【No.376】
平成23年度大学評価フォーラム参加報告

○●○アカンサスFD○●○
大学教育開発・支援センターでは、FDをはじめとする各種高等教育関連情報をアカンサスポール上の<アカンサスFD>コースに掲載しています。アカンサスポータルにログイン後、<時間割>-<その他情報>-<FD/SD>-<アカンサスFD>でアクセスできますので、是非ご覧ください。今回は、先日開催された「東アジア高等教育質保証国際シンポジウム」関連情報を紹介させていただきます。解説の<文部科学省>の欄に当日の配付資料等をアップロードしています。「キャンパス・アジア」構想、日中韓高等教育質保証関連の情報としても興味深いものが多くあります。同じものは、文部科学省のWebページでもご覧いただけます。

○●○平成23年度大学評価フォーラム参加報告○●○
 10月26日に、東京大学安田講堂で開催された「平成23年度大学評価フォーラム『グローバル時代における新しい質保証-国際機関の取り組みからみえる「機能」とは-』」(主催 大学評価・学位授与機構主催、後援 文部科学省、大学基準協会、日本高等教育評価機構、短期大学基準協会)に参加してきた。プログラム構成は、川口昭彦氏(大学評価・学位授与機構特任教授)、Govindan Parayil氏(国際連合大学副学長)、Dirk Van Damme氏(OECD教育局教育研究革新センター所長)による講演および全体でのパネルディスカッションであった。
 川口氏の講演では、「これからの質保証システム-検証結果から垣間みえるもの-」とのタイトルで、大学教育のグローバル化の意味、および機関別認証評価に関するアンケートの紹介が行われた。大学教育のグローバル化は、「学生送り出し」や「留学生受け入れ」といった一方向の段階から、世界規模での学生募集、研究者・教職員の受け入れ拡大による相互交流・相互理解促進といった双方向の段階に入っており、日本の大学も世界規模で学生、研究者・教職員を取り込むことで世界に認められる「質」の高い教育を展開しなければならない状況となっている。高い「質」を維持し、国際的競争力を確保するためには、第三者による教育の質保証が不可欠であり、大学評価・学位授与機構による第二サイクルの認証評価において「教育面における国際交流活動の状況」を選択的評価事項とするかを検討中とのことであった。また、昨年度で第一サイクルが終了した、大学評価・学位授与機構が実施した機関別認証評価のアンケートによる検証結果については、機関別認証評価により「教育研究活動の質が保証される・改善が促進される」点については評価を受けた機関、担当者ともに肯定的な評価が多かったが、「学生や社会の理解と支持が得られる」といういわゆる「社会的説明責任を果たす」点ではかなりの課題があることが明らかとなった。まとめとしては、各大学の個性となる研究、教育活動を明確に具体的に地域社会および世界に発信すること、期待される成果および得られた成果を示すことが「社会的説明責任を果たす」ことになり、この活動を通して、大学のいわゆる「機能」が明らかになり、研究、教育、学生募集活動などにおいてグローバル時代に対応できる。そして、これら大学の諸活動における成果の「質」を測り、「質」を向上させる手段として評価が位置付けられるとのことであった。
 Parayil氏は「国際連合大学における質保証」というタイトルで、授業評価アンケート、卒業生アンケート、教育プログラムおよび教育単位の自己評価、外部評価などの国際連合大学における質保証活動を紹介された。国連機関らしく教育に関してsustainabilityをキーワードとした活動を重視されている点が印象的であった。
 Van Damme氏は、「高等教育における質保証のグローバル化」というタイトルで、現在、機関、国、地域、世界レベルで、教育プログラムまたは機関についての質保証(Quality Assurance)の仕組みが作られてきており、INQAAHE他での国際連携や評価機関を評価するメタ評価制度や評価機関登録制度も取り入れられてきていることを紹介した後、質保証活動に関して、以下にあげるいくつかの問題点、危惧される点を指摘された。


・ 官僚主義化(bureaucratisation)、形式化(formalisation)、
    * 形式的な質問への回答が標準の仕組みとなる
    * 法律尊重主義による形式化、安全志向の評価
    * 形式化されることにより同僚(peer)が現実を見ることが困難となる
・ 世間的名声獲得のためうわべを飾る(window-dressing)だけになる、
    *表面的法令遵守
    * 評価活動を円滑に進める質管理の専門家への依存
・ 説明責任(accountability)と改善(improvement)のバランスを取ることの困難さ、
    * 厳しい外部説明責任を求めることは、内部質改善機能とアカデミックコミュニティにおける質保証の枠組みを脅かす
    * 改善ばかりを強調しすぎても評価活動に支障が出る
・ 質保証(Quality Assurance, QA)にかかる費用と労力
    *直接的な費用はまだまかなえる範囲だが、国家から評価機関への援助は、時には、本来なら大学に来るべきお金が、そちらへ流れていると認識される場合がある
    * 費用計上されないコスト(労働時間など)が非常に高い
・ まだinput, processの基準に重きが置かれている場合が多い
    * 学生に提供している教育の質は十分なのか?
    * 学習成果(learning outcomes)に関してまだまだ及び腰
    * OECDのAHELOプロジェクトにはさらなる支援が必要
・多くの質保証枠組みが、未だ最低限満たすべき基準を適用している
    * 最低限の基準を超えた多様な取り組みへの支援や試みはほとんど無い
    * 最低限の基準を超えてさらなる改善へ駆り立てる要因もほとんど無い
・ 同僚評価(peer review)方法論の限界
    * 同僚評価は有力な方法であるが、学問分野、世代間格差、同僚の中立性、国際的評価における費用と言語の問題などがある


次に、高等教育の国際化と質保証についてコメントが述べられた後、今後の質保証戦略として、以下のキーワードが挙げられた。
・ 革新(innovation)
    * 質保証は高等教育改革・新機軸導入の大きな原動力となる
・ 関連性(relevance)
    * 現在、本当に必要、関連のあるもの(特に学習成果)に焦点を絞る
    * 全ての項目をチェックする必要はない
・多様性(diversity)
    * 標準化の危険性(脱標準化へ)
    * 多様性に合わせられる柔軟なシステムの構築
・地域と世界(local & global)
    *世界レベルでの情報共有、協働作業は重要
    * しかし、自らの研究環境および地域に根ざした活動が必要
・ 信頼(trust)
    * 質保証の仕組みにおいて、これが最も重要
    * アカデミックスタッフと大学との信頼関係醸成にもっと力を注ぐ
    * 公開性、透明性を高めることがアカデミックの価値を高めるための核である


Van Damme氏の講演から、国際的な高等教育質保証において重要なのは、「教員(アカデミックスタッフ)が質保証の第一義的責任を負う」こと、「高等教育関連情報の透明性を高める」ことであると感じた。金沢大学においても、個々の教職員が自らの責任において、教育、研究、その他諸活動の客観的根拠を公表するという意識を持つことが重要であろう。そのことが、大学の質の向上につながり、大学の社会的責任を果たし、ひいては、国内外における金沢大学の価値を高めることにつながるのである。(文責 評価システム研究部門 堀井祐介)