【No.439】
キャリア教育とアクティブ・ラーニング

 

○●○キャリア教育とアクティブ・ラーニング○●○
 文部科学省の平成24年度「産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業」や「グローバル人材育成推進事業」の多くの採択事業でキーワードとして含まれているのが「アクティブ・ラーニング」である。これは昨年8月に出された中教審答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」に呼応している。
三重大学を幹事校として、本学を含む中部圏の24大学が連携して取り組む平成24年度「産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業」に採択された「中部圏の地域・産業界との連携を通した教育改革力の強化」でも、事業の柱として「地域・産業界との連携強化」とともに「アクティブ・ラーニングを活用した教育力の強化」が設定されている。2月19日に名古屋で本事業の中部圏産学連携会議が開かれ、企業関係者とともに求められる能力とその養成のための「アクティブ・ラーニング」の必要性について議論された。
 「アクティブ・ラーニング」については、当センターはセンターニュース等を通して継続的に情報発信を行っている。筆者も事例を通して、「アクティブ・ラーニング」のコアとなる教育方法と学習成果について考察を行った。初年次少人数ゼミナールの事例として三重大学のPBL(Problem Based Learning)セミナー(センターニュースNo.400)、東京大学のALESS(Active Learning of English for Scientific Students)プログラム(センターニュースNo.370)、大人数講義での橋本メソッド(センターニュースNo.425)などの紹介を行ったが、授業の共通の構造は、テーマに関する情報収集や資料(他者の論証)の評価(research)、それらの自己学習の結果に基づく議論やデーベート(discussion)、テーマ(設定された問題や課題)に対する独自の論証形成とその発表(presentation)である。(discussion)の部分は、実験や製作や調査で置き換えられる授業もある。このような共通する授業の構造から、課題発見・課題解決型授業(problem based learning , project based learning)と総称してもよいであろう。このような「アクティブ・ラーニング」の学習成果は、現状を批判的に分析し、問題や課題を発見・設定し、その解決のための仮説形成と仮説検証を行うことのできる能力、つまり批判的思考力であり、したがって「アクティブ・ラーニング」とは「考え方の基礎学」を理念とする「リベラル・アーツ教育」における教育方法ということができる。キャリア教育やグローバル人材育成は、「リベラル・アーツ教育」に帰着すると考えられる。
 「アクティブ・ラーニング」の強化のためには、知識獲得とどう連携するかという課題があり、研究室の活動として定着している「アクティブ・ラーニング」をいかに低年次の授業に下すことができるかというカリキュラム設計の課題に行きつく。
筆者は、ここ数年、前提となる知識が見込めない初年次の共通教育科目における「アクティブ・ラーニング」について検討している。後期の「健康問題を化学、生物学で検証する」では、「健康食品はほんとうに有効か」といったテーマについて、資料を調べ、情報を出し合い、グループ討論を経て、各自独自の結論と新たに見出した問題について根拠とともに口頭発表を行う。今年度授業期間の中盤で、「麻薬中毒はどうして起こるのか」「甘いものはどうしてやめられないのか」という受講生が提案したテーマについて議論し、「麻薬中毒と甘いものがやめられないのは同じ機構が働いているのではないか」という「仮説」が出てきた。各自、情報を集めた結果、「肥満と麻薬中毒は同じメカニズムが働いていること」を示した最新の論文があることを紹介した新聞記事に行き当たり、その論文Nature Neurosci.(2010)を部分的に読むまでに及んだ。自分たちが考えた仮説と同じ考えを持った研究者が、その仮説が正しいことを最新の学術論文で発表していることを知り、仮説形成という問題発見を受講生は体感できた。さらに、「脳の報酬回路は生物の生存にどのような役割を持っているのか」「体罰がエスカレートするのに、報酬回路の変調が関わっているのではないか」といった新たな仮説が提案された。この例は、初学者ゼミを履修した後であれば、「アクティブ・ラーニング」が初年次の授業科目においても十分可能であることを示している。
 本学では、中期計画【8-1】に沿って「授業の形態や授業における教育方法の多様化の方策」の一環として専門分野ごとの「アクティブ・ラーニング」について各部局で検討されている。それらの取組の一部は、教育改革部会とFD委員会との共催で3月4日に開催される教育実践報告会「能動的学修と学習成果」(学内限定)において紹介され、全学で情報共有される。
(文責 大学教育研究開発部門 西山宣昭)
 
○●○教育実践報告会「能動的学修と学習成果」(学内限定)○●○
  主催:教育企画会議教育改革部会 共催:教育企画会議FD委員会
日時:3月4日(月)15時00分-17時30分  
会場:メディア基盤センター2F プレゼンテーション室
趣旨:中期計画【8-1】の24年度計画「各学域・学類及び共通教育機構において、授業の形態や授業における教育方法の多様化の方策を引き続き検討し、実施可能な部局ではそれらの方策を実施する。」の実施の一環として、能動的学習に基づく課題探究・課題解決力等を養う学類の優れた取組みについて全学で共有し,各学類での取組みを促そうとするものである。
  趣旨説明:15時00分~15時10分 西山宣昭
  各報告20分・質疑応答5分:
15時10分~15時35分 法学類 東川浩二
    15時35分~16時00分 自然システム学類 奥野正幸
    16時00分~16時25分 医学類 松村正巳
    16時25分~16時35分  <休憩>
16時35分~17時00分 地域創造学類 神谷浩夫
   議論: 17時00分~17時30分 「能動的学修のデザインと学習成果」
 
○●○第9回評価システム研究会○●○
日時:3月12日(火)16時~17時30分
場所:総合教育1号館2階大会議室
テーマ:学習成果達成度把握に関する他大学の事例調査報告
報告者:渡辺達雄、西山宣昭(大学教育開発・支援センター)
趣旨:学習成果の達成度をいかに評価し、教育改善にフィードバックするかは、今、社会から求められている大学教育の質保証の重要なプロセスであり、多くの大学が様々な取組を行っている。今回は、神戸大学の学習成果達成度を把握するために実施されている各種アンケート、および九州工業大学の学習成果達成度自己評価システムについて、聞き取り調査を行ったので、その結果を報告する。得られた知見は、本学が現在進めている内部質保証システムの構築に参考になると思われるが、参加者間でこの点について議論したい。
 
○●○第15回カリキュラム研究会・第10回評価システム研究会合同○●○
日時:3月18日(月)13時~14時30分
場所:総合教育1号館2階大会議室
テーマ:「共通教育特設プログラム・「環境・ESDリテラシー」授業報告」
報告者:寳學淳郎(保健管理センター)、西山宣昭(大学教育開発・支援センター)
趣旨:共通教育特設プログラムの平成23年度開設時から開講されている授業科目群「環境・ESDリテラシー」の中から、今回は2科目について今年度の授業報告を行う。現在、環境・ESD関連の新規の副専攻および大学院科目のパッケージ化について全学で検討が進められており、これらの教育プログラムの基盤として「環境・ESDリテラシー」は位置づけられる。環境・ESDについての実践的能動的な学習を意図した2科目を取り上げ、授業内容の報告に基づき、その成績評価方法について参加者間で議論したい。