【No.401】
専門分野別教育プログラム評価(米国の事例)

○●○専門分野別教育プログラム評価(米国の事例)○●○
 米国における高等教育の質保証の柱は、機関別アクレディテーションと専門分野別アクレディテーションである。4年制大学の機関別アクレディテーションは、全米を6つの地区に分けた地区別アクレディテーション団体 によって実施されている。一方で、主として資格に関わる教育プログラムに対しては、専門分野別アクレディテーション団体によるアクレディテーションによって質の保証がなされている。
 今回は、科学研究費補助金(基盤(C)、課題番号22530912、「専門分野別教育プログラム認定・評価導入への実証的研究」、平成22年度~平成24年度)により、この3月に行った訪問調査および事前のWeb上書面調査で得た情報に基づき、米国における専門分野別アクレディテーション団体の活動について簡単に報告させていただく。
 専門分野別アクレディテーションと機関別アクレディテーションとの関係は、基本的に、機関別アクレディテーションで適格認定を受けていることが、専門分野別アクレディテーションを受ける条件となっている。専門分野別アクレディテーション団体は、米国連邦教育省(United States Department of Education, USDE, http://www.ed.gov/)、または、Council for Higher Education Accreditation(CHEA, http://www.chea.org/default.asp)の認証を受けることで、その社会的役割が認められている。USDEによる認証は、連邦政府による財政支援へのアクセスのためのgate keeperとして位置付けられる。分野によっては、USDEに認証されている団体によるアクレディテーションが連邦政府奨学金受給資格に結びついている。CHEAは、非政府組織であり、大学の学長、副学長クラスが理事会メンバーとなっている。CHEAの認証を受けることは、アクレディテーション団体の任意である。CHEAとUSDEの両方から認定を受けているところもあれば、一方だけのところもある 。
 専門分野別アクレディテーション団体と当該学協会との関係は、当該学問分野の協会内にアクレディテーション部門が設けられている場合と独立したアクレディテーション団体として存在する場合がある。前者としては、Commission on Collegiate Nursing Education(CCNE, http://www.aacn.nche.edu/ccne-accreditation)、Commission on Accreditation(CoA, http://www.apa.org/ed/accreditation/index.aspx)などがあげられる。CCNEはAmerican Association of Colleges of Nursing(AACN, http://www.aacn.nche.edu/)の、CoAはAmerican Psychological Association(APA, http://www.apa.org/index.aspx)のそれぞれ一部門である。後者としては、National Association of Schools of Public Affairs and Administration(NASPAA, http://www.naspaa.org/)などがある。
 CoAの業務を行っているのはAPA職員であるが、CoA自体には独立した理事会、予算があり、そのアクレディテーション活動についての意志決定に親団体であるAPAの影響は排除されている。CCNEとAACNの関係も同様である。このようにアクレディテーション団体の独立性がUSDEによる認証を受ける条件の一つとなっている。NASPAAは現在は独立した団体であるが、40年前はASPA(the American Society for Public Administration) http://www.aspanet.org/public/ の教育担当部門であった。
 ここからは、より具体的な事例として、CoAについて説明させていただく。CoA理事会メンバーは大きく分けて以下の6つのグループからなる。
Domain I 心理学科の運営管理を行う学科長や心理学研究者など
Domain II 教育プログラム担当者、教育プログラム運営管理者、教育プログラムレビュー委員会メンバーなど
Domain III 心理学について現場で実践している人(APAメンバーは、この枠で選出)
Domain IV 一般社会の人
Domain V APA内にあるAPAGS(the American Psychological Association of Graduate Students)などの学生グループから選出される学生
Open CoA Seats CoAが独自に選出
 CoAによるアクレディテーション手順としては、以下の通りである。
1) 自己点検
新規の場合、WebサイトにSelf-studyを掲載し、パブリックコメントを求める
2) CoAのスタッフによる自己点検チェック
あくまでも、文章、資料、データの適切性のチェックであり、質、内容の判断はしない
3) 訪問調査
訪問調査メンバーは、以下の3名から構成される。メンバー候補者一覧がCoAから示され、アクレディテーションを受ける教育プログラムがその中からメンバーを選ぶ
