【No.397】
九州工業大学教育フォーラム参加報告

3月7日に福岡市で開催された九州工業大学教育フォーラム・文部科学省GPフォーラム「大学教育におけるパラダイムシフトと新機軸」に参加した。内容は大きく3部に分かれ、〔第1部〕学習を基軸にする新しい大学教育の展開、〔第2部〕初年次教育と教育方法の改善、〔第3部〕eポートフォリオとその活用で構成され、それぞれ九州工業大学における取り組みと、各項目で積極的な教育改善を行っている大学からの報告がなされた。ここでは、九州工業大学の報告を中心に、ここで簡単に紹介する。
九州工業大学では大学教育改善のために、何を(学生に)身につけさせるか、また学習者視点に立った情報提供を重視して、主体的・能動的な学習を起こさせ、また学修成果の評価(方法)の確立に取り組んできている(「自学自習力育成による学習意欲と学力の向上」(大学教育・学生支援推進事業テーマA、平成21年開始)と、「学生自身の達成度評価による学修意識改革-学習成果自己評価シートをベースとする自己評価システムの構築」(平成19年度特色ある大学教育支援プログラム、平成21年終了)。
学習成果自己評価シートは、情報科学部でのみ実施していたが、平成18年に全学的に導入し、学修自己評価システムへと発展した。これらの取り組みは、単位を取得しないと卒業できないからという消極的な姿勢での学修ではなく、学生がエンジニアとして身につけるべき能力をどこまで達成しているのかをいつも確認し、自己管理を行いつつエンジニアとなることができることを目的としている。
前者のプログラムでは、初年次教育に着目し、学力が分散した学生に対応させて習熟度別授業や、学習アドバイザ(専任教員)による学習コンシェルジェ(学習相談室)を開設しているほか、自学自習教材の作成とそれらのeラーニング化を行うなどして学習環境を整備し、基礎教育充実を図っている。また、数学・物理などの科目で最低限必要な基礎学力レベルを設定し、学力育成の指標となる学習評価基準を作り、(新入)学生の学習到達目標とレベル規準(いわゆるルーブッリク)を作成している。こうすることで、学生は目標を意識しながら学習意欲を高める効果があり、また専任教員はそうした評価規準を設けることで、学生の学力を把握し指導を行いつつ、自分の授業改善にも役立たせることができるという。
 後者では、学習教育目標の項目とそれに対応する授業科目群(カリキュラムマップ)が整備され、学生はシラバス記載の達成目標にもとづき各科目での能力の自己評価を行いながら履修をしていくが、eポートフォリオを利用して学期終了ごとに達成度を自分で測定し、今後の履修方針を立てさせるようにしている。システムの特徴として、教員の成績評価(客観評価)と対比して表示され、目標レベルと到達度が再確認できること、自己採点結果・科目系統別など、学科の実情に応じて評価指標にもとづく達成度をレーダーチャートとして視覚化していることである。またそれらの結果は、指導教員に報告することになっており、学修意欲の低い学生や問題を抱えた学生の早期発見につながり、さらに学年担当教員やカウンセラーなど指導に関わる教員に情報を共有できるようにしている。eポートフォリオは、学修だけでなく、クラブ活動・インターンシップの成果や、卒業研究の定期報告など各種の成果物も蓄積・記録させて、学修履歴書が就職活動におけるエントリーシート作成にも役立つ形となっている。
 大阪府立大学では、学習自己改善支援システムの構築を通した授業改善の実質化に努めていることが報告された。具体的には、授業アンケートによる授業評価への教員の抵抗感や、回答率低下などによる活用の難しさ、学生への直接的なメリットがないことなどを解消するためにシステム改善を行ってきた。
大学の学習・教育支援サイト(LMS)上では、シラバスの授業目標が明示された状態で、授業科目ごとに到達目標の事前理解度や授業時間外の学習時間、各週の授業の内容理解度、到達目標達成度などの項目について、日常的な学習環境の中に埋め込む形で授業振り返りとして6段階評価で学生が行う。そして半期ごとに、全体について自分が立てた学習目標を振り返させ、さらに大阪府立大学学士課程の目指す学修成果(知識、判断・行動など9項目)についての5段階評価も行っている。こうすることで、日常的に、目標を意識させ、自分の学びについて気づき(メタ認知)、学習への動機づけにも役立たせようとしている。
一方、当該システムは教員にとってもポートフォリオとして有効に活用でき、担当授業について蓄積された学生の自己評価データにもとづく早い段階での授業改善や、半期・年度の振り返り、全学の授業について、学生自己評価データや成績分布についても閲覧できて、学生アドバイザとして指導に活用し、またまさにFD活動として、教員間での相互理解やコミュニケーション促進に役立たせることができるものとなっている。
これら2大学だけでなく、他の大学でも共通していることとして、学生への周知、学生・教員による利用拡大のための検討、教務システムとの連携強化など解決すべき課題は残っているが、いずれにしても、こうした取り組みは、CP・DP策定後の授業改善の実質化を推し進める本学にとっても大いに参考にすべきものと思われる。
(文責:評価システム研究部門 渡辺達雄)