【No.393】
ゲームフルな教育をデザインするワークショップ参加報告3 

○●○ ゲームフルな教育をデザインするワークショップ参加報告3 
組織市民活動ゲーム「もそドラ」の開発と評価 ○●○

前回に引き続き、ゲームフルな教育をデザインするワークショップの参加報告を行うが、今回で最後となる。最後は早稲田大学 福山佑樹氏による組織市民活動ゲーム「もそドラ」の開発と評価に関する報告がなされた。最初にビジネスシーンにおけるゲーム利用と学習に関する背景について説明がされた。ビジネスゲームとは「会社経営の模擬演習を行う教育ツール」であり、日常業務から困難な状況までを想定した、オーセンティックな状況を疑似体験するものであり、コンセプチュアルスキル、コミュニケーションスキル、テクニカルスキルの訓練に利用されることが多いということであった。ここまでビジネスゲームが利用される背景にあるのは、経験、戦略形成、意志決定スキル、チームワークの形成、ゲームからの学習結果や目標を意識させるためという。ビジネスゲームの教育利用というのは、今に始まったことではなく、1970年代から検討はされていた。福山氏は先行研究のレビューより、ビジネスゲームの利用目的が1970年代と2000年代で変わってきていることを指摘している。2000年代に入り、従来、ゲームの利用が学習成果や目標を意識させるために利用したものが経験の獲得、戦略形成へと変化してきているということであった。これらの背景を踏まえ、福山氏が関わっている組織市民行動ゲーム「もそドラ」の開発とその評価結果について報告がなされた。
 組織市民行動ゲームに取り組む背景となったのは、近年の職場の多忙化により、従業員が成果の出にくい行動を行わなくなり、職場を円滑化する行動も見られなくなってきたことにあるということであった。その中で、成果に直結しなくても職場を円滑にする行動の1つである、組織市民行動の重要性を学習するためのゲームが開発された。組織市民行動というのは、①任意の行動であり、②公式の報酬システムによって直接、もしくは明確に承認されているものではなく、③集合的に組織の効率を促進するものと定義されているとのことであった。福山氏は成果主義と日常的にある組織市民行動の間にあるジレンマ(社会的ジレンマ)が発生する状況をプレイヤーに意識させ、どのような行動を行うのか評価を行った。ゲームの媒体はカードであった。ストーリーとして、ノルマのある厳しい会社の営業職であるという設定を行い、様々なチャンスをモノにし、個人と組織の目標を達成するように指示される。勝敗条件として、大前提は会社の目標が達成されていることであり、未踏の場合は倒産し、全員がゲームオーバーとなる。目標が達成された場合、個人成果がもっとも多い人が勝利となるというものであった。カードは日本版組織市民行動尺度という尺度にそって作成されたカードと成果行動カードがあり、組織市民行動カードは「休んでいる人の仕事を手伝う:全体成果+30% 自分の成果 -1」といったものである。成果行動カードは「目標に着実に 個人成果+2」といったカードであり、個人の成果を示すカードである。
 評価結果はリフレクションシートに基づいて行われた。結果として、参加者のほとんどは組織市民行動の重要性は理解したものの、援助行動については自己犠牲であるため、負荷が高いという認識された。また、プレイヤーの日常的業務と関連づけがなされ、振り返りがなされたこと、成果行動との対比で理解を促進させたとしている。最後に福山氏は組織市民行動における経験のデザインという観点から、①組織市民行動の重要になるようなゲームデザイン、②学術的に裏付けのあるカードの内容とオーセンティックで納得感があるルール作り、③リフレクション活動の充実/現実とのリンクがゲームを扱った経験のデザインにおいて検討すべき観点であると説明した。
 筆者が担当した3回でゲームの教育利用について説明と報告を行ってきたが、教育現場ではまだゲームというものに対して、強い抵抗と誤解がある。私たちの日常生活、業務においても、苦楽は別として、ゲーム的なものは多く存在する。1つの学習方法として、楽しく学ぶ環境作りの手段として、ゲーム的アプローチを使うということは有効であろう。しかし、これだけのことを1人の教員で行うのは難しいのも事実である。理想的にはゲームデザインに関する知識を有する専門家と連携することが望ましいが、書籍や教育系の学会等から様々な事例を収集し、自身の授業の1部に適用して試行するというのも1つの手であろう。近年、このようなゲームを使った教育・学習に関する研究も世界的に増えてきている。教育研究分野では注目されている1つのトレンドでもある。自身の授業デザインの参考情報として、検討してみるというのも、自身の授業改善を楽しくする方法ではないだろうか。
(文責:教育支援システム研究部門 山田政寛)

○●○ 第4、5回評価システム研究会・第10、11回カリキュラム研究会を合同開催します ○●○

第4回・第10回 日時:3月22日(木)10時~12時
場所:角間キャンパス総合教育1号館2階大会議室
テーマ:授業改善のためのシラバス作成、成績評価の考え方
報告者:渡辺達雄(大学教育開発・支援センター)
趣旨:授業改善 を実質化するためのツールとしてシラバス、 授業評価アンケートの他に、近年はポートフォリオやルーブリック等が知られ既に活用している大学もあるが、今後カリキュラムマップにもとづき改善を進めていく土台として、改めてシラバスとは何か、到達目標を中心に(シラバスに)どこまで書くべきか、それと表裏一体である成績評価の目的や方法、またそれらを結びつける授業評価アンケートのあり方について、国内の事例も紹介しながら確認し、理解を深めていきたい。

第5回・第11回 日時:3月22日(木)13時~15時
場所:角間キャンパス総合教育1号館2階大会議室
テーマ:成績評価ツールとしてのルーブリック
報告者:堀井祐介(大学教育開発・支援センター)
趣旨:ディプロ マポリシー(DP)、カリキュラムポリシー(CP)を 効力のあるものとするためには、成績評価が非常に重要となる。近年、米国において、教員の成績評価活動を支えるツールとしてルーブリックが注目されている。ルーブリックを用いることで、教員の側からは、今まで以上に成績評価の可視化を進め、公平性・平等性を担保することにつながり、学生の立場からは、学習に対する目的意識、学習意欲を高めることにつながる。ルーブリックは、また、アウトカムズ測定にも有用とされている。本研究会では、米国大学に対する調査研究に基づき、「ルーブリックとは」、「ルーブリック作成手順」、「ルーブリック事例」について報告を行い、参加者のルーブリックに対する理解を深め、ルーブリック導入の可能性について議論したい。