【No.420】
教育の内部質保証システムについて

 

○●○教育の内部質保証システムについて○●○
 大学教育の質保証が求められている。質保証の重要な要素は、教育とその改善のプロセスの可視化である。学習成果を明確にし、学習成果を達成するためのカリキュラムを可視化し、授業科目と学習成果との整合性の根拠である成績評価基準をできる限り具体化し、可視化する。成績評価基準が学習成果の達成度評価の基準として客観的に妥当かどうかを継続的に検証する。カリキュラムを構成する授業科目が学習成果を共有していることから、この検証はカリキュラムを立案した部局で組織として行われる必要がある。また、この検証は学習成果とカリキュラム、教育方法、授業科目の内容との整合性の検証・改善と一体で行われる。このようにして、カリキュラム、教育方法、教育内容の改善は学習成果の達成度の向上に向けた組織的な取組と位置づけられるとともに、学生に対して学習成果と成績評価基準との関係性がシラバス等で明示されることによって、どのような能力を身につけるべきかが具体的に伝えられる。
 2011年度から、大学基準協会は認証評価の基準として、内部質保証システムとその機能性を設定し、大学評価・学位授与機構も同様の基準を設定した。本年6月に文部科学省が出した大学改革実行プランにおいては学習成果を重視した評価への転換を促す施策が示されている。内部質保証システムとは何か、いくつかの定義を資料から以下に引用する。
愛媛大学の小林直人氏は、内部質保証システムを「大学独自のFD活動によってPDCAサイクルを回す仕組み」と記述されている[1]。ここで、愛媛大学独自のFD活動の定義について、「個々の教員の個々の授業の改善(=ミクロ・レベルのFD)にとどまらず、組織的なカリキュラムの改善(=ミドル・レベルのFD)や組織そのものの改善(=マクロ・レベルのFD)も、全てFDと定義した。換言すれば、学生の学習効果を高めるための活動であれば、我々大学教員の日々の努力の全てがFDである、という考え方である。この定義に従えば、教育の内部質保証とは、ミドル・レベルのFD活動によってPDCAサイクルを回すための常日頃の活動、ということになるであろう。」と述べられている[1]。この点については、設定した学習成果の達成度の向上に向けた組織的な全ての取組、と言い換えても問題はないと考えられる。
 芝浦工業大学の工藤一彦氏は、「教育の質とレベルを保証するための内部質保証システムは、PDCAサイクルで実現される。教育プログラムのPDCAサイクルとは、自校で提供する教育プログラムの目標を設定し(Plan)、この目標を達成するためのカリキュラムを設定し(Do)、このカリキュラムの実施による目標達成度を測定し(Check)、その結果に基づいてプログラム全体の改善を行う(Act)、のサイクルを回すことで、設定した目標設定のためのプログラムの最適化と、不断の改善をしてゆくための手法である。」と述べられている[2]。
 センターニュース第415号でペンシルバニア州立大学の教育プログラム評価の手順を紹介したが、以下の通り、この手順は内部質保証のPDCAサイクルを具体的に記述している。
1.教育プログラムの学習成果を同定する。(本学の学類ごとの学習成果に対応する。)
2.教育プログラムを構成する各授業科目を教育プログラムの学習成果に整合させる。(本学のカリキュラム・マップに対応する。)
3.同定した学習成果を学生がどの程度達成したかを把握する方法(アセスメント方法)を開発あるいは選択する。
4.同定した学習成果を学生がどの程度達成したかを示す証拠を準備する。
5.アセスメントを実施し、その結果を分析し、教育改善にフィードバックする。
 学習成果のアセスメント方法とは、第1に授業科目レベルでのアセスメント方法、つまり成績評価基準を文章化したものである。学生に課される課題(試験問題、レポート課題、成果物など)の概要を文章化したものが学習成果の達成度を測る方法として客観的に妥当なものと判断されるのであれば、それらの課題を学生がこなしたこと自体が学習成果を達成した証拠となることから、質保証の核心は成績評価基準についての継続的な検証ということになる。上の例は、教育プログラムのアセスメントであり、アセスメントの方法としては、ミクロ・レベルとしての授業科目の成績評価ばかりでなく、カリキュラムつまり授業科目の総体による学習成果の達成度を学生による自己評価アンケートによって把握する、学習成果を達成する過程を記述したポートフォリオを活用するなども考えられる。
 教育の内部質保証の核心である学習成果の達成度評価に適合する成績評価基準の検証・明確化・開発については、本学では中期計画【10-1】【10-2】に沿って検討されつつある。このプロセスは学習成果を共有する部局組織で継続的に行われる必要がある。
(文責 大学教育研究開発部門 西山宣昭)
[1]小林直人「教養教育における内部質保証」大学評価研究、第11号、p.21(2012).
[2]工藤一彦「内部・教学監査と教育の内部質保証の関係」大学評価研究、第11号、p47(2012).
 
○●○大学教育改革地域フォーラム2012in 金沢大学のお知らせ○●○
以下の通り、金沢大学・文部科学省共催、大学コンソーシアム石川後援で開催されます。
申込み、趣旨等については、本学HPに掲載されています。
日時:平成24年9月28日(金)14時~17時
会場:角間キャンパス 自然科学大講義棟大講義室
プログラム
  開会・主催校挨拶 中村信一(金沢大学学長)
  映像上映「今、問われる『大学での学び』」
  パネル・ディスカッション(第1部)
    モデレーター
     青野 透(金沢大学大学教育開発・支援センター教授)
    パネリスト
     常磐 豊(文部科学省大臣官房審議官/高等教育担当)
     林 勇二郎(前金沢大学学長/中教審大学分科会委員)
     黒田 壽二(金沢工業大学学園長・総長/中教審大学分科会委員)
     村澤 勉(石川県高等学校長協会会長/金沢泉丘高校長)
     学生5名
    トピック
     ・学生の主体的な学びの確立と学修時間の確保
     ・金沢大学の学域学類制と自学自習システム
     ・高大接続の円滑化と学びの質的転換
  パネル・ディスカッション(第2部)
  モデレーターによるまとめ
  閉会挨拶・閉会 中村慎一(金沢大学教育担当理事・副学長)