一人目は、対象となる教育プログラムと同様の心理学教育プログラムの責任者で、訪問チームのリーダー
二人目は、実践家として大学の心理カウンセラー(school psychologist)
三人目は、心理学の研究者(ただし、研究分野は対象となる教育プログラムと異なる)
4) 訪問調査報告書作成
CoAが30日以内に確認し、アクレディテーションを受けた教育プログラム側に返す
5) 訪問調査報告書に対する教育プログラム側からの反論受付
6) レビュー委員会による最終確認
7) CoAによるアクレディテーション結果の最終決定
 アクレディテーション認定期間は3年から7年であり、CoAがその教育プログラムの安定性、アウトカムなどから期間を決める。ここでの安定性とは、教員団の安定性、カリキュラム変更の頻度、場所(施設、設備)の安定性、アウトカムデータの内容などである。このアクレディテーション手順は、基本的には日本で行われている機関別認証評価に似ているが、訪問調査メンバーの選出に専門分野別教育プログラム評価の特徴が表れている。
 近年、高等教育において主流となっているアウトカム評価については、CoAとしては、CoAの基準、教育プログラムの基準に適合しているかの確認を行っており、対象となる教育プログラム側にminimal level of achievementを報告することを求めている。それに対して、CoAとして、大学院博士課程レベルとして適切なminimal levelかどうかを判断している。このレベルは、最初は教育プログラム側が設定し、それに対してCoAが適切かどうかを判定している。具体的な評価にあたっては、アウトカムのデータ(evidence)が提供される。量的だけで無く、質的データ(例えば、研究、実践に関するポートフォリオなど)も提出を求める。アウトカムとしては、competency baseとしての知識、スキルと、accountabilityとしての卒業率、在学期間、インターンシップなどがある。
 日本においても、7年に一度機関別認証評価を受けることが義務づけられており、4年制大学対象の機関別認証評価として、大学評価学位授与機構、大学基準協会、日本高等教育評価機構が認証評価を行っている。また、専門分野別としても、日本技術者教育認定機構(Japan Accreditation Board for Engineering Education, JABEE)による工学教育プログラムに対する認定や、薬学教育評価機構(Japan Accreditation Board for Pharmaceutical Education, JABPE)による薬学教育プログラムに対する評価などが行われている。医学、保健学系でも教育プログラムに対する評価が導入、準備されてきている。さらに、日本学術会議が文部科学省からの依頼に対して「大学教育の分野別質保証の在り方について」という回答 を出し、各学協会に「参照基準」策定を依頼している。この対象は、原則全ての学問分野であり、いわゆる文系に対しても専門分野別教育プログラム評価導入が検討されている。金沢大学においても、3つのポリシー(AP、CP、DP)策定、カリキュラムマップ・ツリー作成がなされたが、今後は、その検証作業に合わせて、今度、導入されるであろう専門分野別教育プログラム評価への対応準備として、教育プログラムという意識の共有が求められる。教員個々人も自らの授業のカリキュラムツリーでの位置づけを確認し、教育プログラムという認識を持ち、関連する学協会における専門分野別教育プログラム評価対応の動きを注視する必要があるのではないだろうか。(文責 評価システム研究部門 堀井祐介)
 

 (i) Middle States Association of Colleges and Schools Middle States Commission on Higher Education (MSCHE) http://www.msche.org/ , New England Association of Schools and Colleges Commission on Institutions of Higher Education (NEASC-CIHE) http://cihe.neasc.org , North Central Association of Colleges and Schools The Higher Learning Commission (NCA-HLC) http://www.ncahlc.org/ , Northwest Commission on Colleges and Universities (NWCCU)  http://www.nwccu.org/ , Southern Association of Colleges and Schools (SACS) Commission on Colleges http://www.sacscoc.org/ , Western Association of Schools and Colleges Accrediting Commission for Senior Colleges and Universities (WASC-ACSCU) http://www.wascsenior.org/
(ii) http://www.chea.org/pdf/CHEA_USDE_AllAccred.pdf
(iii) http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-k100-1.pdf