【No.391】
IR と教育改善の関係(オーストラリア、アメリカの事例)

○●○IR と教育改善の関係(オーストラリア、アメリカの事例)○●○
 1月21日(土)国際シンポジウム2011(メルボルン)「IRと教育改善 ~オーストラリアの事例から学ぶ~」(平成21年度文部科学省補助金「大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム」において採択された「多面的な国際交流の充実と高等教育の質向上に向けた国際連携プログラム開発」(代表校:龍谷大学)、会場:大谷大学)、1月27日(金)2011年度第3回教学実践フォーラム「大学における根拠に基づく教学改善とIR」(主催・会場:立命館大学)の2つのIR(注)関連イベントに参加してきた。
 国際シンポジウム2011(メルボルン)では、杉本和弘氏(東北大学高等教育開発推進センター 准教授)による事例報告「オーストラリアの大学における教学IR事例」から始まり、Richard James氏(メルボルン大学副学長・高等教育研究センター長)、Angela Carbone氏(モナッシュ大学教育改善担当副学長室副室長)Straty Savvas氏(スインバーン工科大学戦略的計画・質保証部 統計マネージャー)の3氏により、"The role of institutional research for Teaching and Learning in Higher Education"というタイトルで各大学におけるIRへの取組紹介が行われた。
 教学実践フォーラムでは、鳥居朋子氏(立命館大学教育開発推進機構教授)による「大学の教学改善とIRをめぐる課題」と題した高等教育における質保証の状況及びそこにおけるIRの役割についての解説から始まり、引き続き、David Dowell氏(アメリカ・カリフォルニア州立大学ロングビーチ校戦略的計画担当副学長)による"Highly Valued Degrees at California State University Long Beach -Focus on Graduation Rate Improvement"、Todd Walker氏(オーストラリア・バララット大学、学習・質保証担当副学長)による"Program Health Checks -a process for ensuring institutional quality assurance in undergraduate programs"というタイトルの講演が行われた。
 全てについて詳細に報告することは出来ないが、各大学における特徴的な取り組みについて以下に簡単に紹介させていただく。オーストラリアでは、「卒業生進路調査」(The Graduate Destination Survey (GDS))、「コース経験質問紙調査」(The Course Experience Questionnaire (CEQ))などの卒業生向け調査 や「オーストラレーシア学生エンゲージメント調査」(the Australasian Survey of Student Engagement (AUSSE)) といった学生調査が全国規模で実施されており、各大学は、これらのデータを基に、説明責任を明確にし、可能であれば定量的目標を示した教授・学習計画の策定、他大学とのデータ比較などを行っている。これらとは別に、メルボルン大学では、Melbourne Experience Survey, Melbourne Research Experience Survey, Subject Evaluation Survey, Beyond Graduation Survey, International Student Surveyなどを実施し、データに基づく教育改善に取り組んでいる。今後、これらのデータを教員能力開発にリンクさせることを目指している。モナッシュ大学では、大学が独自に設定した主要業績評価指標(Key Performance Indicator)毎にチェックを行い、年度計画に照らして「緑(目標達成)」、「オレンジ(要改善)」、「赤(重大な注意を要する)」の3色に色分けした報告書を作成している。授業評価アンケートについても項目毎に色分けを行っており、その総体として学部別授業評価ランキングも作成している。スウィンバーン工科大学では、進級率(合格した科目数/履修登録した科目数)、離学率(当該年度に学習を開始したが、年度内にコースを修了せず、復学もしていない学生の比率)、GPA、卒業生のフルタイム雇用率、学生満足度などを調査し、内部質保証、学生募集、学習支援、対外報告などに活用している。カリフォルニア州立大学ロングビーチ校では、質保証活動の一環として、"Highly Valued Degree Initiative"という取り組みを7つの学部の協力のもと進めており、卒業率(graduation rate)、在籍率(retention rate)などを、学生の属性(所属学部、男女、民族、履修状況など)に応じて全学的に検索が出来る仕組みを構築するとともに、これらのデータとカリキュラムの関係(卒業のために不必要な履修が無いか、履修の流れに不自然な部分は無いかなど)をチェックするタスクフォースを設け、データに基づく継続的教育改善サイクルを動かしている。バララット大学では、全てのコースについて学期毎に学生アンケートを実施し、学習成果達成に役だった点、邪魔になった点、学習動機、学習活動、授業満足度、教育効率などについて聞き、これらのデータを同じシステムを使っている別大学と比較している。また、"Program Health Check"という取り組みでは、これらのデータをもとに、コース毎に5段階評価を行い、最低の1がついたコースはコース閉鎖、2がついたコースは閉鎖まで1年間の猶予、3以上でコース継続という仕組みを設けている。
 各大学に共通しているのは、教務データ、学生アンケートなどに基づく客観的数値データを活用し、教育改善サイクルを回している点である。もちろん、IRさえあれば、教育改善が進み、評価活動がうまくいくということではない。しかし、今後ますます多様化していく学生、高度化していく教育・研究、複雑化していく管理・運営に対応し、大学教育における、説明責任、透明性、質保証を進めるためにも、今まで以上に客観的データに基づく戦略的計画立案が重要になるだろうということを、オーストラリア、アメリカの実例を聞いて強く感じた。(文責 評価システム研究部門 堀井祐介)

