【No.417】
質保証・アウトカム評価の考え方(高等教育質保証学会第2回大会参加報告

 

○●○ 質保証・アウトカム評価の考え方(高等教育質保証学会第2回大会参加報告) ○●○
 本誌ではたびたび大学における質保証やアウトカム(学習成果)評価について取り上げてきた。質保証一つとってみても、概念自体も多様で、その保証に向けたアプローチもやはり多岐にわたっていることから、理解するのは難しいが、8月25、26日に東京大学駒場キャンパスにて開催された標記大会で報告された内容は、現時点で関係者間で共通に理解されるべきことの一部分を表していると考えられるので、ここで簡単に紹介したい。(設定されたセッションのテーマに沿った形であるが)視点として、学生調査、認証評価におけるアウトカム、シラバスである。
 
1. 学生調査
 質保証の具体的な内容として位置づけられる学習成果に関わって、学生の学修時間を増加させ、学習行動・方法を含め、実質的な成果に結び付けることが中央教育審議会のまとめでも重要課題として挙がっている。そのために学生の学修行動をいかに把握しかつフイードバックするかがポイントであり、山田礼子氏(同志社大学)はGPA、レポート・卒業論文、ポートフォリオといった直接評価(手法)と、成果につながるプロセスとしての学習環境をみていく学生調査といった間接評価(手法)を有機的に組み合わせ両方を活用していくことが必要とみている。
目にみえる形の直接評価による結果に至るまでには、学生の大学での経験や自己認識、さらにそこでの期待度や満足度が関連しているとみられることから、学生の現状を客観的データで把握し、日本では利用が不充分なままの授業評価等と学生調査で得られたデータを関連づけて分析し、アウトカムとカリキュラム・授業を関連づけて分析していくなどして、学修行動・学修環境を可視化することが求められてきている。さらに各大学の特性にあわせて学生データを活用し、カリキュラムや教授法を見直すFDへとつなげ、学生の視点に立った教育の質保証を目指していくべきであろう。
 
2.  認証評価におけるアウトカム
 第二サイクルの評価を開始している大学基準協会、大学評価・学位授与機構、日本高等教育評価機構、短期大学基準協会の四評価機関で、それぞれアウトカムについての考え方や大学に求める内容(重視の程度)は少しずつ異なってはいるが、いずれも学習成果をいかに測定・検証し、教育の質保証に結び付けていくかという点を重視している。
大学基準協会では、学習成果を測定・検証するための評価指標(直接的指標と間接的指標)を開発してそれを適用し、測定結果を教育の質保証や向上にいかに活用しているかを重要と考え、そうした内部質保証システムの構築を大学に求めている。
大学評価・学位授与機構は、学生の視点に立った教育(学生がどのような能力を身につけるか、つけたか)へ議論の視点の転換にもとづき名称を変更した「基準6 学習成果」において、基本的な観点や分析に用いるデータ・資料の例示(具体的には、卒業(修了)等の状況、学生の意見聴取の結果、卒業生・就職先の意見聴取の結果、など)自体は大きく変えていないとしつつ、卒業(修了)率が学習成果の指標として意味あるものとなるために、個々の授業について「厳格な成績評価」がなされている(観点:「成績評価の客観性、厳格性を担保するための組織的な措置が講じられているか」)ことが前提で、さらに授業で「必要な学習時間を確保」(観点:「単位の実質化への配慮がなされているか」)していることが重要で、また「基準 教育内容および方法」でそれらを分析する観点を設けるなどして、これらについて各大学が確実に整備することを求めている。
一方、日本高等教育評価機構は、アウトカムの測定や把握について(国内外の動向を踏まえると)まだ研究段階で、客観的な評価が難しいと判断し、アウトカム評価についてあまり強く求めていない。分野ごとにアウトカムの扱いが異なっていることもあるが、学位授与の基準をアウトカムの視点から明確に定めているようにみえても(公表していても)、実態がまだともなっていないと指摘するように、今後我々が真摯にとりくむべき部分であろうと考える。
 
3.シラバス
 近年のシラバスの変化を調査(首都圏の某一大学のみを対象にとどめているが)した大森不二雄氏(首都大学東京)らの報告では、授業計画・内容において授業説明の記述が詳細になり、評価項目の比重の表示が増え(受講生にとって分かりやすい内容に改善されている)、学生主体の用語が普及しているなどの変化があったことを示されていた。しかし、従来型の講義形式を示唆するものや従前のキーワードも依然として多く抽出されることが分かり、授業実践の実質的変化に至っているかが重要な視点で、今後客観的なデータの収集も含め、検証と改善が必要と述べている。
4月に本学でDP・CPを作成・公表しているが、授業デザインやシラバス作成、さらにそれに関する改善に向けた取り組み(FD)の在り方もふくめ、この部分についても真摯な対応が求められてこよう。
(文責 評価システム研究部門 渡辺達雄)
 
 
○●○ FD特別講演会(第9回FD研究会)のご案内○●○
大学教育開発・支援センター・理工学域教育方法改善委員会 共催
日時:平成24年9月7日(金)13:00-15:00
場所:自然科学大講義棟AV講義室
テーマ:ヨーロッパでの高等教育改革の動き
プログラム:
1.解説 「ボローニャプロセスについて」大学教育開発・支援センター 堀井 祐介
2.講演 Physics Education in Europe? (「ヨーロッパにおける物理教育」)
Hendrik FERDINANDE (UGent [BE] & Hokudai [JP])(ベルギー・ゲント大学(北海道大学客員教授) 
概要:はじめに,堀井から、ヨーロッパにおける高等教育改革の大きな流れである「ボローニャプロセス」について概要を説明し、その後,ヨーロッパ物理教育学会の会長を務められたフェルディナンド先生に,物理教育を通した改革への取り組み,単位互換制度,国際カリキュラムによる質保証の問題等々についてお話しいただきます。これらの取り組みは世界的に広まりつつあり,今後の我が国の大学教育改革にも大きな影響を与えると考えられます。皆様の積極的なご参加をお願いします。
 ※問い合わせ先:大学教育開発・支援センター 堀井(内線5858、horii@staff.kanazawa-u.ac.jp)