【No.427】
教育の質保証に向けて-改めて授業評価アンケートの活用を考える

 

○●○ 教育の質保証に向けて-改めて授業評価アンケートの活用を考える ○●○
 前回(422号)、教育評価あるいは効果測定に資するアンケートの実施と活用に関する他大学の取り組みにかかわって、アンケート結果の教育モニタリングへの活用事例を紹介した。「入学・進学時アンケート」や「卒業・修了生アンケート」などいずれのアンケートも、内部(教育)質保証に向けたPDCAサイクル(より具体的にいえば、学習成果アセスメント・サイクル)を回すさいに重要なツールとなることはいうまでもないが、毎年度の適切な一時点での検証を行い、検証結果にもとづく実際の改善はどうしても年度を跨ぎもしくは数年を要する。教育の質を向上するためにも、何より改善に向けた教員へのフィードバックをできる限り早くすることが理想的である。このような課題からみて、活用の仕方によっては有効な手段となり得ると思われるのが、「授業評価アンケート」である。授業評価アンケート自体は、1990年後半からの大学改革トレンドの中にあって、早くから注目され各大学で実施されてきたが、実施率は高いが有効に活用されていないとの指摘は、各種報告等で繰り返し述べられている。
 9月27日に地域創造学類のFD活動の一環として、授業評価アンケートの活用について提言する機会を得た。そこで述べたこと(質疑応答も含め)を要約すれば、以下のような内容となる。
総括段階(授業終了)での授業評価は、学生にとって意義を実感しにくく、また期末試験やレポートだけでは授業を軌道修正できず、多くの場合フィードバックがなされない学習評価のあり方は、学生の学習促進につながらない。そのため、授業実践の文脈の中(早期の段階で)に適切に組み込む(学生に可能な限り早くフィードバックする)よう努めるべきである。
 (1)開講科目のポイント平均と、教員担当学類で、平均値の分布表を比べ、自分が担当した科目は、学類の全体の科目と比べ、共通するところ、異なる傾向があるかを確認する。(2)自分が担当する異なる授業(同じ学期・クラス間)で差の大きい項目、小さい項目をみる。(3)過去の同じ授業の分析結果と比較し、大きな変化はないか検討する。(4)学類共通科目か専門科目か、学類生(自分のコース生)のみの受講か読替科目か(自学類学生と他学類学生の割合によって影響度は変化)、学生の授業参与を促進する授業方法かそうでないか、といった観点で差の解釈を行っていく。その場合、ポイント平均値や分散の程度を、授業内容や方法の違いと関係づけて(付け加えれば、アンケートの質問項目中、授業水準如何(問7)や授業内容への興味(問8)、知識や視野拡大(問9)といった部分は重要と考える)、個々の教員が振り返り推測するのが第一義である。
 ただし、「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」(中央教育審議会、平成24年8月28日)でも、「組織的な教育の実施」等が取り上げられていることも踏まえ、各学類が掲げる学習成果の達成に向けカリキュラム、授業内容、教育方法が適切であるかを検討し改善するために、さらに進んで、(5)学類の「学生の学習成果」からみるということを加え、カリキュラムツリーの中で、自分が担当する科目がどういう位置にあるかを念頭におきつつ、例えば、担当授業と関連性の強い他の教員が担当する科目の分析結果と見比べて検討し、改善点はないかをチェックするわけである。望ましいと考えても実行には困難を要することであるが、教員間で客観データを共有し、他人の目(解釈)を入れ、授業改善への共同意識をもたせることが求められるのではないかと考える。
 アンケート分析シートの種類の多さ(開講科目、全体平均、学類開講科目、教員担当学類など6~7種類)や、相関係数、レーダーチャートなど分析結果を集約した図表が一度に盛り込まれかえって読みにくいこと、またアンケート結果の教員・学生へのフィードバックを効果的に行うために学類の要望にもとづくハード(アカンサスポータル)の柔軟(オーダーメード)な活用方法など、検討を要すべき問題も残っているが、「授業評価アンケート」の活用を改めて検討すべきではないだろうか。
(文責 評価システム研究部門 渡辺達雄)
 
 
○●○ 第10回大学教育セミナー 「『学びの場』に向けた大学図書館の再構成を考える
―学習支援促進のための三大学連携事業の中間報告」のご案内 ○●○
主催:大学教育開発・支援センター、共催:金沢大学附属図書館
後援:名古屋大学附属図書館、静岡大学附属図書館、大学コンソーシアム石川(予定)
日時:平成24年12月8日(土)13時~17時半
場所:金沢大学サテライトプラザ3階集会室
テーマ:「『学びの場』に向けた大学図書館の再構成を考える
    ―学習支援促進のための三大学連携事業の中間報告」
 
スケジュール
13:10 趣旨説明 山田政寛(大学教育開発・支援センター 准教授)
13:15~基調講演 井上真琴 氏(同志社大学 学習支援・教育開発センター 事務長)
  「大学図書館員が持つべき「学習支援力」とは何か?-情報リテラシー教育を焦点にして-」
14:15~ 報告
・岡部幸祐 氏(名古屋大学附属図書館 情報サービス課長 本センター客員研究員)
 「学びのスキルとしての情報リテラシー -ILI-L育成事業が目指すもの-」
・加藤憲二 氏(静岡大学附属図書館長 理学部地球科学科 教授)
 「英国ウォーリック大学の学習支援と静岡大学の現況」
・守本 瞬(金沢大学附属図書館 情報サービス課 専門職員)
「金沢大学附属図書館の学習支援 ~ラーニング・コモンズを中心に~」
16:00~ 質疑応答・パネルディスカッション (17:30 閉会)
概要:近年, 大学図書館は大きく変化してきています.研究資料, 文献の保存と提供, ならびに文献検索などの情報検索技術を中心とした情報リテラシーの育成という従来の役割から, 学習支援の場として, 学生の学習に対して積極的に関与するという変化です. 学習支援の場として大学図書館は近年, ラーニング・コモンズという学習支援環境を構築し, 注目され始めています. しかし, どのような内容で, どのように学習支援すべきなのか, 現状では議論が進行中です. これらの問いにこたえるためには, 学習という概念を見直し, 検討する必要があります. 本セミナーでは同志社大学学習支援・教育開発センター事務長 井上真琴氏をお招きし、図書館職員に求められる学習支援に関する能力、井上氏の実践について、教育に貢献する大学図書館像についてご講演頂きます。また6月に締結した金沢大学、名古屋大学、静岡大学の3大学図書館の学習支援に関する連携事業の中間報告を行うとともに, 大学図書館が目指す学習支援について積極的な議論を行います。
 ※問い合わせ先:大学教育開発・支援センター 山田政寛 mark@mark-lab.net