○●○第9回大学教育セミナー(金沢大学創基150年記念「講演会・シンポジウム」シリーズ第52回)○●○
日時:2012年3月3日(土)13時30分~17時20分
場所:石川県政記念しいのき迎賓館3階 セミナールームB(石川県金沢市広坂2丁目1番1号)
タイトル:カリキュラムマップ実質化の方策  -学生の到達度確認の仕組み-
趣旨:現在、中教審答申等を受け、3つのポリシー(DP、CP、AP)策定作業が各大学で進められている。既に作業が完了し3つのポリシーを公表している大学も多い。この流れの中、策定したポリシーを教育活動に具体的に反映させ、教育の質保証に結びつけるべく各種取り組みが行われている。今回は、それらの中から、カリキュラムマップに基づく学生の到達度確認の仕組みについて、その教育的意図、効果、具体的運用、成果を中心に、先駆的に研究、導入されている事例を新潟大学および広島大学からご報告していただく。その上で、本学の取り組み状況を確認し、全体討論を通じて今後の大学における教育の質保証につながる知見を得ることを目指す。
報告内容:
「NBAS-新潟大学の質保証への試み」(生田孝至氏(新潟大学理事(教育担当)・副学長)
「広島大学到達目標型教育プログラム(HiPROSPECTS®)における到達度評価の現状と課題」(坂越正樹氏(広島大学 理事・副学長(教育担当))
「金沢大学における取り組み」(西山 宣昭 大学教育開発・支援センターセンター長)

○●○第4回評価システム研究会・第10回カリキュラム研究会合同開催○●○
日時:3月22日(木)10時~12時      場所:角間キャンパス総合教育1号館2階大会議室
テーマ:授業改善のためのシラバス作成、成績評価の考え方 
報告者:渡辺達雄(大学教育開発・支援センター)
趣旨:授業改善 を実質化するためのツールとしてシラバス、 授業評価アンケートの他に、近年はポートフォリオやルーブリック等が知られ既に活用している大学もあるが、今後カリキュラムマップにもとづき改善を進めていく土台として、改めてシラバスとは何か、到達目標を中心に(シラバスに)どこまで書くべきか、それと表裏一体である成績評価の目的や方法、またそれらを結びつける授業評価アンケートのあり方について、国内の事例も紹介しながら確認し、理解を深めていきたい。

○●○第5回評価システム研究会・第11回カリキュラム研究会合同開催○●○
日時:3月22日(木)13時~15時      場所:角間キャンパス総合教育1号館2階大会議室
テーマ:成績評価ツールとしてのルーブリック
報告者:堀井祐介(大学教育開発・支援センター)
趣旨:ディプロ マポリシー(DP)、カリキュラムポリシー(CP)を 効力のあるものとするためには、成績評価が非常に重要となる。近年、米国において、教員の成績評価活動を支えるツールとしてルーブリックが注目されている。ルーブリックを用いることで、教員の側からは、今まで以上に成績評価の可視化を進め、公平性・平等性を担保することにつながり、学生の立場からは、学習に対する目的意識、学習意欲を高めることにつながる。ルーブリックは、また、アウトカムズ測定にも有用とされている。本研究会では、米国大学に対する調査研究に基づき、「ルーブリックとは」、「ルーブリック作成手順」、「ルーブリック事例」について報告を行い、参加者のルーブリックに対する理解を深め、ルーブリック導入の可能性について議論したい。

○●○第6回評価システム研究会・第12回カリキュラム研究会合同開催○●○
日時:3月23日 (金)10時~12時    場所:角間キャン パス総合教育1号館2階大会議室
テーマ:卒業研究 の評価について
報告者:堀井祐 介、西山宣昭(大学教育開発・支援センター)
趣旨:第2期中期計画【13-1】として、「卒業時における学力の達成度を評価し、在学生の学力向上にフィードバックさせるシステムを開発する」と明記されている。卒業時までの学力・能力の獲得において、4年間の授業科目における学習成果の累積とともに、4年次の卒業研究の寄与は極めて大きいと考えられる。当センターでは、卒業時における学力の達成度を評価する基準について検討するために、国内の卒業研究を評価する取組
について情報収集を行ったので、その結果について報告する。一方、米国では、キャップストーンと呼ばれる科目がある。日本における卒業研究に相当する場合もあり、卒業時における学習成果を測定するための科目として位置付けられている。このキャップストーンにおいて、学生がどのように評価され、それがアウトカムズ測定につながっているのか、米国における事例等を紹介する。

○●○第5回FD研究会○●○
日時:3月23日 (金)13時~15時    場所:角間キャンパス総合教育1号館2階大会議室
テーマ:ソーシャ ルメディアを使ったアクティブラーニング実践報告
報告者:山田政寛 (大学教育開発・支援センター)
趣旨:近年、プロジェクト学習などのアクティブラーニングが多くの大学で導入されてきており、必修科目とする大学も増えてきている。アクティブラーニングでは、世の中に流れている情報を授業の中で活用すること、または授業で学んだことが社会で活かせるなど、社会との接点を作ることがアクティブラーニングの1つの重要な要素である。社会との接点を作 る方法の1つとして今、注目されているのがTwitterやFacebookと いったソーシャルメディアである。本研究会ではアクティブラーニングにおけるソーシャルメディアの教育利用について研究知見を引用しながら、実践事例を紹介し、報告者が1年間行ってきた実践について報告をする。また ソーシャルメディアを使った学習の評価についても議論を行いたい。
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i 欧米の大学教育研究センターや大学評価センターでは、学習成果・教育効果をデータ化し、分析するとともに、客観的で系統的な方法により、組織の評価に提供する部門として、IR(Institutional Research)という部門を置くことが一般化している。
ii Australian Graduate Survey(GDS, CEQ)
http://www.graduatecareers.com.au/Research/Surveys/AustralianGraduateSurvey/index.htm
iii Australasian Survey of Student Engagement (AUSSE)
http://www.acer.edu.au/research/ausse/overview