【No.422】
各種アンケートを通じた教育評価について

○●○ 各種アンケートを通じた教育評価について ○●○

 第二期の認証評価において、内部質保証および学習成果測定にかかわる基準が盛り込まれていることを象徴に、大学にとってはこの二つをどのように実現していくかが大きな鍵となり関心の中心となっている。その実現のためのシステムは、いまだ国内では有効な教育効果測定の方法が確立されていないのが実情であるなかにあって、個々の大学でそれぞれ工夫していく必要があると思うが、ここでは、教育評価あるいは効果測定に資するアンケートの実施と活用に関する他大学の取り組みを紹介したい。
取り上げるのは神戸大学で、当大学では教育評価そして教育効果測定において、従来各学部などで独自に実施していたのを、平成18年度から全学共通での項目にもとづく5種類のアンケートを実施し、アンケート結果の教育モニタリングへの活用を図っている。5つとは「入学・進学時アンケート」「授業評価アンケート」「卒業・修了時アンケート」「卒業・修了生アンケート」「就職先機関アンケート」である。
 入学・進学時アンケートはウエブシステムで年に1回、入学者・進学者全員を対象に入学直後に実施している。そこでは、入学満足度・入学・進学時の学生の学習姿勢・態度、進路希望を把握することを主な目的としている。
次に授業評価アンケートについては、学期ごとに少人数科目を除く全ての科目でウエブシステムにより実施され、各学部の教育課程に配置したそれぞれの授業科目の教育効果を把握し、各学部で掲げた教育目的の達成に向けて教育が順調に実行されているか、そして改善点はないかをチェックすることを主な目的としている。回答結果は教員がウエブ上ですぐに確認でき、また結果についての教員側の感想や今後の改善点を書き込み受講生に伝えることで、学生教員間のコミュニケーションを促すような仕組みになっているようである。
 卒業・修了時アンケートは、卒業・修了予定者を対象とし、2月から3月にかけ同様にウエブシステムにより実施され、神戸大学が教育憲章で掲げる養成しようとする人材像「人間性」「創造性」「専門性」「国際性」1)あるいは習得を目指す学習成果・能力が、学部または大学院の各教育課程を通じてどれくらい身に付けたのか、それらの能力をどこで習得したのか、また全体的な満足度などについて聞いている2)。卒業・修了生アンケートは、当大学の教育の長期的な効果を把握することを目的に、卒業・修了生が集まるホームカミングデーを利用して実施され、そこでは大学在学中に経験した様々な活動について、複数挙げられる知識・スキルがどういった活動を通じて得られ、現在または過去の仕事において役立ったと感じているかと聞いている。
 就職先機関アンケートでは、企業などが学生採用にあたってどのような能力を重視しているのか、また企業が採用した当大学の卒業・修了生が有する知識・スキルの中身について問うている。これは卒業・修了時アンケートと対となる形である。これは、当大学の学生が習得した能力が社会のニーズに合致しているのかを検証できるような枠組みとなっている。
 入学・進学時アンケートから卒業・修了生アンケートまではいわば中からのチェックであり、最後の就職先機関アンケートは外からのチェックとなるが、各アンケートの質問項目が対応するように選定・構築されているという。卒業時アンケートと就職先アンケートが対になり、学生の評価と就職先からの評価を対比することで学習成果を多面的に捉えることができ、また入学時アンケートと卒業生アンケートを対に、獲得した能力について卒業生と入学時の学生のそれぞれの評価を参照することで、学部・大学院のディプロマ・ポリシーが妥当であるかどうかが検証できる。さらに卒業時アンケートの分析についていえば、習得能力とその獲得場面を確認することで、カリキュラムポリシーが妥当であるかを検証することになる。
 各種アンケートの設計・実施等から、分析作業、また専門的な観点にもとづく提案などを、全学の教育に事項を所掌する機構が関係部局と連携しながら進めており、教育成果を示す根拠資料として活用できるように努めており、全学評価・FD委員会等に報告するなどしてモニタリングにも活用しているようである。また、全学共通項目の実施により、以前に比べ全ての学部・大学院についての評価結果を共通の基準で俯瞰できるようになったという。
 ウエブでの実施により回答率の向上といった課題は残っているものの、それでも一定の成果をあげているようで、こうした取り組みを通じ学習成果を多面的に把握し、かつそのなかで見出せる課題等を改善につなげていくことができるものとして、本学も大いに参考にすべきではないかと考える。
 
注1)「人間性」…高い倫理性、知性と感性が調和した豊かな教養。「創造性」…自ら課題設定、創造的に解決できる能力。「専門性」…深い学識、高度な専門技能。「国際性」…多様な価値観を尊重、異文化に対する理解、コミュニケーション能力
2)アンケート実施における工夫
場面 在学中に習得した能力
全学共通講義など 幅広い教養 専門知識 課題設定・解決 コミュニケーション
専門教育講義など        
卒業研究        
教員の直接指導        
・・・        
 
(文責 評価システム研究部門 渡辺達雄)
 
 
○●○ 新着資料のお知らせ ○●○
 大学教育開発・支援センターに、全国の大学や大学教育センター等から各種報告書が届いております。特別教育研究経費・科学研究費による成果(途中経過)をまとめたものも多数含まれております。資料は、図書室(総合教育1号館6階613号室。センター共同研究室向かい)に所蔵しております。ご関心のあるもの、参照したいものがございましたら、お貸しすることができますので、ご連絡いただければ幸いです。
・田中真理他著『学生のための心理・教育的支援』東北大学高等教育開発推進センター、2012年
・大学コンソーシアム京都『大学におけるキャリア教育を考える-企業が求める人材って、大学で育成しないとだめ?』2011年度第17回FDフオーラム、2012年
・総合研究大学院大学学融合推進センター『研究力を探る』2012年
・愛媛大学教育・学生支援機構『全国の高等教育機関の組織力向上のための「教職員能力開発拠点活動報告書-23年度」2012年