【No.419】
秋入学を学生の学習意欲・授業理解度向上のための教育改善という視点で考える-その6-

 

○●○秋入学を学生の学習意欲・授業理解度向上のための教育改善という視点で考える-その6-○●○
 前期の成績評価作業が終わった。180名と最も受講者数の多かった、共通教育科目「医事法入門」を例に挙げると、シラバスに「評価の割合:レポート60%、ミニッツペーパー20%、ポータルでの意見発表20%」「評価の方法:レポート評価基準は、①授業内容(課題図書内容)を正確に理解し、反映しているか、②自らの主張を明確に根拠を示して試みているか」と記しており、それに基づく作業だった。
 毎回、授業理解度を学生自らが確認している。授業時間の最後に5分ほどで、内容を簡単にまとめる、何が重要だと思うかを記し、さらに質問を書く。このミニッツペーパーにより、受講生は、どうまとめようか、何を質問しようかと考えながら授業を聴く。習慣化すれば、最初は休憩時間までかかって書いていた学生が、決められた時間で書けるようになってくる。他人の話をつづめてメモする。この能力は、やがて学生たちが就く全ての職場だけでなく、日常生活の至る所で求められることは言うまでもない。
 (ただし、私の授業中の言葉をレポートに引用するように指示すると、その結果、いかに私の言葉が不正確に伝わっているか、私の伝え方が下手であるのかも判明することになるが、これはまた別問題である。)
 レスポンスシートという人もいる。レスポンスに意味があるのだろう。だが、私はミニッツペーパーという言葉が好きだ。ミニッツ、つまり短く、短い時間でということをまず、学生たちに求めているからである。
 茂木健一郎『ひらめきの導火線-トヨタとノーベル賞』PHP新書、2008年に次のようにある。「書くということの利点。書いてまとめることで、情報を圧縮し、思考の精度を高めることができる。情報は圧縮されてこそ整理され、伝わりやすくなって価値が上がる」「まとめるという作業は、特に短くしようとすればするほど難しい。」「凝縮することで本質が明確になり、伝えたいことが鮮明になるのである」
 これを一人でも多くの一年生に実感してほしいのである。それも競争意識を持ちながらである。優れたミニッツペーパーは、次の授業で名前と共に紹介されるのであるから。
授業理解の次には、判断力である。授業の中で自分にとって何が大事であったかを書く。課題発見の端緒である。その上で質問である。課題発見能力に直接つながる。学生たちには、ネットで調べたら出てくるような質問はしないようにと伝えている。それぞれの学生は、問題関心さえ自覚していれば、必ず、その学生固有の課題と授業内容が結び付いてくる。気付かなかった視点が立ち上がってくる。だから、そうした学生のために、自分で調べようと思ったことは何かもミニッツペーパーに書かせ、調べた結果をポータルに掲載するように促している。それがそのままグループワークの出発点となる。
 百人以上が集まって、同じ空間で、一回限りの授業を受け、考えを深めているのだから、お互いに意見を出し合うべき必然性が多くの受講生にはある。嫌々させられるグループワークほど、主体的学習を妨げるものは無い。授業内容こそが授業の要であって、それによって主体的に考えることが目的であり、様々の教材や方法の工夫はそのための手段である。考えることが決して一人でできるわけではなくて、他人(本や絵画や音楽などの中の他人を含む)と意見を交わして初めて、本当の考えるという行為なのだと気づくようになんとか学生たちを導いていきたい。
 ミニッツペーパーとレポート(中間と期末)の評価で違いのある学生もいる。レポートになれば、熟考の成果を示す学生がいる。課題図書をじっくりと読み、ポータルの資料と突き合わせて考察する、それに他の学生の中間レポートから引用したうえで、2000字ほどの期末レポートに完成させる。そこでは、中間レポートを書いた時の自分と今の自分のそれぞれの考えを比較することになる。これも一種の他者との対話であって、主体的な思考の作業である。
 演習科目でも同様である。その場で機転の利いた発言が得意な学生がいる。一方、普段はおとなしいが、ゼミ論文で光る一文を書く学生がいる。そんな学生が、ゼミ論文の合評会でぐっと存在感を増し、それを本人も感じている・・・これを目撃するのは教師にとっての楽しみの一つである。大講義であれゼミであれ成長を実感し学びの主体となる経験を与えることができれば、初年次教育のたった2単位の科目の意義は十分にある。
 入学時期論議は別にして、今次の中教審答申『新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて-生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ-』で示された、学習の質的転換に結びつく授業実践を目指す営みは、夏休みが終われば、全国の高等教育機関で多くの教師たちによって再開される。私もまた、新たな試みを用意している。楽しい授業の10月がやってくる。
(文責:教育支援システム研究部門 青野 透)
 
●○●平成24年度第1回障害学生支援研修会「発達障害と大学教育-精神科医の経験をもとに-」開催案内●○●
日時:9月19日(水)13時~14時30分 場所:角間キャンパス事務局棟6階大会議室      趣旨:発達障害者支援法により大学は、「大学及び高等専門学校は、発達障害者の障害の状態に応じ、適切な教育上の配慮をする」(8条2項)ことを義務付けられていると同時に、「国民は、発達障害者の福祉について理解を深めるとともに、社会連帯の理念に基づき、発達障害者が社会経済活動に参加しようとする努力に対し、協力するように努めなければならない」との条文(4条)に従い、このように行動できる市民を育成する責任を負っている。精神科医としての経験を踏まえ、学生や現職教員に発達障害者支援に関する授業を担当してこられた納富教授から、大学が発達障害者支援という課題にどう向き合うべきか、レクチャーをしていただき、参加者との間で意見交換を行いたい。  講師:納富恵子 福岡教育大学教職大学院教授 九州大学医学部医学科卒。共編著『はじめての特別支援教育-教職を目指す大学生のために』有斐閣アルマ(2010年)、編著『自閉症の基本障害の理解とその支援・対応法』明治図書出版 (2009)、共著『自立をめざす生徒の学習・メンタル・進路指導-中学・高校におけるLD・ADHD・高機能自閉症等の指導』東洋館出版社 (2007年)、訳『特別支援教育の理念と実践-早期から望ましい行動を育むために(コレット ドリフテ(著)