【No.395】
第18回大学教育研究フォーラム参加報告

○●○第18回大学教育研究フォーラム参加報告○●○
 3月15、16日に京都大学で行われた第18回大学教育研究フォーラムに参加した。講演、研究発表の中から2件を取り上げ、それらの概要を以下に報告する。
 東京大学教養学部の山本泰氏から、「討議力養成を中心とする教養教育の改革」と題して、平成20~22年度に教育GPの支援を受けて行われた討議力養成プログラムの開発について報告があった。「学力」を学生が「学ぶ力」とし、「他者と異なる意見を交わし、自らの考え方の一面性や理解の不十分性に気づき、自らの見方を修正していく討議の力を学生に身につけさせる。」という自己フィードバック、自己調整あるいは自律性の養成を討議力養成の目的とすること、デイベートの手法を学習することが目的ではないこと、このような社会で求められる汎用的能力であり教養コアと位置づける討議力を養成しようとする授業開発を通して、教養教育におけるFDを行うこともまた目的であったことを述べられた。
 この取組に含まれる理科生の1年通年の必須科目、ALESS(Active Learning of English for Science Students)プログラムについてはセンターニュース370号(センターHPに掲載中)で紹介した。ALESS以外の様々な講義科目の授業時間の一部に討議部分を組み込む取組を教養学部で浸透させ、310以上の授業で約5200名の学生が履修した。ハーバードなど海外の事例や学内の討議型授業についてのスキルや経験を持つ教員の授業から、様々な講義に適用可能ないくつかの討議モデル(モジュールと表現された)を導出し、教養学部の物理部会など専門分野ごとの教員集団内でそれらの情報の共有を行うことにより取組が進められた。海外の事例調査から、授業での討議は自然にできている訳ではないことを理解し、成果を上げるための条件について議論しながら進められた。山本氏は、同時に小学校で普及している移動、組み合わせが可能な机や組み合わせ式小型ホワイトボード、赤外線応答システムなどの教室環境を先行して整備したこと、十分に教育されたモデルTAをGPの予算で確保し、討議を組み込んだ授業科目の授業マネジメントに関わらせたことも有効であったと述べられた。教養学部での2年間を終えて各専門学部に進学する際の出口調査では、「この授業での学習を通して、他者と討議する力が身についた」の設問に、本取組前は9割の学生が「そうは思わない」と答えていたが、討議を組み込んだ授業を履修した学生(1328名)は、11.5%が「とてもそう思う」、36.2%が「ある程度そう思う」と回答している。本取組は、教育GPの事後評価(学生への聞き取りなど)に基づき、GPの全取組の中から、「特に優れており波及効果が見込まれる取組」に選定されている。
 次に、京都大学大学院教育学研究科の西岡加名恵氏による「大学院におけるポートフォリオ評価法」の講演について概要を紹介する。
 西岡氏によれば、ポートフォリオとは学習者の作品や自己評価の記録、教師の指導と評価の記録などを系統的に蓄積するもので、ポートフォリオ評価法とはポートフォリオ作りを通して、学習者の学習に対する自己評価を促すとともに、教師も学習者の学習活動を踏まえつつ自らの教育活動を評価するものである。ポートフォリオ評価法は、日本では「総合的な学習の時間」の導入に伴って小中で普及したが、2008年の中教審答申では、大学に期待される取組の一つとして推奨されている。
 西岡氏は、ポートフォリオ評価法を効果的に行うためには、1)学習者と教師で見通しを共有する、2)蓄積された作品を整理・取捨選択する、3)定期的にポートフォリオ検討会を行う、以上3点とともに、学習成果の達成度評価基準(ルーブリックとよばれる)とポートフォリオに記録されている学習プロセスおよび成果物を照合することが重要であると指摘し、京都大学の教職課程に含まれる社会科教育法での実践について報告された。
 より一般的な事例として卒業研究に照らして上記のポートフォリオ評価法について考察してみたい。例えば理系の実験系の卒業研究では、実験ノートがポートフォリオである。研究室ではとにかくなんでも記録に残すことをまず教育され、その整理(実験データは取捨選択しない)の過程で指導教員とともに定期的にデータの解釈、方法の検証について検討を行い、次の実験の方針を決めていく。しかし、卒業研究では、学生も教員もその過程でどのような能力、学習成果が達成されていったかについてこれまで認識は弱く、結果に注目してきた。卒業研究や課題解決型授業においても学習成果の達成度評価基準を明確にし、それに基づいてプロセス評価を行うことは教育の質保証の観点から今後求められると考えられる。
                       (文責 大学教育研究開発部門 西山宣昭)

○●○研究会のご案内○●○
第6回FD研究会
共催:外国語教育研究センター
日 時:3月26日(月)15時30分~17時
場 所:角間キャンパス総合教育1号館E1講義室
(いつもと場所が異なりますので、ご注意ください)
テーマ:『英語を使った授業』に関するアンケートについて
報告者:小林恵美子(外国語教育研究センター)
趣 旨:外国語教育研究センターでは、『英語を使った授業』に関するアンケートを実施しました。本研究会では、その回答を分類し報告します。それをもとに、英語を使っての授業について、その是非も含めて議論できればと思います。

第7回FD研究会
日時:3月27日(火)10時30分~12時
場所:角間キャンパス 総合教育1号館2階大会議室
テーマ:共通教育特設プログラム・環境・ESDリテラシーの23年度実施と検証
報告者:西山宣昭(大学教育開発・支援センター)
概要:23年度に開設された共通教育特設プログラムの一つである「環境・ESDリテラシー」の実施を振り返り同プログラムの学習目標と実際に行われた授業の教育方法、内容との整合性、改善について議論する。今回は、授業科目「環境の現場に学ぶ」を取り上げる。また、同プログラムの充実を目的として、24年度からは一部の授業科目で里山での授業を試行する予定となっており、その授業案についても紹介し、議論したい。

第8回FD研究会
日時 3月27日(火)15時~16時30分
場所 角間キャンパス 総合教育1号館2階大会議室
テーマ:学習目標・成果に関する教員の意識~第4回教員アンケートの結果報告~
報告者 山田政寛(大学教育開発・支援センター 准教授)
趣旨:本学は『金沢大学憲章』において、「教育改善のために教員が組織的に取り組むFD活動を推進して,専門知識と課題探求能力,さらには国際感覚と倫理観を有する人間性豊かな人材を育成する」ことを宣言している。また、周知のように、大学設置基準、大学院設置基準、および専門職大学院設置基準によって全ての課程で、「授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究」が法的に義務づけられた。本研究会では、第4回教員アンケートにおいて、共通科目、専門科目、大学院科目における、学習成果、学習目標に関して本学教員の意識について調査を行った結果について報告を行う。