【No.436】
教養教育における達成度評価について(広島大学、新潟大学の事例)

 

○●○教養教育における達成度評価について(広島大学、新潟大学の事例)○●○
 近年、中教審答申を始めとして各種高等教育政策、研究で取り上げられているテーマの一つに「学位の質保証」がある。「我が国の高等教育の将来像」(2005年)、「学士課程教育の構築について」(2008年)の2つの中教審答申では、教養教育と専門教育の区分にこだわらず、一貫性・体系性を持った教育課程による「学士課程教育」が提唱され、修士、博士につながる学位としての学士およびこれらの「学位の質保証」が中心課題とされている。また、「質保証」に関わる指標、指針として「学士力」や「学士課程共通の学習成果に関する参考指針」があげられている。これらを反映させたカリキュラムマップ作成を進め、学習成果確認に活用する大学も増えてきている。
 一方、これらの答申が出されてから数年が経過し、1991年の大学設置基準大綱化で一般教育と専門教育の区分が廃止され、さらに、直近の中教審答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」(2012年) でも学士課程教育の質的転換への方策として、体系的・組織的な教育の実施があげらているにも関わらず、多くの大学ではカリキュラム上相変わらず教養教育と専門教育の区分が残っており、上記カリキュラムマップ作成についても専門科目から始められているところも多い。中教審答申(2012年)でも「プログラムとしての学士課程教育」という概念の未定着を課題としてあげていることからもわかる。
 現在、科研費補助金「学士課程教育の質保証に関する日米比較-教養教育の位置づけの視点から-」(基盤研究(C)、平成23年度~平成25年度、研究代表者:千葉大学普遍教育センター 前田早苗))の研究分担者として、日本における教養教育の位置づけおよびその質保証に関する調査研究を進めている。昨年度は認証評価機関の評価項目における教養教育の扱いを調査し、今年度は、日本の大学における状況調査を行った。以下に、昨年12月に広島大学、今年1月に新潟大学において行った調査の概要を報告させていただく。
 広島大学では、平成23年度から、教養教育運営組織として理事(教育担当)を本部長とする教養教育本部が設置されている(学則第12条の2「本学に、教養教育に係る企画・評価・改善を推進し、教養教育を円滑に実施するために、教養教育本部を置く。」)。この教養教育本部は、従来の委員会方式での運営では、活動評価があやふや、委員会では各部局の意向と異なる形では動きにくいという認識から常設組織として設置されたものである。学長の教養改革の意向も大きく反映されているとのことであった。教養教育本部は、評価・改善部門およびカリキュラム部門の2部門体制で、専任教員3名(計画人数、現在は1名(評価・改善担当))、協力教員23名で運営されており、カリキュラム編成権を持っている。教養本部の下に学部長クラスが委員となる教養教育会議が置かれ、教養教育科目担当の基本方針、学士課程基盤教育費(教養教育分)配分方針、系の構築・登録などを所掌している。ちなみに、広島大学では総合科学部が教養教育の8割を担当し、残り2割を他学部が担当している。現在、広島大学では66の教育プログラムがあり、平成18年度からこれら教育プログラムのディプロマポリシー策定を始めたが、教養教育部分は後回しとなっていた。平成22年度から、各教育プログラムに対して教養教育の位置づけについて調査を行い、教育プログラムにおけるディプロマポリシー、カリキュラムポリシーにおける教養教育の位置づけを再定義に取りかかった。平成23年度には教養教育本部が「教養教育の目標及び到達目標」原案を作成し、教育プログラムとしてポリシーにどう組み込むのかが検討されている。
 新潟大学では、平成17年度から、いわゆる教養科目と専門科目の科目区分が撤廃されており、原則、全ての授業科目が全ての学生が受講可能な「全学科目」であり、分野・水準表示法(ナンバリング)が導入されている。分野は基本的に科研費区分を用いており、水準は、全学に開かれているのか、当該学部学生のみなのか、資格科目なのかという開講対象と、大学学習法など,大学での学習を円滑にするためのもの、高等学校との接続を意識した水準(リメディアル)、通常の大学の基礎的水準、専門の中核的水準、発展的内容の科目で大学院との接続水準というレベルを示すものが組み合わされている。このような科目編成方針のもと、42の主専攻プログラムが運営されており、特に教養教育、教養科目という認識はなくなっている。そのため、教養教育における学習成果は設定されておらず、主専攻プログラムとして到達目標が定められており、そこでは、知識・理解、当該分野固有の能力、汎用的能力の3つの区分毎に個別の能力について記述されている(プログラムシラバス)。
 全学としての教育実施体制としては、教育担当理事を機構長とする教育・学生支援機構が置かれ、機構の中に、入学センター、教育支援センター、学生支援センター、キャリアセンター、大学教育機能開発センター、全学教職支援センターがある。カリキュラム編成権は、主専攻プログラムを運営する学部にあるが、授業科目解説は、学部から教育・学生支援機構に要請し、機構が、教員の所属組織である教育研究員に依頼し、調整する形をとっている。
 両大学とも、仕組みは異なるが、教育プログラムとして学士課程教育を実践しており、その中での教養教育またはそれに相当するものに対する学習成果、達成度が検討されている。具体的な教育プログラムの質保証としては、広島大学では、到達目標型教育を徹底的に言語化,可視化した、広島大学到達目標型教育プログラム(HiPROSPECTS®)が運用されている。新潟大学では、「学習成果の可視化」、「学習過程の記録」による学習デザインを行う仕組みとしての「新潟大学学士力アセスメントシステム(NBAS)」を開発し運用している。両大学の取り組みについては、昨年3月に当センター主催の大学教育セミナーで発表していただき、その記録は『TESKライブラリー6』としてまとめている。ご希望の方へは送付させていただくのでご連絡いただければ幸いである。(文責 評価システム研究部門 堀井祐介)
 
○●○第9回評価システム研究会・第15回カリキュラム研究会合同開催○●○
日時:2013年1月31日(木)16:30~18:00
場所:角間キャンパス総合教育1号館E1講義室
テーマ:教養教育における達成度評価について -広島大学、新潟大学の事例-
報告者:堀井祐介(大学教育開発・支援センター)
趣 旨:学士課程教育、特に教養教育における学習成果、学習達成度について、科研調査に基づき、広島大学、新潟大学の事例を紹介し、学習成果、学習達成度の設定手法、仕組み、測定方法、評価サイクルにおける位置づけについて議論したい。