【No.432】
カリキュラム・マネジメントについて-大学教育学会課題研究集会参加報告

 

○●○ カリキュラム・マネジメントについて-大学教育学会課題研究集会参加報告 ○●○
 11月23、24日に島根県松江市を会場に、2012年度大学教育学会課題研究集会が開催された。
重要なテーマについてプロジェクト方式で継続的に研究を進め、当集会にて成果発表を行う形となっているものであり、ここ数年の企画テーマとして「共通教育」「FD」「教職協働」「学生支援」がとり挙げられている。そのうち、カリキュラム・マネジメントにかかる教職員の機能にフオーカスをあてた部会について、ここで報告したいと思う。
 内容は大きく、大学全体、そして看護・医療・福祉などの国家資格に関わるか教員免許に関わる学部におけるカリキュラムの運営の在り方や改革の取り組みについてのインタビュー調査から得られた知見と、カリキュラム・マネジメントについて長年研究してきた専門家による概念の明確化を意図した報告の2つで構成されていた。急いで付け加えると、参加した部会の発表者の間で理解共有されているカリキュラム・マネジメントとは、「企画・実行・検証・改善」のいわゆるPDCAサイクルの一連の流れを(組織的に戦略的に)どう支えていくかということである。
 さて前半では、具体的には立教大学学校社会教育講座、東洋大学教職課程、福岡歯科大学、島根県立大学看護学部の事例が報告された。教職課程の2事例では、いずれの段階でも教員と職員がかなり緊密に連携(円滑に協働)している状況にあるようで、とくにそうした協働を維持していくのに、学内外の事情を熟知し外部組織と連絡をとり、法規・制度改正に迅速に対応できる数名の核となるベテラン職員、あるいはカリキュラム企画立案から担当教員配分や職員との連携に尽力する核となる教員の存在が重要になっていること、とくに職員の異動等に関わり組織的な工夫を行うなどして、経験についての継承や教員・一般職員に対するアドバイスがやり易い環境を整えようとしていること、教員と職員が共同で作業し、互いに自由に意見を述べる雰囲気が醸成されていることなどが示されていた。
 国家資格系の事例では、一方の大学はトップの権限が比較的大きく、その分意思決定が容易であり、カリキュラム・マネジメントは教員中心で進められ、教職間の交流・連携が少なく、職員の負担が増しやすいなどで、マネジメントがあまり機能していないとみられている。他方の大学では、例えば時間割や学内行事などについて教職員全体の動きを判断して調整や協力がなされており、仕事上の問題を可視化するなど教職員間の理解を浸透させており、可能な限り交流をもちネットワークを広げ維持し、フランクに話せる場を確保しようと努め、メンバーの特徴を活かした役割担当を決め、専門性を高めるようにし、協働の組織的裏付けを整えるようにしていることが示された。
 限られているもののこうした各大学の実態も踏まえながら、後半では、カリキュラム・マネジメントの考え方について報告がなされた。簡単にまとめていくと、
(1)教育目標を実現するために、教育内容・方法(カリキュラム)上の連関性と条件整備活動(マネジメント)上の協働性の対応関係を、PDCAサイクルを通して動態化していくかがカリキュラム・マネジメントの基本で、各大学の個性や特色に基づき、上記の営みにより教育改革を行っていくべきである。
(2)キーワードとしての「連関性」および「協働性」に関し、前者では、①理念・目標とカリキュラム編成の基本方針との連関性②編成レベルでの学生のニーズ・実態との連関性③内容上の分化と統合④教育方法上の共通性と個別性との連関性が、後者では、①ビジョンの共有化、同僚性、参画などの協働性②組織構造・文化、リーダーシップなどの構成要素の協働性③組織体制と組織文化とのポジテイブな相補としての協働性④その合成力としての組織力⑤その組織力をさらに促進するリーダーシップ機能がそれぞれ基軸となる。
(3)この20数年の間に提出された答申等の検証を行ってみると、カリキュラムを作り、動かし、変えていく教育活動とそれを実現化していくマネジメントの二つの方向性に徐々に舵を向けようしていっており、最近提出された『生涯学び続ける主体的に考える力の育成』答申は、全学的な教学マネジメントといった言葉に象徴されるように最もそれを表現していることが明らかである。
(4)(有効な)組織文化は新たに創ることより、それらを維持することの方が重要であること、問題の複雑さに対応するために、多様な解決の枠組みを作り、より有効な戦略を開発することが大切であること、固有の既存の分化を保証しつつも、併せて改善を漸次的に進めていくこと、日常の業務(処理)と改革との調和の両方の志向を持ち、それをうまくマネジメントしていくことが重要である。
ということになる。
 カリキュラムツリーの実質化や学習成果の達成度評価などを中心とする質の保証を本学で検証し、改善していくにあたっても、上記のようなカリキュラムマネジメントの観点とそれらを支える教職協働は改めて考慮すべき重要な考え方であると思われる。
(文責 評価システム研究部門 渡辺達雄)
 
 
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・土持ゲーリー法一『ポートフォリオが日本の大学を変える』東信堂、2011年
・山田礼子『学びの質保証戦略』玉川大学出版部、2012年
・杉谷祐美子編『大学の学び : 教育内容と方法』(リーディングス日本の高等教育2)玉川大学出版部、2011年
・『授業が進む学びの基礎力-ジェネリックスキル教育の充実に向けて』愛知教育大学教育創造開発機構、2012年
・『教育養成系大学におけるリベラル・アーツ-教養教育の在り方を考える-』(「リベラル・アーツ型教育の展開」シンポジウム2011)、愛知教育大学教育創造開発機構、2012年
・『CAREER HANDBOOK 2012-就職活動のためのキャリアハンドブック』北海道大学キャリアセンター、2012年
・『日本の大学に求められている国際通用力とは』(大学教育開発研究シリーズNo.16)立教大学大学教育開発・支援センター、2012年