【No.438】
アクティブ・ラーニングのためのアクティブ・ティーチング

 

○●○アクティブ・ラーニングのためのアクティブ・ティーチング○●○
 「論争を授業のなかで利用する、というのは耳慣れないことかもしれない。一般に論争を好み、ビジネス界ではこれがよく使われるアメリカでも、教育場面ではこれまでほとんど使われなかった。これを利用する可能性が提案されたのは、ごく最近のことにすがいない」「アメリカのミネソタ大学で協同学習の意義を研究しているジョンソンたちは、小学六年生の社会の授業のなかで、試験的にこの論争を用い、学習者に及ぼす効果を検討している」「結果はどうであったか。単元の内容の理解のテストの結果では、論争群は明らかに一致追求群や個人学習群に比べてすぐれていた。しかも、四週間後に行われた再テストでもその効果が持続し、論争群は、最も成績がすぐれていた」「学習への意欲の高まりでも著しいものがあった。・・・さらにもっとこれについて学習したいという学習継続の動機づけも明らかに高かった」
 波多野誼余夫、稲垣佳世子『知力と学力』(岩波新書、1984年)からの引用である。そのまま妥当するかどうかは別にして、大学教育にも参考になる。だが、私はこれに続く文章に注目したい。すなわち「ただ単に小グループで『話し合い』をさせるのが理解を深めたり、学習への意欲を高めるためによいわけではない」「対立する意見の間で忌憚のないやりとりが行われることこそが重要なのである。常日頃からそのような集団の雰囲気づくりをしておくことも必要」というのである。
学生をアクティブな学びに導くために、教室で論争=忌憚のない意見のやり取りを行わせる、そのためには、対立する意見があるテーマを選ぶこと、対等な立場での発言を自由に行う雰囲気を作ること、そして、大学生ともなれば関連する必要な知識を事前に学習しておくことが条件になる。15回という授業はそのためにある。私の実践は、昨年6月の当センターニュース第409号、「秋入学を学生の学習意欲・授業理解度向上のための教育改善という視点で考える-その4-」で確認していただきたいが、180人の授業で論争に象徴されるようなアクティブ・ラーニングの空間・時間を創りだすためには、教員が授業設計・準備・進行により一層配慮を行い、アクティブになる必要がある。
 授業を嫌々やっているという教員は論外である。そんな教員がアクティブ・ラーニングを学生に求め、授業外学修を「させる」ために学生に課題を出しても、学生たちが受け身の学修スタイルから抜け出すことはありえない。
 多くの教員には、これを教えたい、伝えたいという強い気持ちがある。研究者だからである。場合によっては、昨日読んだ論文を、興奮しながら、これが研究の最先端だと一方的に語ることがあるだろう。従来型の講義であっても、学生たちにその姿勢は伝わる。ただし、教えたい内容を学生により理解しやすく伝えるために、様々な手法があり、また、学生たちにそれに基づいて考えてもらうためにも、やり方はいくつもある。それに気づけば、自ずと授業方法はアクティブになる。大教室の中で一番後ろまで歩きながら学生に話しかけ反応を見るという動きになって表れるかもしれないし、クリッカーを用いることにつながるかもしれない。学生たちのアクティブな学びがさまざまであるように、教員のアクティブな教え方もさまざまである。
 「主体的に考える力を持った人材は、学生からみて受動的な教育の場では育成することができない。従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から、教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換が必要である」昨年の中教審答申『新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて』の指摘である。「教員と学生が意思疎通を図りつつ」ということが前提条件となる。FDについて“How to Teach”から“How to Learn”へのパラダイムシフトが必要だとされる。だが、大学設置基準第25条の2が規定するように、大学が「組織的な研修及び研究の実施」をするのがFDであることを忘れてはならない。FDの成果を活かし各教員が自らの授業内容・授業方法に改善を加えるのが教育改善の基本である。結果として、学生が授業内容をより正確に理解し、授業内外の学修で自ら深い学びを行うようになることが期待されるのである。学修主体は学生自身であるが、教育の主体が組織としての大学であり、それを担う個々の教員であることにかわりはない。
 大学が組織として教育にアクティブになり、教員が個々の授業に、学生の学びのための学生支援にアクティブにならなければ、学生たちのアクティブ・ラーニングは不可能である。授業が好きな(得意でなくていい)教員のもとで学習者は学びを好きになる-小学校でも大学でも同じであろう。  (文責:教育支援システム研究部門 青野 透)
 
●○●新任教員の自己紹介●○●
 2月1日付で大学教育開発・支援センターに特任助教として着任しました久保田進一です。私の専門は哲学で、これまでの研究は特にフランスの哲学者のデカルトを中心に進めてきました。しかし、デカルトから様々な問題につながっていき、科学技術や生命倫理の問題や心身問題と絡んで心の哲学などいろんな分野に興味を持って研究を進めてきました。また、教育としては愛知県内のいろいろな大学等で10年以上にわたり、哲学、倫理学、生命倫理学を教えてきました。わかってもらうことを第一に、映画やアニメやマンガをネタにして、楽しく授業をしてきました。もちろん、ポイントは的確に示してです。今回、特任助教※に任命されたわけですが、私の役目はライティングセンターの構築に関わることで、特に、ICTによる学習システムとしてオンラインライティングセンターの構築です。また、図書館を中心とした学生の学習支援を行っていくということで、ビブリオバトルの開催や学習支援相談所などの設置なども考えております。これらによって、課題解決型のグローカル人材の育成を目指して、学生の能力アップに貢献できたらと思っております。こうした形で金沢大学をはじめとし、大学コンソーシアム石川を基盤にして石川県の学生を支援していきたいと思っております。石川県は初めての土地なのですが、よろしくお願い致します。 
※平成24年度文部科学省「大学間連携共同教育推進事業」(期間5年間)に、石川県内19高等教育機関の連携により採択された「学都いしかわ・課題解決型グローカル人材育成システムの構築」(代表校:金沢大学)の事業推進のため当センターに着任されました。