【No.433】
東海地区大学図書館協議会 研修会 参加報告

 

○●○ 東海地区大学図書館協議会 研修会 参加報告 ○●○
 
 12月13日 名古屋大学附属図書館にて東海地区大学図書館協議会にて、金沢大学・名古屋大学・静岡大学の三大学附属図書館による、学習支援促進のための三大学連携事業の一環として行った香港・シンガポール・オーストラリアの大学図書館訪問調査報告を行った。
 香港・シンガポールでは、学習支援という観点ではライティング等の積極的な学習支援はされていないものの、学習支援センター等部局間協力において行われている。図書館独自に行っているものとして、EndNoteなどの文献リソースアプリケーション、リファレンス、先行研究レビュー、情報検索に関するセミナーとeラーニングコースが提供されていることが報告された。学習空間のデザインとしては、ディスカッション等、コラボレーションができる活動の場の他、1,2台のディスプレイをチームで共有しながら、活動ができる場、疲れたらリラックスできる場がつくられていたことや図書館の場を創造の場として、映像メディアを作ることができるエリアを備えた大学もあることが紹介された。
 オーストラリア調査チームからは、学習支援については各部局と図書館をつなぐリエゾン・ライブラリアンが彼らの専門分野に関するセミナーを開催すること、学部の授業に関わっているケース、個別の学習相談を行っているケースなど紹介された。レポートライティングについては香港・シンガポールと同様に他の専門部局との連携が見られた。図書館は専用の場を作る。モナシュ大学の取り組みは特徴的であり、Learning Skill Adviserを雇用し、ライティングのみならず、授業の聴き方、ノートテイキング、コラボレーション、目標設定など多岐に渡り学習支援をしている。eラーニングの利用については情報リテラシー以外にもOpen Course Wareの活用など、有効な学習資源を積極的な利用している。学習空間としては、ラーニング・コモンズと図書館を切り分けているケースと、建物全体をラー人コモンズとしているケースもあり、最近、日本でも増えてきている形態が見られた。オーストラリアでは、図書館が学習支援のハブとなり、他の部局との連携し、充実した学習支援を展開している。しかし、それを行う人材の育成も重要視している。
   
 続いて、私が香港・シンガポール・オーストラリアの事例から日本の大学図書館における学習支援において検討すべき点を整理した。具体的には、教育観に関するビジョンが研究支援≒教育支援(香港・シンガポール)なのか、研究支援≠教育支援(オーストラリア)なのかという点である。近年、Times Higher Educationの世界総合ランキングを急激に挙げてきている両国の大学では大学教員に対する研究支援が教育支援につながるという考え方があるが、日本と大きく違うのは、大学入学までに様々な厳しい試験を小学校の頃から乗り越えてきており、入学時の能力がとても高いことやモチベーションも明確になっていることがあるため、両国の教育観は一部大学を除いて、我が国の多くの大学にはフィットしないことも考えられる。また大学の全体的な教育目標とのすりあわせが必要であることも指摘した。教育に関する年度計画、各部局が作成したAP、CP、DP、カリキュラムマップとの関係性も意識する必要があろう。また各部局との協力関係も必要である。
 続いて、三重大学 附属図書館 研究開発室 准教授 長澤多代氏より、北米の事例に基づいて、大学図書館が実施する学習支援・教育支援について、ご講演がなされた。最初に、近年、我が国において、主体的な学習者の育成、学修時間の確保が求められていることが指摘されていることを背景に、大学図書館の機能強化として、ラーニング・コモンズの整備が全国的に進んでいることが指摘された。しかし、大学における教育において、環境整備をするだけでは不十分であり、大学教育の質保証において、どのように大学図書館が役割を担っていくのか検討する必要がある。長澤氏は学習成果の向上、授業外(教室外)の学習時間の確保、FD、SDに対応する形で大学図書館ができることについて提案をされた。学習成果の向上に対しては、情報リテラシーの育成や科目関連指導である。科目関連指導についてはアーラムカレッジが実施している、図書館員による情報検索法のセミナーや、クイーンズ大学の「教育実習(数学)のためのワークショップ」について、そのワークショップデザイン、図書館員と教員が連携していることについて紹介された。科目関連指導については、図書館で提供できるセミナーのカスタマイズが必要になる。しかし、教員が図書館を「課題支援をしてくれる場所」として認識していない問題が指摘された。
 教育支援については、まず教員が「大学図書館は学習・教育支援機関」であることを認識することからスタートすること、そして、教員が情報リテラシーを向上させ、図書館のリソースを活用しながら、授業設計をすることができることが求められることを説明された。そこまで行くには、大学図書館とFDセミナー等との連携は有効な方法の1つであり、アーラムカレッジ、ミシガン大学は積極的にFDワークショップ、新任教員への案内に図書館が関わっている。特にアーラムカレッジの教育開発ワークショップでは教員と図書館員がレポート課題などの課題設定、指導方法について検討をし、教員と図書館員が意見交換する機会を設けているとのことであった。このように、新任教員へのアプローチ、図書館・図書館員が協力的であり、親しみやすい雰囲気をつくること、FD支援、部局間連携が大学図書館の学習支援・教育支援の要点であることを説明された。
 本学は国立大学の中でも早めにラーニング・コモンズを設置した大学の1つであり、来館者数、書籍・雑誌の貸し出し数も年々伸びている。学習支援については、学生の主体性を高める部活動(国際交流や就職活動支援)、美術関連のイベントといった、インフォーマル・ラーニングの支援は全国的にも活発な方である。大学教育開発・支援センターは積極的に図書館との連携を模索し、学習支援を積極的に行ってきたが、今後は学習支援の幅を広げるためにも、各部局の教員との連携を進めていくことが望まれる。最初は、組織的連携は困難と思われる。こういったことに対して、反対する教員も数いることも残念ながら、今の日本の大学の現状であり、本学においてもそうであろう。最初は興味のある教員が草の根的に続けていくことが肝要である。
(文責 教育支援システム研究部門 山田政寛)