【No.390】
卒業研究の達成度評価について

○●○卒業研究の達成度評価について○●
第2期中期計画【13-1】「卒業時における学力の達成度を評価し,在学生の学力向上にフィードバックさせるシステムを開発する。」の23年度計画として明記されている「卒業時における学力達成度を評価するシステムの開発に着手する。」のためには、卒業時における学力を明確に定義した上で適切な達成度評価方法を開発する必要がある。本中期計画については、学域・学類とともに大学教育開発・支援センターもその実施に寄与することとなっている。当センターは、卒業時における学力を、共通教育科目、専門科目での学習により身につく学力と4年次の卒業研究等、研究室での研究活動によって身につく学力とに分類し、学力の達成度測定に関する国内外の事例調査を現在行っている。各学類で策定が進められているカリキュラム・マップは、授業科目と学類ごとの卒業時に達成されるべき学習成果(学力)との対応表であるが、現時点では授業科目としては各学類の専門科目が考慮されており、共通教育科目のカリキュラム・マップにおける取扱および共通教育の学習成果についての議論は完了していない。卒業時までに達成される学力の養成において、共通教育科目、専門科目によって身につけた学力を総合的に運用することを求められる4年次の卒業研究等、研究活動の寄与は極めて大きい。したがって、卒業時の学力の達成度を評価するシステムの設計のためには、卒業研究等の4年次の研究室での教育成果の評価は必須となり、同時に今後カリキュラム・マップにおける位置づけについても全学的に議論することが必要となるであろう。現在までに、上記の23年度計画に沿って卒業研究の学習成果の達成度評価方法に関する国内の事例についての文献調査、さらにアメリカの大学での最終年次における(卒業研究を含む)プロジェクト型教育プログラムであるcapstoneの評価方法について資料調査を行っている。
国内の卒業研究の評価の事例についての文献調査から、本学の工学部における取組が極めて初期のものであることがわかった[1-3]。本学の平成22年度のFD活動報告書には、物質化学類応用化学コース、環境デザイン学類において卒業研究の達成度評価が行われたことがFD活動の特記事項として記載されており、平成13年度から現在まで継続的に検討が進められている本学工学部における卒業研究の達成度評価は、第2期中期計画【13-1】の実施を進める上でのモデルとなるであろう。平成15年度時点での達成度評価方法[1]は、「課題発見設定能力」「分析・総合化・知識の応用能力」など6つの達成目標を設け、例えば「課題発見能力」に対しては、「与えられた大枠の課題に関連する意義ある具体的な研究課題を提案できる」、「提案した課題遂行の可能性について測定装置や設備、ソフトウエアの環境の限界を考慮して課題実施の概要計画を立てることができる」など複数の判定基準(ルーブリック指標)が設定されている。このような達成目標および判定基準を学生、指導教員が共有した上で、卒業研究の中間発表および最終発表時に学生による判定基準についての自己評価および教員による評価を行っている。九州大学工学部地球環境工学科では、同様に卒業研究の達成目標とその判定基準に基づく達成度評価[4]が行われているが、研究発表時ばかりでなく卒業研究の期間全体にわたる評価が行われており、プロセス評価と考えられる。その詳細について現在情報を収集している。多くの研究室では通常、研究の経過報告・検討会と研究に関連するジャーナルの報告会がそれぞれ週1回づつ行われており、これらの卒業研究における日常的な活動とその記録(ポートフォリオ)に基づいたプロセス評価も検討する価値があると考えられる。この点に関連して、アメリカのカレッジにおけるcapstone portfolioについて情報を収集している。
中期計画【13-1】では、卒業時における学力の達成度を評価し、「在学生の学力向上にフィードバックさせるシステムを開発する。」とあり、卒業研究の達成度評価については、その評価結果をフィードバックする仕組みについても検討する必要がある。この点についても、本学の工学部では、卒業研究の達成度評価後に、学生による卒業研究の指導についての評価および教員による自己評価を無記名で行うほか、卒業時において身につけるべき学力・能力(卒業研究では達成目標に当たる。)を社会で求められる能力に照らして妥当かどうかを評価するための卒業生アンケートが平成12年度から実施されており、このようなフィードバックの仕組みは中期計画【13-1】の実施のためのモデルとなるであろう。
中期計画【13-1】の実施は、まもなく公表されるカリキュラム・マップを基盤とする本学の教育の質保証システムの構築を意味するものであり、今後全学的な議論が必要である。
(文責 大学教育研究開発部門 西山宣昭)
[1]近田ほか、「卒業研究の達成度評価法 第1報、実施法の提案」平成15年度工学・工業教育研究講演会講演論文集、p.137.
[2]飯田ほか、「卒業研究の達成度評価法 第2回」平成15年度工学・工業教育研究講演会講演論文集、p.195.
[3]山崎ほか、「卒業研究の達成度評価法 第3報、結果のフィードバック」平成15年度工学・工業教育研究講演会講演論文集、p.145.
[4]久場、安福「地球環境工学卒業研究の評価導入による学習改善・教育改善効果について」平成18年度工学・工業教育研究講演会講演論文集、p.416.

○●○アカンサスFDについて○●○
アカンサスポータルにログイン後、<時間割>-<その他情報>-<FD/SD>-<アカンサスFD>でアクセスできます。上の記事で紹介しました参考文献は、<アカンサスFD>の中の解説の<研究論文等紹介 カリキュラム・ポリシーと教育の質保証>の欄の「>>研究論文等紹介 卒業研究の意義とその評価」に掲載しています。

○●○第9回大学教育セミナーのご案内○●○
(金沢大学創基150年記念「講演会・シンポジウム」シリーズ第52回)
主催:金沢大学 大学教育開発・支援センター   後援:大学コンソーシアム石川
日時:2012年3月3日(土)13時30分~17時20分
会場:石川県政記念しいのき迎賓館3階 セミナールームB(石川県金沢市広坂2丁目1番1号)
テーマ:「カリキュラムマップ実質化の方策-学生の到達度確認の仕組み-」
趣旨:現在、中教審答申等を受け、3つのポリシー(DP、CP、AP)策定作業が各大学で進められている。既に作業が完了し3つのポリシーを公表している大学も多い。この流れの中、策定したポリシーを教育活動に具体的に反映させ、教育の質保証に結びつけるべく各種取り組みが行われている。今回は、それらの中から、カリキュラムマップに基づく学生の到達度確認の仕組みについて、その教育的意図、効果、具体的運用、成果を中心に、先駆的に研究、導入されている事例を新潟大学および広島大学からご報告していただく。その上で、本学の取り組み状況を確認し、全体討論を通じて今後の大学における教育の質保証につながる知見を得ることを目指す。
内容 報告1「NBAS-新潟大学の質保証への試み」
生田 孝至氏(新潟大学理事・副学長(教育担当))
報告2「広島大学到達目標型教育プログラ(HiPROSPECTS®)における到達度評価の現状と課題」
坂越 正樹氏(広島大学理事・副学長(教育担当))
報告3「金沢大学における取り組み」
    中島 健二 金沢大学学長補佐(学域学類担当)
   全体討論