【No.413】
東京大学 教養教育高度化機構セミナー 『講義の「オープン化」は、大学教育に何をもたらすのか?』参加報告

 

○●○ 東京大学 教養教育高度化機構セミナー 『講義の「オープン化」は、大学教育に何をもたらすのか?』参加報告 ○●○
 2012年6月20日に開催された東京大学教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門セミナー「講義の「オープン化」は、大学教育に何をもたらすのか」に参加した。MITのOpen Course Ware(OCW)を発端として進められてきた大学の授業のオープン化であるが、近年はApple社のiTunes U上での公開のみならず、世界の大学が連携して、オンラインで授業を公開し、無料で世界中の人が大学の授業を受講できる仕組みが広がってきている。スタンフォード大学の2名の教授がスタートした”Coursera(コーセラ)”は今年2月にスタートしたものであったが、アメリカの4大学だけではなく、世界一流の12大学が参加し、世界中で数十万人が受講するに至っている。受講者は各大学の履修登録をすることで単位認定も受けることが可能である。MITとハーバードが連携したedXも同様の枠組みであるが、単位認定や修了証明を受けるには「少額の課金」が必要ということである。しかし、こういった教育のオープン化ということで、大学はどういう立場となるのであろうか。教育のオープン化にはどういう意味があるのであろうか。東京大学 大学総合教育研究センター 重田勝介先生より、講演があったので、報告する。
 最初に東京大学が現在行っている教育のオープン化の事例紹介があった。東京大学では教育企画室が、全学的な教育環境リデザインに取り組む”Tree Project”を2005年7月からスタートしており、ICTの活用で東大の教育改善を全学体制で取り組んでいる。UT OCWでは正規授業を英語・日本語の両方で公開しており、公開数は100講義、参加校指数は172名、月間約150万アクセスを記録している。東大TVは非正規講義(イベント等)を一般向けに公開しており、公開数は101講義、117名の講師が参加し、月間約300万ヒットしているということであった。これほどのことを実施するにはそれだけの体制が整っている。著作権処理部門とコンテンツ開発部門があり、学生スタッフも10名雇用している。英語化については外部の業者に委託している。重田氏は大学の公共性、大学の知を結集し、社会へ発信し、還元する。そして、社会から大学へ成果、人、知見が返ってくるといった、学内外の「知のサイクル」を作ることに意味があるのではないかといった私見を述べられた。
 こういった教育のオープン化の意味はどういうところにあるのだろうか。教育のオープン化の理念としては、開発途上国への国際教育協力といった社会貢献活動であること、社会における公共財としての大学の位置づけ、生涯学習の支援(復学も含む)があるということであった。実利としては、入学希望者に大学の教育活動を継続的に伝えていくリクルーティング(MITの調査では新入生の35%が大学選択でOCWの影響があったとしているとのこと)、グローバル対応、教育の質向上(公開されることによる授業改善・反転授業など)があるとされている。
現在、上記に述べたように、大学間で連携し、授業を公開する活動が活発になってきている。Massive Open Online Course(MOOC)では数万人規模の人が授業を無料で受講し、課題に取り組むことができる。TED Edのように大学教員、研究者、企業の方がアイデアをプレゼンテーションし、共有する活動も広がっている。大学教員が個人でオンラインの場に出ていき、世界に向けて知の発信が可能となる。世界で教育リソースが公開され、無料で授業を受講でき、単位認定も少額でできるようになると、大学はどう意味づけられていくのだろうか。重田氏は、まとめとして、大学を離れ、自由に学び、教える個人が現れ、大学外で活躍するグローバルプロフェッサーが登場してきている今、オープンエデュケーションと大学の共生について説明をされた。公開されている授業のスタディーグループとの連携、オンライン大学との単位互換、通常授業の補習・復習といった大学にとっても有効な関係性を構築できる。また、大学はオンラインや対面にある知を、様々な人との人脈形成を通じて、体系化し、研究成果に結びつけていく環境を提供する場となっていくことが考えられる。教育のオープン化は社会における大学の価値を考え直すことであると締めくくられた。
 まだ日本の大学で教育のオープン化を進め、edXのような活動をしているところはない。しかし、日本人の学生も海外の手軽で魅力的な教育リソースに触れ、海外の大学で単位認定を受けることができるという現実がある。オンライン上で教育のオープン化を行っていない大学は日本には数多いが、この世界的動きとどういう関係を構築し、大学の強みを発揮していくのか明確化していく必要があろう。
 
参考資料
edX
http://www.edxonline.org/
Coursera
https://www.coursera.org/
 
(文責 教育支援システム研究部門 山田政寛)
 
○●○ アカンサスポータルの教育利用ワークショップ『出前講義』」の募集について ○●○
 
 FD・ICT教育推進室では、ICTを利用した教育の主軸であるアカンサスポータルの利用促進のため、「アカンサスポータルの教育利用ワークショップ」を月1~2回開催の案内をお知らせしております。しかしながら、教職員の皆様におかれましては、ご多忙のため「アカンサスポータルの教育利用ワークショップ」にご参加できない方も多数いらっしゃいます。
そこで、FD・ICT教育推進室では、夏休みに少人数グループの「アカンサスポータルの教育利用ワークショップ『出前講義』」を計画しました。ついては、ご希望される方は、希望する開催場所・人数・希望する時間(複数の候補をお知らせください)をお知らせいただければ、こちらで講師の都合と調整いたしまして、開催日を決定し、ご希望の開催場所まで講義に伺います。講義の内容については下記を予定しておりますが、その他、ご希望がありましたらご相談を承ります。また各部局のFD・SD研修会として、90分ほどのワークショップとしても実施可能です。詳しくはFD・ICT教育推進室までお問い合わせ下さい。
 
【締切日】
開催期間         9月28日(金)まで
申請締切日       7月2日(月)~7月31日(火)