまりにしたモジュール方式による教育で、1つのモジュールを受ける学生は約80名~100名、担当する教員は約10名[2]」とされている。この仕組みでは、学生はモジュールⅠ科目群から3科目を必修で、モジュールⅡ科目群からは3科目を選択で履修することになる。例えば、「コミュニケーション実践学」というモジュールでは、「コミュニケーションの比較文化」、「コミュニケーションの生物学 」、「コミュニケーションとICT」がモジュールIとして必修の3科目となり、「対人世界の心理学」、「身体・かかわり・言葉」、「芸術・スポーツとコミュニケーション」、「社会・メディア・政治」、「日本語と表現」、「異文化コミュニケーション」の6科目から3科目を選択することとなる。このほかに、「先進医学と現代社会」、「生命と薬」、「安全で安心できる社会」、「教育と社会」、「現代経済と企業活動」、「環境問題を考える」、「情報社会とコンピューティング」、「グローバル社会へのパスポート」、「核兵器のない世界を目指して」、「数理と自然科学のススメ」、「心身の健康と生命」、「現代の教養」、「ことばと文化」など23のモジュールが用意されている。

 昨年度から始まったこの長崎大学の取り組みは国立大学における教養教育(共通教育)改革としては非常にインパクトのあるものであったが、5月25日、26日に広島大学で開催された日本高等教育学会第16回大会での自由研究発表での山口大学における改革にはさらに強烈な印象を受けた。「一貫した学士課程教育の質保証を目指した「新しい共通教育」の研究-学生が共通して持つべき素養・能力を明確化した共通教育改革-」と題した発表では、「学士課程プログラム」構築につなげるための非常に大胆な共通教育履修の仕組みが説明された。改革の背景としては、「学士課程プログラム」構築の必要性の他に、少子化による志願者減、学生の質の変化、予算減少などもあるとされている。平成21年8月に学内の大学改革推進室から示された「山口大学における改革の基本方針」に基づき検討が開始された共通教育改革では、①教養コア科目及び英語の担当教員の運営方法、②一般教養科目及び専門基礎科目(理系基礎科目を除く)の運営方法、③理系基礎科目の運営方法、④時間割策定における課題の解決、⑤その他「新しい共通教育」を実施するにあったって必要な事項が取り上げられた。この検討作業において、共通教育の課題とされたのは、1.全ての学生に共通する内容とは言えない、2.初年次教育と学部教育の接続が不良、3.開設クラス数の肥大化、4.教育改善の停滞であった。これらの課題の解決策を検討し作られた改革案の骨子は以下の通りである。

➢  全ての学生が同じ学習到達目標による30単位を共通教育の必修科目として履修する

➢  全教員出動態勢から、全学部出動態勢とする

➢  外国語教育は、世界的共通言語である英語のみを必修とする

➢  異文化・他文化理解の基盤として、地域を知る授業「山口と世界」を新設する

➢  キャリア教育科目を必修とする

➢  非常勤講師の雇用を極力抑制する

必修科目30単位の内訳は、

✓  一般教養科目16単位(学部の責任で実施)

・ 人文3(哲学1、歴史学1、社会学1)

・ 社会3(経済と法3)

・ 自然2(自然科学2)

・ 学際8(人間の発達と育成2、文化の継承と創造2、社会と医療1、科学技術と社会1、環境と人間1、食と生命1)

✓  英語6単位

✓  教養コア科目8単位

・ 基礎セミナー2、情報処理2、運動健康科学1、山口と世界1、キャリア教育2

となっている。1単位科目が多く見られるが、これはクォーター制(8週)の導入(基礎セミナーと英語を除く)により実現されている。また、専門基礎科目は学部独自に必要な教養と位置づけ、全学としての共通教育科目からは外れている。英語については、必修科目である「TOEIC準備」を履修し,受験を義務づけられている6月上旬のTOEICテストを受験することにつなげる。受験結果として、TOEIC400認定を受けた学生は、「TOEIC認定400」という授業科目の1単位が認定され、後期に開講される発展科目としての英語リーディング、英語ライティング等の英語授業を受けることができる。TOEIC500以上または600以上は、それぞれ「TOEIC認定500」(2単位)、「TOEIC認定600」(2単位)という授業単位認定につながる。 TOEIC400に満たない学生は「Basic English」受講対象となる。ちなみに、山口大学では卒業要件にTOEICスコア基準点が設けられている。また、初修外国語は医学部医学科においてドイツ語、中国語、ハングルが、経済学部において中国語、ハングルの授業が、共通教育ではなく、学部専門基礎として開講されている[3]

 長崎大学、山口大学の共通教育改革については、ここ1~2年に始まったばかりであり、その成果が見えてくる(学生が実感する)のは数年後となるが、「学士課程プログラム」構築を目指しての共通教育改革としては非常に大胆なものである。大学教育において個々の大学の個性は重要であり、金沢大学において両大学と同じ仕組みを採用する必要は全くないが、卒業時に「学士」として専門的知識、一般的技能を十分身につけていると学生本人が認識し、有為な人材を輩出していると社会から認められるためには、今回の「共通教育の将来計画について」を真摯に検討し、スピード感を持って金沢大学としての「学士課程プログラム」構築につなげることが重要であると考えられる。(文責 評価システム研究部門 堀井祐介)



[1]http://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/course/all/module/index.html

[2]http://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/course/all/take/2012/class/index.html

[3]http://ds0n.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~g-kyoumu/daa/layer1/risyu_1_H25.pdf