【No.398】
九州大学アクティブラーニング教室 訪問調査報告

 2012年3月1日に九州大学伊都キャンパス アクティブラーニング教室の訪問調査を行った。九州大学 基幹教育院が全学教育におけるアクティブラーニングの推進を行っている。アクティブラーニング教室が整備される背景はグローバル30採択による留学生受け入れと外国語による授業展開の他に、知識を活用し、自律的で活動的な学習者、アクティブラーナー育成という我が国が抱える人材育成の1つの大きな課題に対応するということが背景にあった。アクティブラーニング教室の整備方針として、1)多様な授業形態を可能にする空間、2)コミュニケーション促進をする空間、3)知識のアウトプットとその可視化・共有を促進する空間、4)1から3を実現するためのICT活用、5)授業支援体制の構築であった。実際には可動式の机と椅子、1つの机に2人が使えるようになっている。壁4面にスクリーンが配置されており、4面それぞれで表示するものも変えることが可能となっている。利用可能人数は50名までを想定されている。スクリーンに提示された資料や配布資料等を元に、各グループが議論を行い、小形のホワイトボードを使って情報を整理するなどグループ学習が取り組みやすいようになっている。またそのホワイトボードは壁に変えることができ、ポスター発表のような形態でプレゼンテーションを行うことも可能になっている。
 アクティブラーニング教室における授業支援機器としてはiPod Touchが50台あり、iPod Touchにインストールされているクリッカーアプリケーションを利用することで、個人、または各グループにおける授業内容の理解だけではなく、進捗状況など把握することが可能となっている。このiPod Touchはアクティブラーニング教室以外の教室でも貸し出しを行っている。他にも講義収録システムとの連動、時間外学習や授業コンテンツの電子化を行っているとのことであった。授業コンテンツや授業内で出たアイデアは九州大学で導入されている学習管理システムで共有するといったことが行われている。
実際の授業については、全学教育の2,3コマに1つはアクティブラーニング教室が利用されており、少人数セミナーや21世紀プログラムの授業が実施されている。グローバル30で実施する授業も少しずつ増えてきているとのことであった。平成22年度前期には3つ程度の授業が本教室を利用している状況であったが、平成23年度後期では10近くの授業が実施されている。FD活動して、アクティブラーニング教室を利用した授業に関するものも行われているとのことであった。授業支援体制としては技術職員1名がICT利用等に関する支援を行うため常駐している。平成26年度に行われるカリキュラム改訂に向け、他部局との協力の下、モデルケースを作っていく計画とのことであった。
以上のアクティブラーニング導入においては、総長自らのリーダーシップが強く働き、部局長と何度も話合いを積み重ね、実現に至ったということであった。このような、アクティブラーナー育成のための環境構築は所々で進んでおり、伊都キャンパス内でも嚶鳴天空広場(Q-Commons)、伊都図書館におけるオープンセミナー室など、授業外においても、学生がICT機器を使い、積極的に学習を行う環境が存在する。
 全国的に広がりを見せるアクティブラーニングの導入ではあるが、本学においては、アクティブラーニングの全学的認知と普及はまだ大きくは行われていない状況である。しかし、中央図書館におけるラーニングコモンズによる学生の授業外学習を行う環境、また4月より総合メディア基盤センターに作られたアクティブラーニングに適した教室ができ、歩みは小さいが少しずつ動いている実感はある。特に本学のような広大で、街中から離れた滞在型キャンパスの場合、学生の「居場所」としてのキャンパス整備と授業外におけるアクティブラーニング支援も重要な要素になろう。また本学で進んでいるカリキュラムマップの作成、その実質化といった作業とも合わせて取り組む必要もあろう。この少しずつ動き始めたアクティブラーニングの環境整備と実施において実践を蓄積し、前進することを期待したい。本センターもアクティブラーニングに関する研究、実践について情報収集を行い、定期的に研究会を行っていくことになっている。本学の人材、アクティブラーナー育成のための議論を今後もしていきたい。
 (文責 教育支援システム研究部門 山田政寛)