【No.424】
秋入学を学生の学習意欲・授業理解度向上のための教育改善という視点で考える-その7-

○●○秋入学を学生の学習意欲・授業理解度向上のための教育改善という視点で考える-その7-○●○

 「デンマークに取材に行ってきました。・・・大学授業料が無料というのも日本人には驚きです。優秀な学生を税金で育てることは将来への投資。その若者たちが大学を卒業して社会を支え、良き納税者になることで、国家に見返りがあるというのです。大学生に対する配慮は、それだけではありません。多数の学生寮があり、大学生は無料で入居できます。さらに毎月七万円を超える生活費が国から支給されます。大学生は、アルバイトなどしないで学業に専念できるように、との配慮からです」(「池上彰のそこからですか!?連載91消費税25%のデンマークの秘密」『週刊文春』2012年10月11日号)。
 秋入学に関し、家計の教育負担が増えるという意見や、ギャップタームにアルバイトを集中して行い生活費などを稼ぐことになれば入学後の学業に専念できるという意見などを聴く、日本の大学関係者からすれば、別世界の話でしかない。実は、ここに、大学教育の本質をつく問題、すなわち単位数計算根拠という問題が存在する。
この問題の関連条文を丁寧に読んでみたい。
「大学設置基準第二十一条  各授業科目の単位数は、大学において定めるものとする。 
2 前項の単位数を定めるに当たっては、一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準とし、授業の方法に応じ、当該授業による教育効果、授業時間外に必要な学修等を考慮して、次の基準により単位数を計算するものとする。 
一  講義及び演習については、十五時間から三十時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。 
二  実験、実習及び実技については、三十時間から四十五時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。ただし、芸術等の分野における個人指導による実技の授業については、大学が定める時間の授業をもつて一単位とすることができる。 
三  一の授業科目について、講義、演習、実験、実習又は実技のうち二以上の方法の併用により行う場合については、その組み合わせに応じ、前二号に規定する基準を考慮して大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。 
3  前項の規定にかかわらず、卒業論文、卒業研究、卒業制作等の授業科目については、これらの学修の成果を評価して単位を授与することが適切と認められる場合には、これらに必要な学修等を考慮して、単位数を定めることができる。」
本年8月の中教審「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」答申は、「学生がいかにしっかりと主体的な学修をしているか、各大学が教育方法の質的転換を通して学生の主体的な学修の場をいかに支えているかが、知的な潜在力の指標となる」と指摘した。授業の場:教室が主体的な学修の場であるべきことは当然であり、答申のいう「学生の主体的な学修の場」とは、各大学が定める各授業科目の単位数の根拠となる「授業時間外に必要な学修」場こそが中心となる。では、そうした場は実際にはどこなのか。
 9月28日角間キャンパスで、本学と文部科学省の共催による「大学教育改革地域フォーラム2012 in 金沢大学」が開催された。一連のフォーラムのうち、上記中教審答申発表後初めてのものであった。私は、モデレーターを担当し、本学3名他大学2名計5名の学生パネリスト、そしてフロアーの100名を超す、クリッカーによる質問回答に協力してくれた学生たちの意見を、他のパネリスト、すなわち常盤豊文部科学省大臣官房審議官、林勇二郎前金沢大学長/中教審大学分科会委員、黒田壽二金沢工業大学学園長・総長/中教審大学分科会委員、および村澤勉石川県高等学校長協会会長/金沢泉丘高校長とともに考え、課題を参加者全員で共有化するよう努めた。フォーラムの様子は、YouTube文部科学省チャンネルで公開予定であるが、参加者アンケートでは、8割以上が大学教育改革について理解が深まったと回答しており、成果はあったと判断している。
 さて、このフォーラム後半は25問のクリッカーによる回答結果をめぐるやりとりとなった。その中で私は「授業時間外に学習する方法・場所」を学生たちに尋ねた。多い順位に「図書館等で」70%、「家で」57%、「学生研究室で」44%、「空き教室や学食で」29%となった(複数回答可)。キャンパス内の学修環境整備がいかに重要かということである。
 会場が最もどよめいたのは、「授業外学習時間(平日1日、試験期間とその直前の期間は除く)」についての設問に対し、1時間未満35%、1時間以上2時間未満20%、2時間以上3時間未満19%・・・という回答になった時であった。パネリストの黒田壽二金沢工業大学学園長・総長が、そのように答えた学生に直接、「なぜ1時間未満で済んでいるのか」その理由を求められたほどであった。
 そもそも、答申も、「本審議会が学士課程教育の質的転換への好循環の始点として学生の学修時間の増加・確保に着目したのは、我が国の大学生の学修時間が諸外国の学生と比べて著しく短いという現実を改めて認識したからに他ならない」と指摘していた。
図書館内にラーニングコモンズを整備するなどキャンパスに学修の場を確保することに加えて、積極的に学生たちに対して学修の時間を確保させねばならないのである。答申がいう「何らかの具体的な行動に着手することによって、まず学士課程教育の質的転換への好循環を生み出」すという指摘は、国がなすべき施策(冒頭のデンマークのように、経済面での心配が無い環境に学生たちを置かねばならないのは言うまでもない)に加えて、それぞれの大学が、時間外学修の機会をきちんとシステムとして提供する、いわゆる「隠れたカリキュラム」として準備しなければならないことを意味する。
 大学教育開発・支援センターは開設翌年から、角間ランチョンセミナーを実施してきた。10年目となり、開催回数は700回を超えた。昼休みという時間帯の時間外学修の設定である。本年後期からは、新たに角間モーニングセミナーも始めた(読売新聞10月13日付石川版の報道参照)。筆者は、次年度から、担当科目について、ランチョンセミナーとモーニングセミナーを、シラバス上に時間外学修の機会として明記する予定である。今年度180名(1年生)が受講した授業を中心に、新入生の一定の割合が、授業中の学修だけでなく、時間外の学修においても主体的に取り組む習慣を身につけるよう、少しでも支援したいと考えている。    (文責:教育支援システム研究部門 青野 透)