【No.403】
「東京大学 大学院工学系研究科附属国際工学教育推進機構・バイリンガルキャンパス推進センターの試み」 参加報告

○●○ 「東京大学 大学院工学系研究科附属国際工学教育推進機構・バイリンガルキャンパス推進センターの試み」 参加報告 ○●○

 2012年5月9日(水曜日)に開催された東京大学教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門セミナー「東京大学 大学院工学系研究科附属国際工学教育推進機構・バイリンガルキャンパス推進センターの試み」に参加した。昨今、大学における「グローバル人材」の育成が求められ、その要望に対応を考える大学が増えてきている。その対応策として、外国語科目の整理と強化、海外留学の推奨と支援など、積極的に行っていく大学も増えてきており、本学もその大学の1つである。東京大学では平成23年4月より、グローバルに活躍できる工学系人材の育成のために、国際工学教育がスタートした。今回はその中でもバイリンガルキャンパス推進センターの試みについて、国際工学教育推進機構・バイリンガルキャンパス推進センター 国際課推進部門長 森村久美子先生による講演があり、特に特徴として感じたものを報告したい。
 国際工学教育推進機構は「バイリンガルキャンパス推進センター」、「国際事業推進センター」、「工学教育基盤強化推進センター」の3つから構成されており、各センターにはいくつかの部門が存在する。日本人学生向けの教育サービスの他、留学生支援も行なわれており、工学系のグローバル人材育成に関して多くを管轄している。バイリンガルキャンパス10年計画を立て、国籍や出身地域の別なく、共に学生が学ぶ環境を実現していくことを狙ったものである。その実現の中で、「講義英語比率の増加」、「若手教員の国際化」、「事務・技術部門のバイリンガル化」、「教育バイリンガル化支援」などを重視している。現状分析として、東京大学の学生に対して、英語教育、留学希望など調査した結果、自己認識ではあるが、自身に足りないものはスピーキング能力であり、伸ばしたい能力は会話能力、議論能力、プレゼンテーション能力を希望していることがわかった。また留学・海外インターン希望については60%近くの学生が希望している一方、40%近くの学生が語学力への不安や資金等の理由で積極的ではないことがわかった。これらの希望にも応えるため、バイリンガルキャンパス推進センターでは数多くの試みがなされている。語学力を伸ばすために、アクティブラーニングを取り入れた、理系学生向けの教養英語プログラム”ALESS(Active Learning of English for Science Students)”との連動をはかっている。また学部3、4年生向けの英語教育プログラムとして、eラーニング”SNOWBALL(自作システム)”を用いることやSpecial English Lessonsを設け、授業時間外に英語を学習する機会を設定している。大学院生向けには科学技術英語という授業を開講している。Special English Lessonsは2005年度から開始されており、英会話、TOEFL講座、ディスカッション、プレゼンテーション等のコースが開講されている。2011年度からはアカデミックライティングもスタートし、14種35クラス提供している。これらのコースはバイリンガルキャンパス推進センターが管轄しているが、実施は外部の英語学校を複数校、誘致して開講している。これは機構やセンターの教員不足をカバーするためであることや、必ずしも英語教育専門の教員と機構やセンターが雇用しているわけではないからである。留学生の大学院生をTAとして雇用し、毎週内容のチェックをさせ、センター教員へ報告をさせている。実施時間帯は夜間であり、単位は出ない完全に授業とは切り離された有料サービスである。費用も学生へ事前調査を行った上で、安価な設定となっている。有料ではあるが、受講生は年間で約700名いるとのことであった。商業ベースで実施されているとのことであった。このサービスは全学に開放されている。また職員向けの特別コースも、大学から援助が出たため実施されることとなったとのことであった。最終回には成果発表で、受講した学生がその授業で学んだことを発表する。
 このような基礎力を高めるものの他、実践的なものとして、M-Skypeプログラムや国際活動体験プロジェクトを実施している。M-Skypeはフリーのテレビ会議アプリケーション”Skype”を用いて、創造的ものづくり、創造性工学プロジェクトを行うものである。具体的には米国MITの学生とSkypeを使い、Language Exchange、つまり、日本語を学びたいMITの学生と研究について話し合い、言語については相互の発話についておかしいことを指摘しあうといった活動である。Skypeだけではなく、実際に対面で会うイベントも開催されており、相互に大学訪問をするなど、動機付けにつながる効果的なこともされている。今年度はスウェーデンの大学と考えを交わすだけではなく、何か1つのプロジェクト、例えば観光案内の作成、キャラクター作成といった作業を協働で行うことをスタートするという。国際活動体験プロジェクトでは、グローバル企業の人材育成プログラムに学生を参加させ、上級生が下級生を指導するものも含めて行っている。実際に遠隔で、企業の方から研修を受けるなどである。大学では学ぶことができない実践的スキル、グローバルな考え方を身につけることを目的としたものであり、10週間行われる。
 eラーニングシステム”SNOWBALL”では、自主学習だけではなく、ゲームやSNS的要素も取り入れたものが展開されている。主に工学部生向け英語教育、留学生向け日本語教育のコンテンツが提供されており、今後は教職員向けにも対応していく予定とのことであった。このシステムの注目すべき特徴の1つに、ユーザー参加型開発システムであることであった。2009年から創造性工学プロジェクトの1つとしてスタートし、学生がコンテンツを開発している。内容としては、工学系に必要な、図形の知識、寸法、角度、材料、計測機器等に関するものになっているとのことであった。
 工学系人材育成を目標とされたものであるが、工学系に限らない、全学展開し、大学全体のグローバル人材育成に寄与できるプログラムが準備されていることを実感した。「理系だから」という言葉をよく耳にするが、文理の別という視点ではなく、考え方・フレームを抽出し、どうそれぞれの専門分野に適用していくか、という議論が必要であろう。今や多くの大学で、現状を大きく変え、独自性のあるプログラムを開発し、実行しようとしている。本学のグローバル人材育成に寄与するため、本センターでは今後も継続的に情報収集を行い、学内展開をすすめていく。

東京大学 教養学部附属教養教育高度化機構
http://www.komex.c.u-tokyo.ac.jp/
東京大学 大学院工学系研究科附属国際工学教育推進機構
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/tpage/institution/IIIEE/
(文責 教育支援システム研究部門 山田政寛)

 

○●○ ランチョンセミナーが始まりました(5月は国際月間です) ○●○
 本センターの活動の1つに、ランチョンセミナーがあります。センターの業務や学生支援、留学等の学内の制度紹介、先生方の研究知見の紹介といった学生向けの情報発信の場、またサークル紹介といった学生自身が情報を発信する場として活用されています。5月は留学生センターとの共催で、国際月間となっています。本センターWebサイトにて公表されていますので、ご確認の上、学生への情報提供をして頂けると幸いです。
大学教育開発支援センター http://herd.w3.kanazawa-u.ac.jp/research/luncheon/2012/