【No.416】
「グローバリゼーション下の大学教育改革5つのキーワード  -質保証・体系化・標準化vs. 多様化・共通化・国際通用性-」紹介

 

○●○「グローバリゼーション下の大学教育改革5つのキーワード
 -質保証・体系化・標準化vs. 多様化・共通化・国際通用性-」紹介○●○
 
 これまでのセンターニュースでも何度か教育プログラムや質保証について取り上げてきたが、今回は公益財団法人大学基準協会から今年6月末に刊行された『大学評価研究第11号』から大学基準協会専務理事で国際基督教大学前学長の鈴木典比古氏による冒頭の論説「グローバリゼーション下の大学教育改革5つのキーワード -質保証・体系化・標準化vs. 多様化・共通化・国際通用性-」について簡単に紹介させていただく。
 鈴木氏は、近年、大学教育において学習成果やアカウンタビリティが求められる形で各種改革が議論されている中に頻出するキーワードとして、上にあげた5つ(質保証・体系化・標準化vs. 多様化・共通化・国際通用性)があるが、昨今のグローバル化の流れにおいて、それらに「グローバリゼーション下の」という枕詞をつけて言い替える必要があると述べている。すなわち、「①グローバリゼーション下の大学教育の質保証、②グローバリゼーション下の大学教育の体系化、③グローバリゼーション下の大学教育の標準化vs. 多様化、④グローバリゼーション下の大学教育の共通化、⑤グローバリゼーション下の大学教育の国際通用性」が今後の大学教育改革のキーワードとなるのである。鈴木氏は、それぞれのキーワードに対応する具体的な手法についても述べている。
キーワード 具体的手法
①グローバリゼーション下の大学教育の質保証 シラバス
②グローバリゼーション下の大学教育の体系化
科目番号制
(コースナンバリング・システム)
③グローバリゼーション下の大学教育の標準化vs. 多様化 一般教育と専門教育の構造的バランス
④グローバリゼーション下の大学教育の共通化 学士課程教育
⑤グローバリゼーション下の大学教育の国際通用性 英語による教育情報の公表
 
 これら5つは相互に関連するものであるが、以下にそれぞれについて簡単に説明する。
 ①グローバリゼーション下の大学教育の質保証においては授業工程表であるシラバスが一番直接的に質保証を行う手段である。シラバスは、教員の授業計画であると共に学生の学習計画でもある。日本の大学におけるシラバスの多くは、授業計画としては使えるが、学習計画としては使えないものが多い。学習計画として使えるシラバスとは「予習が出来るシラバス」であり、予習があって初めて授業内で双方向の議論が行えるのである。
 ②グローバリゼーション下の大学教育の体系化は、科目番号制(コースナンバリング・システム)により可能となる。これは各科目に番号をつけてその科目の水準と全科目中の相対的位置を示すものである。アメリカにおいては通常3桁の数字が用いられ、100番台は1年生、200番台は2年生、300番台は3または4年生、400番台は卒論や卒研にあたり、3桁の数字の前に科目の分野を示すアルファベットがつく場合が多い。このように番号をつけることで科目の体系化がなされる。鈴木氏は、この体系化をビルの外壁仕上げに例えて「外壁のサッシ部分が科目番号で、埋め込んでいくタイルが各授業科目(シラバス)である」と説明されている。
 ③グローバリゼーション下の大学教育の標準化vs. 多様化については、100番台および一部の200番台科目は、一般科目または全学共通科目として標準化されるべきものであり、一方で300番台、400番台の科目は専門科目群として各大学、学部、学科の教育目標や特色に応じて提供される多様なものとなる。科目番号に従い、年次進行で学修を進めることで先に例えとして出した外壁に標準化と多様化のグラデーションが作り出されるため、大学教育が科目番号で体系化されたとしてもカリキュラムの画一化、画一的な人材輩出の心配は無い。
 ④グローバリゼーション下の大学教育の共通化は、いわゆる「学士力」を養うこととつながる。「学士力」とは、(1)知識・理解、(2)汎用的技能、(3)態度・志向性、(4)総合的学習経験と創造的思考力とされている。この4つの学士力を発展段階でつながっていると考えると、全てが一致するわけではないが、科目番号の100番台科目は(1)知識・理解を深め、200番台科目は(2)汎用的技能の習得を目指し、300番台科目は(3)態度・志向性を重視し、400番台科目で(4)総合的学習経験と創造的思考力を磨くと考えることが出来る。
⑤グローバリゼーション下の大学教育の国際通用性として重要なのは、英語での情報公表である。現在、各種教育情報公表は義務化されており、文部科学省を中心に共通の教育情報データベースとして「大学ポートレート(仮称)」の整備が進められている。しかし、それらの情報が英語でも発信されていなければ、優秀な留学生を引きつけるためにも、また日本人学生が海外へ留学するためにも役に立たないこととなり、グローバリゼーション下の大学教育改革とは言えなくなる。大学教育の国際通用性としてよく話題になるのが「英語で授業を行う」である。鈴木氏は、英語での授業も重要ではあるが、日本人としてグローバリゼーションに対応するためには日本語の運用能力も重要であり、それが不十分だと「学士力」習得にも影響が出るとしている。
 最後に、鈴木氏は、上で述べた5つのキーワードに日常的連動を点検することが、認証評価第二サイクルで求められている教育の質保証PDCAサイクルの検証の一手法となりうるとの私見も述べられている。
 ここまで読んできて、何でもかんでも「グローバル化(グローバリゼーション)」で大学の独自性は無いのか、従来の教育を全て否定するのかとの声もあるかもしれないが、現在、日本の高等教育が置かれている現状では、鎖国でもしない限り「グローバル化」の流れにあらがうことは出来ない。ただ、この「グローバル化」の流れで求められていることは、従来の教育を180度転換することではない。日本の大学教育の仕組みを、海外からもわかりやすく説明出来るように環境整備を行うことが求められているだけである。しばらくは戸惑いもあるだろうが、体系的な教育プログラム構築とそれに関する教育情報公表は、学生が国内外で活躍できる土台を養うために必要なことであり、何よりも学生のためになると認識して大学改革についての議論に耳を傾けていただければ幸いである。(文責 評価システム研究部門 堀井祐介)
 
 
○●○FD特別講演会(第9回FD研究会)のご案内○●○
 
大学教育開発・支援センター・理工学域教育方法改善委員会 共催
日時:平成24年9月7日(金)13:00-15:00 場所:自然科学大講義棟AV講義室
テーマ:ヨーロッパでの高等教育改革の動き
プログラム:
解説 「ボローニャプロセスについて」大学教育開発・支援センター 堀井 祐介
講演 Physics Education in Europe? (「ヨーロッパにおける物理教育」)
Hendrik FERDINANDE (UGent [BE] & Hokudai [JP])
(ベルギー ゲント大学(北海道大学客員教授) Hendrik Ferdinande氏)
概要:
はじめに,堀井から、ヨーロッパにおける高等教育改革の大きな流れである「ボローニャプロセス」について概要を説明し、その後,ヨーロッパ物理教育学会の会長を務められたフェルディナンド先生に,物理教育を通した改革への取り組み,単位互換制度,国際カリキュラムによる質保証の問題等々についてお話しいただきます。これらの取り組みは世界的に広まりつつあり,今後の我が国の大学教育改革にも大きな影響を与えると考えられます。皆様の積極的なご参加をお願いします。
 
問い合わせ先:大学教育開発・支援センター 堀井(内線5858、horii@staff.kanazawa-u.ac.jp)