【No.453】
単位互換と学習成果について

●○●単位互換と学習成果について●○●

5月14日、岡山大学で行われた「単位互換の国際的な枠組み―日本の現状と今後の課題」に関する広島大学副理事(国際担当)堀田泰司氏による講演会に参加した。2012年10月にUMAP(University Mobility in Asia and Pacific)国際理事会が承認したACCs(Asian Common Credits)の背景、概念、今後の課題について解説された。ACCsは、授業と授業時間外学習の総学習時間によって単位を規定し、アジア圏の大学の現行の単位制度に基づいて、その総学修時間を設定することにより、1単位-1単位の単位互換を可能にし、UMAP単位互換圏を形成しようとするものである。しかし、欧州単位互換・累積制度(European Credit Transfer and Accumulation System, ECTS)では、学習時間とともに学習成果(Learning Outcomes)の水準による等価性、互換性について検討されており、ACCsについては同様の学習成果に基づく単位互換についても検討することが課題であるとの印象を強く持った。国内外の大学間での単位互換の前提として、本学も進めている学習成果の明確化、各授業科目の達成度測定が可能な学習目標(成績評価基準)の設定、およびそれらの透明性の確保を各大学がさらに進めることが何よりも必要である。

 ACCsがモデルとしたECTSは、欧州高等教育圏構築に向けた取組みであるボローニャ・プロセスの一環として整備されたものであり、1年間に取得する単位数として60単位が標準値となっている。ECTSでの単位は、授業と授業時間外の学習時間によって既定され、その学習時間25~30時間が1単位となる。この学習時間は、講義、演習などの授業の時間と自主的学習、個人研究、職場実習、プロジェクトの準備、試験などに要した時間との合計である。このように設定された学習時間に基づいて単位互換が行われるが、当然ながら、単位互換を検討する授業科目の内容と学習目標、授業科目による学習目標の達成の累積による卒業時に達成されるべき学習成果(卒業時に学生が身に付けていることが期待される知識や能力)に関する大学間での等価性、互換性がごく自然に検討されるべき問題となるであろう。この点については、ボローニャ・プロセスにおいて大学が主導する「チューニング・プロジェクト」が貢献している[1,2]。このプロジェクトの中核は、学習成果を具体化する作業である。「分析・統合する能力」や「知識を実践に応用する能力」など教育プログラム全体を通して獲得される汎用的な能力と、9つの専門分野について、専門教育を通して獲得される知識と能力(汎用的能力)とに分類される学習成果が具体化された。このような学習成果の具体化において、特に重視されたのは、大学教員だけで行うのではなく、卒業生、雇用主も交えて作業を進めることであった。学生がどのような知識、能力を獲得すべきかを雇用可能性や市民性の観点も加味しながら協議された点は重要である。本学においても、今年度、学習成果の妥当性に関する卒業生、就職先を対象としたアンケートの実施が25年度計画に沿って予定されている。学習成果が社会のニーズに沿ったものかどうかを常に点検する必要があることを「チューニング・プロジェクト」は示唆している。

単位互換のために策定された学習成果をEUの大学の共通の学習成果として採用させようとするものではない。単位互換のための学習時間の基準と策定された学習成果を参照基準とし、各国は、この参照基準と自国の各大学の学習成果との対応関係を明らかにすることによって、参照基準を介して大学間の学習成果を紐付けすることが可能となる。1単位25~30時間の学習時間という基準と学習成果の水準に基づき、単位の等価性、互換性を判断することになる。

「チューニング・プロジェクト」で具体化された学習成果は、上に記したように、専門分野によらない汎用的能力と専門分野ごとの知識・能力に分類される。我が国でも、専門分野に関わらず共通して習得すべき学習成果の参考指針としての学士力(中教審答申『学士課程教育の構築に向けて』2008年)が提示され、さらに日本学術会議は各大学の学部・学科が教育課程の学習成果を同定し、カリキュラムを編成する際に参照される学習成果の「専門分野別の参照基準」の策定作業を行っている。本学では、学類ごとの卒業時に学生が達成すべき学習成果の明文化とそれに基づくカリキュラム・マップの策定をすでに完了しているが、今後は、学類によらない共通教育と専門教育による学士課程教育の汎用的学習成果の明確化について検討する必要があるであろう。学習成果、各授業科目の学習目標(成績評価基準)を対外的に明示するとともに、我が国の学習成果の参照例、アジア圏、欧州圏で策定された、あるいは策定される学習成果との対応関係を明らかにすることが、国内外の大学との質保証された単位互換の必要条件となる。

                       (文責 大学教育研究開発部門 西山宣昭)

 

[1]堀井祐介「ボローニャ・プロセスとチューニング」本学学生部主催講演会、2013.5.13.

 (講演会での配布資料をご希望の場合は、当センターの堀井までご連絡ください。)

[2]フリア・ゴンザレス、ローベルト・ワーヘナール(編著)「欧州教育制度のチューニング―ボローニャ・プロセスへの大学の貢献」深堀聡子、竹中亨(訳)、明石書籍、2012年.

 

○●○6月の角間ランチョンセミナーのご案内 ○●○

  6月は、「国際交流月間」として、様々な話題のもと留学生や日本語・日本文化研修生のご報告や、留学生センター等の教職員によるミニ留学説明会など、ためになる情報をお届けいたします。国際交流・異文化理解に関心をお持ちの方、是非ご参加下さい。詳しいスケジュールは、http://herd.w3.kanazawa-u.ac.jp/research/luncheon/ をご覧下さい。

 

○●○新着資料のお知らせ ○●○

大学教育開発・支援センターに、全国の大学や大学教育センター等から各種報告書が届いております。また高等教育関連図書を購入しています。図書資料は、図書室(総合教育1号館6階613号室。センター共同研究室向かい)に所蔵しております。ご関心のあるもの、参照したいものがございましたら、お貸しすることができますので、ご連絡いただければ幸いです。

 

・高等教育ライブラリ「大学教員の能力-形成から開発へ」 

東北大学高等教育開発推進センター(編)東北大学出版会(2013年3月)

・文部科学省大学間連携共同教育推進事業 京都三大学教養教育研究・推進機構 「時代が求める新たな教養教育」 平成24年度報告書(2013年4月)