【No.368】
前期授業「電子書籍作成入門」におけるプロジェクト学習の実践

○●○ 前期授業「電子書籍作成入門」におけるプロジェクト学習の実践 ○●○

前期に筆者は「電子書籍作成入門」というプロジェクト学習をベースにした授業を実施した。授業の名の通り、iPadにインストールされているiBookをリーダーとした電子書籍を作成し、プレゼンテーションするものである。授業では電子書籍に関する一通りの知識を身につけた上で、内容、レイアウト、デザインを決定し、作成を行う。企画・デザイン・作成はグループで行う。完成までの計画もグループで考えさせる。教員は、その計画が妥当であるかどうかを問い、無理がある計画、思慮が浅い計画の場合は修正を求める。それ以外はグループ自身が作成した計画であるので、それに責任を持って実施してもらうことを伝えた。
プログラム技術としてはHTML5とCSSの知識があれば良いが、電子書籍のファイル形式の1つである”epub”の形式理解、電子書籍開発ツールの特徴、その中でのHTMLの処理のされ方なども理解が必要である。電子書籍を作成するツール(オーサリングツール)の使い方を理解しておかなければならず、多少、敷居が高いものとなっている。知識伝達型の授業は最低限に抑え、文献紹介・貸し出し、情報源のあたり方、情報収集ツールの紹介を行った。たとえば、授業ではHTML5やCSSの指導は一切行わない。ある程度の知識を持っていることのが望ましいが、授業外に学習して欲しいこと、HTMLやCSSの情報源の紹介等は行った。またTwitterを授業内の連絡ツール、報告ツールとして使用することを伝え、Twitter上で有用な情報を流すなどの配慮を行った。作成自体も90分授業×15回では到底足りない。授業外の活動が不可欠である。作成に必要な素材については著作権、肖像権の説明をした上で、インターネット上のコンテンツは安易に使用しないこと、極力、自分たちで撮影等を行うよう伝達した。撮影に必要な機材は教員が個人で所有しているものを貸与した。
実際に作成された電子書籍は兼六園のガイドブック、トランペット初心者向けの教科書であった。兼六園のガイドブックでは、紙媒体では掲載が難しいパノラマ写真が掲載されていた。紙ではできない動画を取り込んでいた。トランペットの教科書は、トランペットのふき方の掲載や実際の音が取り込んであるだけではなく、作成者の2人のキャラクターが出てきて、初心者が成長していくストーリー仕立てとなっていた。
実際に実践したところ、効果的であった点は、新奇なツールに触れることにより動機付けの向上、Twitter等による受講者・教員間、さらには筆者が担当している他の授業の受講者との接点ができたことによる、授業内容・活動内容の可視化であると考える。iPadを実際に利用するという経験をさせることで、「iPadで動作するものを自分たちが作る」という、新しく、世界的に注目されていることに授業内で行うことができるという、興味と好奇心を高めることができ、学習の動機付けを高めることができたように思う。
Twitterによる効果は度々筆者がセンターニュースで紹介している通りである。教室内・授業内という履修者のみという閉鎖された空間における教育は長年、教育研究から批判されることが多かった。学習者の能動性を失わせ、思考と活動範囲に制限を加えることや習得した知識が実社会で活用されるという、転移を妨げるという指摘もある。Twitterによって、授業内・大学内だけではなく、Web上で専門としている個人や興味を持っている個人とのつながりができ、大きな情報源と社会との接点を作ることが可能である。本授業では受講者がTwitterで収集した情報を元に、教員も知らないツールを見つけ、電子書籍を作成している様子も見られた。これは良い点でもあるが、授業運営をしている教員の思想によっては否定的に考える場合もあろう。それは授業での指導内容の範囲を越える可能性も出てくる。Twitterのようなソーシャルメディアと言われるツールは社会との接点ができ、授業という閉鎖された場を拡張していく効果もある。このようなツールを使い、学習の場を拡張していき、実践の場との接点を作るには教員にもタフさと思想の変化が求められることであろう。
また、筆者が担当する他の授業の受講者との交流があったことも興味深い点であった。他の授業を受講している受講者が内容に興味を持ち、電子書籍作成入門の最後のプレゼンテーションに聴講者として参加したということもあった。また、その逆も事象も起こった。それは電子書籍作成入門の受講者が単位にならないにも関わらず、筆者が担当する他の授業内容に興味を持ち、参加したということであった。これはすべてTwitter上のツイート、ミニッツペーパーをTwitter上で開示することで、相互に授業でやっていることを可視化した効果と言える。
しかし、課題点も見つかった。1つは上記でも述べた、ツール類の操作が難しいことである。センターでもいくつか用意をしたが、あまり使用されなかった。今回はフリーソフトでソースコードを入力するタイプを用意した。来年度は電子書籍のサンプルとソースコードを配布し、フリーソフトで開発することを前提としたものとしたい。オーサリングツールは慣れると使いやすいが、日常的に触れる時間を作ることができないため使用は困難と思われる。また書籍のテーマ設定も1つの課題と思われる。今回はテーマ自体も受講者に検討させたが、テーマも大枠をこちらで設定しても良いかもしれない。テーマ自体も検討させることで、受講者自身に活動に対する責任感と動機付けになることはあるが、実現が困難なテーマを選定する可能性もあるので、来年度は「観光ガイド」、「教科書」、「エンターテイメント」等の大枠を与えることも検討したい。
 本学の共通科目で実施できる範囲で、プロジェクト学習を実践したが、プロジェクト学習は社会との接点を持つことが前提となった学習形態である。習得できる能力、知識も教科書で書かれていること以上のものを、実践に通じる形で受講者は解釈し、理解していく。コミュニケーションはもちろんのこと、コラボレーション力、行動力、計画力など、幅広いマネジメント能力が求められ、それらを習得できることが期待される。現在、社会から求められる人材と合致する点も数多い。本センターではこのような学習形態を実施し、学内展開できる事例をセンターニュース等通して、紹介していく。
(文責:教育支援システム研究部門 山田政寛)

○●○ アカンサスFDをご活用ください ○●○

ポータル内のアカンサスFDのコーナーには、授業内容・方法改善に役立つ諸種の情報を掲載しています。今回紹介したプロジェクト学習の実施にも有効活用できる情報も掲載しています。他にもカリキュラム関係、TA活用、制度面に関するものなど幅広く情報を蓄積しております。
アカンサスポータルにログインして頂きまして、アカンサスポータルの時間割内にある、「その他情報」の「時間割」リンクをクリックしていただきまして、「アカンサスFD」をクリックしていただきますと、本センターが蓄積しましたFDに関する情報をご覧いただけます。