【No.426】
チューニング・プロジェクトについて

 

○●○チューニング・プロジェクトについて○●○
 現在、欧州高等教育界ではボローニャ・プロセス(Bologna Process)による欧州高等教育権(European Higher Education Area (EHEA)) 構築が進められている。ボローニャ・プロセスとは、1999年から始まった活動で2010年をめどに欧州圏内の高等教育改革を進めることで共通の高等教育権を構築する取り組みである。このボローニャ・プロセスは、2010年に中間総括がなされた後、2020年をめどにEHEAという名で継続的に取り組みを深化させている。ボローニャ・プロセスでは、主として①理解しやすく比較可能な学位システムの確立、②2サイクルの大学構造(学部/大学院) の構築、③単位互換制度の導入ECTS (European Credit Transfer System )「ヨーロッパ単位互換システム」(現在は、European Credit Transfer and Accumulation Systemとなっている)、④学生、教員の移動促進、⑤ヨーロッパレベルでの質の保証、⑥高等教育におけるヨーロッパ次元の促進、を目指している 。
 チューニング・プロジェクト とは、上記ボローニャ・プロセスの活動を進めるにあたり、大学と各学問分野(Subject Area)専門家とが動かしているプロジェクトである。各国、各学問分野において、お互いにどのような教育を行っているのかについての情報共有が不十分なままでは、比較可能な学位システム、単位互換制度などの導入は不可能であり、チューニング・プロジェクトはその点を解消するために2000年からスタートした。プロジェクトの正式名称はTUNING Educational Structures in Europeといい、40以上の学問分野が対象となっている。これまで、英文ではチューニング・プロジェクトWebサイト上で各種報告書を読むことが出来たが、今年の2月に主要な報告書である"Tuning Educational Structures in Europe Universities contribution to the Bologna Process – An introduction  -"が深堀聰子氏(国立教育政策研究所高等教育研究部総括研究官)、竹中亨氏(大阪大学大学院文学研究科教授)により日本語に翻訳され、『欧州教育制度のチューニング―ボローニャ・プロセスへの大学の貢献』 とのタイトルで明石書店から出版された。同書の第1章「チューニング・プロジェクトの概要」、第2章「チューニングの方法」および第7章「チューニング用語の解説」はチューニング・プロジェクトWebサイト上で読むことが出来る 。
 英和辞典によると"tuning"とは「調律、チューニング、音合わせ」とある。この意味の通り、チューニング・プロジェクトとは、「大学は、学位プログラムに画一性をもたらそうとしているわけではない。統一的で、規程力と権威を持つ、欧州型カリキュラムを追求しているわけではない。大学は、参照基準、収斂、共通理解を求めているに過ぎない。」ものである。「チューニングにより、学習プログラムの(再)設計・開発・実践・評価する方法を示すもの 」である 。チューニングは専門分野別の参照基準(学習成果とコンピテンス)を開発する基盤としての役割を果たすという点からも、チューニングでは教育プログラム評価に関してのキーワードを以下のようにわかりやすく定義している。
 学位は、学習量、水準、学習成果、コンピテンス、プロフィールの各領域において規定されるべき
 学習成果とは、学習者がある学習経験を終了した時点で、どのような知識を習得し、理解し、活用できるようになっていると期待されるかを明示したもの
 学習成果は学習者が獲得すべき「コンピテンスの水準」の形で表される
 コンピテンスとは、認知的・メタ認知的技能、知識と理解、対人的・知的・実践的技能、および倫理的価値が有機的に結合したもの
 コンピテンスはすべての科目を通して育成され、学習プログラムのさまざまな段階で測定されるものであり、専門分野固有のものもあれば、汎用的なものもある
 このチューニングの考え方は、学術会議のもと各学協会が策定作業を進めている参照基準の考え方 にも反映されており、今後、日本における教育プログラム評価に役立つものである。第5章では、コンピテンスにもとづく学位プログラムにおける教授、学習、評価の方法が述べられているし、また、別添資料2(Annex2)としてカリキュラム評価のためのチェックリストも掲載されている。是非、この報告書または日本語訳を一度読まれることをお勧めしたい。(文責 評価システム研究部門 堀井祐介)
 
○●○第10回大学教育セミナーのご案内○●○
主催:金沢大学 大学教育開発・支援センター     共催:金沢大学附属図書館
後援:名古屋大学附属図書館、静岡大学附属図書館
テーマ:「『学びの場』に向けた大学図書館の再構成を考える―学習支援促進のための三大学連携事業の中間報告」
日時:平成24年12月8日(土)13:00-17:30
場所:金沢大学サテライトプラザ3階集会室