【No.412】
主体的な学びへ導く大学教育 -ベネッセ教育研究開発センター大学シンポジウム2012参加報告

 

○●○ 主体的な学びへ導く大学教育 -ベネッセ教育研究開発センター大学シンポジウム2012参加報告 ○●○
 学生の主体的な学びや大学教育の質の転換は、近年の大学改革にあって、重要なキーワードの一つとなっている。センターニュース410号でも触れられているように、「学士課程教育は、学生の思考力や表現力を引き出し、・・・課題の発見や具体化からその解決へと向かう力の基礎を身につけることを目指す能動的な授業を中心とした教育が保証されるよう、質的に転換する必要がある」(中教審大学分科会大学教育部会「予測困難な時代において生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ(審議まとめ)」わけである。こうした提言の背景にある、いまどきの高校生および大学生の学習の実態や大学に期待すること等について、上記大学シンポジウムでは最新の調査分析にもとづく報告がなされたので、簡単に紹介したい。
 金子元久氏(筑波大教授、東京大名誉教授)を中心に進められている東京大大学経営政策研究センターの全国大学生調査(2006~08年でサンプル約4万4千名)によれば、日本の学生の特徴として、授業・実験に出席はするが(設置基準に近いレベル)、それに関連した自律的な学習時間が少ない(設置基準からみて理工農で6割、保健・教育4割、人文社会2割強に満たない)こと、1年生から3年生の間にいわゆる探究的学習を積み上げていないままに、4年生の卒論・研究に重点が置かれていること、また講義よりゼミ・研究室での集団での学習に力点が置かれているが、そこから必ずしも自律的な学習につながっていないことを指摘している。別の視点から、学生の学習動機パターン(4つ)のうち、高い目的意識(将来展望)があり大学教育の目標と一致している【高同調型】はいずれの分野でも3割程度いる一方で、自己認識が未発達で大学教育にも期待しない【疎外型】も8分の1程度存在し、1年生から4年生に進んでも(追跡調査にもとづき)、上記の2つの型の学生とも主体性をも有する【独立型】に変換されないままであるのが気がかりなことで、学習への契機を与えられるような授業をどのように提供できるかが大事であると主張する。またそこでは、職業との関係から、自分自身の在り方につながるように、専門の基礎となる知識や考え方を確実に身につけさせる大学教育がもっとも支持されているのではないかと述べている。
 そうした学習を引き出す授業方法としては、出席重視や小テスト実施による【統制型】よりも、理解しやすく興味のわく工夫がなされた【誘導型】、さらにグループワークや授業で意見を述べさせたり、課題にコメントを加えるといった【参加型】授業がいずれの型の学生にとってもかなり有効であることが分析から示されている。日本の教員がアメリカの教員と比較して、担当コマ数が多く、しかし授業準備の時間が(ゼミを除き)多くないといった構造的な問題も解決していかなければならないが、「分かりやすく工夫された授業」に対し、それが「分析的・批判的に考える力」を養うのに役立つと感じる学生が多く、また意見や考えを求められる参加型授業を必要と考える学生も多い。
 一方、2008年から2011年までに実施したベネッセの各種調査によれば、近年の高校生の特徴として具体的な職業・進路イメージが希薄なままに大学進学し、半数が大学に行ってから決めたいと考えていること、また大学に行けば社会で必要な力を付けさせてくれると期待しており、学びたい学問・つきたい職業が明確でそれが学べる大学・学部を目指すという形がほぼ崩れていることを指摘している。そして、一般入試入学生の場合、7割以上が第2、第3志望以下であることから、本当に学びたいことが大学になければ、学習意欲にもろに影響する可能性があることも示している。つまり、学びたいことが学べるという理由で選択した学生は、理工系・外国語系・医療看護系は他系統に比べ多いものの、そうした理由が学生自身が有しているなら、大学難易度・系統に関係なく入学時点での専門への学びに積極的であるという。
 これらのアウトプットの一つとしての大学生の就職内定と、講義や社会で求められる力についての認識との関係をみていくと、社会で求められえる力と大学での学びの関係を自信をもって理解できていると感じる学生は、学部系統を問わず少ないというのが実態であるものの、社会で求められる力としての傾聴力や討論スキル、プレゼンテーションスキル、課題設定力などを身につけていると自己評価する学生は、そうでない学生に比べ20%程度の(内定率の)差が生じており、興味深いデータとなっており、そうした力を引き出すための仕組みがやはりポイントとなっていることが分かる。
以上の分析結果を踏まえ、ゼミナール科目、PBL型授業をそれぞれの分野であるいは横断的にどのように組み合わせていくか、カリキュラム全体の構造やその改善も含め、どうしたらそれらが可能となるか議論と検証を今後さらに積み重ねていかなければならないであろう。
 (文責 評価システム研究部門 渡辺達雄)
 
 
○●○ 第18回学生・学習支援研究会開催のお知らせ ○●○
日時:2012年7月19日(木)16:30~18:00
場所:角間キャンパス総合教育1号館2階大会議室
テーマ:新入生対象社会規範に関する意識調査アンケート2011について
報告者:小林恵美子(外国語教育研究センター)
趣 旨:大学教育開発・支援センターでは、昨年度、新入生対象アンケートを2件実施した。今回の研究会では、そのうちの1件であるルールやモラルの遵守に関する姿勢、周囲の人間関係による影響などについて聞いた社会規範に関する意識調査アンケートの結果を報告する。学生の意識調査の結果を、今後の学生支援にどう役立てられるのかについて議論したい。
 
○●○ 前期「角間ランチョンセミナー」終了 ○●○
平成24年度前期の「角間ランチョンセミナー」は、今週をもちまして、全ての日程を無事に終えることができました。4月9日より毎日開催し、のべ63回となりました。ランチョンセミナーに参加して下さった皆さん、また様々なテーマの下、ご報告をして下さいました学生・教職員の方々、テーマ企画に快く応じていただきました各部局の方々に対し、心から感謝申し上げます。
後期のランチョンセミナーは、随時開催の予定です。部活動・サークルの日頃の活動成果を発表したり、大学祭などイベントの事前広報、卒論等の研究発表の場としても活用できます。今後とも宜しくお願い致します。
お問合せ:大学教育開発・支援センター(担当:渡辺)
TEL:076-264-5793   Email: tatsuode@staff.kanazawa-u.ac.jp