【No.431】
IDE大学セミナー参加報告

 

○●○IDE大学セミナー参加報告○●○
 11月19日(月)に仙台で開催された平成24年度IDE大学セミナーに参加した。このセミナーは東北大学高等教育開発推進センターとIDE大学協会東北支部主催で開催されたもので、テーマは「大学の教育改革と組織編成」であった。近年の高等教育に対する関心、圧力の高まりの中で、大学は多くの課題(とりわけ質保証)に取り組まなければならない。日本の教育制度において大学は高等教育機関と位置づけられている。高等教育機関という語の意味は、教育をその本来の使命として担っていると言うことである。セミナーでは、大学の本来の使命である教育を考える上で非常に重要な「教育プログラムとそれを支える組織の在り方」に焦点をあてた講演、議論が行われた。講演者は、天野郁夫氏(東京大学名誉教授)、櫻井勝氏(金沢大学、理事・副学長)、藤本武士氏(立命館アジア太平洋大学教学部副部長)、森本あんり氏(国際基督教大学、学務副学長)であった。今年8月末に中教審から出された「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」において「6.学士課程教育の質的転換への方策」として「教育課程の体系化」および「組織的な教育の実施」が記されている。今後は、今まで以上に教育実施組織の在り方、体制が重要になってくるのは明らかである。
 天野氏の講演では、法令、答申等を引用し、戦前・戦後、新制大学発足、近年の改革における教育研究組織の変遷について紹介があった。しかし、1970年代からの伝統的な講座-学科-学部に代わる新たな組織を求める動きが、40年を経た現在でもまだ十分な結論が得られておらず、未だ混迷の中にあるとされた。特に近年においては、ヨーロッパ・モデル(「ファカルティ・チェア」制)からアメリカ・モデル(「カレッジ・デパートメント」制)への中途半端な移行がなされ、教育研究組織において、個々の教員が何をしなければならないのかが十分議論されていないと述べられた。
 藤本氏からは、教職員間での理念・教育目標の共有が組織として重要であり、その上で「教育組織は何のためにあるのか」、「教学改革・教育改革は何のために行うのか」を考えると改革が動くという報告があった。また、教員の半数が外国籍であるため、会議等での二言語使用の状況が紹介された。金沢大学でもグローバル化推進の流れにおいて、今後、外国籍教員の数が増えてくることが予想される。外国籍教員が会議の正式構成員である場合は、それらの教員の能力を最大限活用するためにも、会議進行、資料、議事録等の多言語化が望ましいと考えられる。  森本氏の話の中で特に印象的だったのは、「海外で信頼されない日本の評点」であった。ウィスコンシン大学マディソン校(the University of Wisconsin–Madison)Webサイト では、いくつかの海外の大学情報を国毎に参照できる。このサイトには東大を始めとする日本の有名大学が並んでいるが、国際基督教大学を除いて全ての大学に"Grading is high; few fail (and are not reported). "とのコメントがついており、このことを一例として日本の大学の成績評価は国際的に信頼されていないと述べられた。一方、同サイトにおいて、オランダの3大学については"Grading is severe in the Netherlands. Grades of 10 are not usually awarded and a grade of 9 is normally awarded only in special situations. "とのコメントがつけられている。成績評価基準は単純に厳しければいいというものでは無いが、大学としてきちんとした教育の質保証を行っていることを学内外に示さなければならない時代に、日本の大学に対するコメントとオランダの大学に対するコメントの違いは社会的にどう解釈されるのだろうか。
 講演、その後の質疑応答、議論を踏まえて言うと、大学全体および教育責任部局(金沢大学では学類)として、理念・使命・教育目的、3つの方針(学位授与方針、教育課程編成・実施方針、入学者受け入れ方針)をそれぞれの構成員が十分理解し、それぞれが何をしなければならないのかを把握し行動すれば、外部から客観的に評価される質の保証の上に成り立つ教育が実施できるものと考えられる。幸い、金沢大学は学域・学類制に移行し、教員組織と学生組織を分離し、研究域・系として学類、研究科へ教育提供を行うという体制がとられているため、全てを学部内で動かしていた時代に比べ、教育が外部から見えやすくなっている。そのメリットを活かせるなら、カリキュラムマップ、カリキュラムツリーの実質化、科目ナンバリングの導入、学習成果達成度評価指標策定等の教学・教育改革を構成員の理解の上に進めていくことが可能ではないだろうか。また、中期目標、中期計画、年度計画において学域・学類制の定着と実質化について述べられているが、「教育プログラムとそれを支える組織の在り方」という観点で教育研究組織についても不断の検証が必要であろう。(文責 評価システム研究部門 堀井祐介)
 
 
○●○第10回大学教育セミナーのご案内○●○
主催:金沢大学 大学教育開発・支援センター
共催:金沢大学附属図書館
後援:名古屋大学附属図書館、静岡大学附属図書館
テーマ:「『学びの場』に向けた大学図書館の再構成を考える―学習支援促進のための三大学連携事業の中間報告」
日時:平成24年12月8日(土)13:00-17:30
場所:金沢大学サテライトプラザ3階集会室
 
 
○●○第8回評価システム研究会・第14回カリキュラム研究会合同開催○●○
日時:2012年12月10日(月)16:30~18:00
場所:角間キャンパス総合教育1号館E1講義室
テーマ:成績評価に役立つルーブリックの作り方
報告者:堀井祐介(大学教育開発・支援センター)
趣 旨:教員の成績評価活動を支えるツールとして注目を集めているルーブリックの作り方、使い方について説明するとともに、実際米国で使われているルーブリックを紹介し、授業におけるルーブリック活用につなげる方策について議論したい。なお、本年7月に開催された第7回評価システム研究会・第13回カリキュラム研究会と内容は重複しています。