【No.365】
学習成果をどう評価するか

○●○学習成果をどう評価するか○●○
 7月29日付で、本学HPの「情報公開・教育情報の公開」に各学類のディプロマ・ポリシー(DP)、卒業時に達成されるべき学習成果、カリキュラム・ポリシー(CP)が公開された。これらは、本学の第2期中期計画に基づきカリキュラム検討委員会の下のCP・DP策定WGの主導で各学類が検討を重ねてきたものである。CP・DP策定WGから示されたスケジュールに沿って、各学類のDPに基づく卒業時に達成されるべき学習成果(Ability-based Learning Outcomes)とそれらの達成に寄与する授業科目との対応表である「カリキュラム・マップ」もまた公表に向けて準備が進められている。DP、学習成果、CP、カリキュラム・マップの公表は、本学の学士課程教育によって学生にどのような能力を身につけさせることができるかを在学生、社会に対して示すものである。平成23年4月の学校教育法および大学設置基準の改正において、卒業又は修了の認定基準など、教育情報の公開の義務化とともに、努力目標として示された「大学は,教育上の目的に応じ学生が修得すべき知識及び能力に関する情報を積極的に公表するよう努めるものとすること。その際,大学の教育力の向上の観点から,学生がどのようなカリキュラムに基づき,何を学ぶことができるのかという観点が明確になるよう留意すること」にも対応するものである。カリキュラム・マップの根拠は、各授業科目の教育内容、教育方法、授業形態、成績評価基準とカリキュラム・マップ上で対応付けられている学習成果との整合性が与える。今後は、公表されるカリキュラム・マップの根拠の妥当性を継続的に検証するための内部質保証システムの確立が求められる。教育方法、授業形態については、第2期中期計画【8-1】「授業の目的に応じて授業形態を多様化し、少人数教育やTAの活用を推進する」に基づいて、昨年度、授業形態の実態調査が教育改革部会によって行われた。(その調査結果は、教育改革部会の依頼により、アカンサスポータル内の当センターのコース、「アカンサスFD」(アクセス方法については本ニュース裏面をご覧ください。)に掲載している。) また、「学類のDPとDPのもとに列挙されている「学類の学習成果」に照らして、とくに授業形態の尺度となる演習・実習・実験・実技等の科目をさらに充実させる」が教育改革部会からFD委員会、教育企画会議において提案されている。
 カリキュラム・マップの妥当性に対する主要な根拠は、授業科目の学習目標の達成度評価の方法、つまり成績評価方法とカリキュラム・マップ上で対応付けられている卒業時に達成されるべき学習成果との整合性である。この点については、中期計画【10-1】、【13-1】に基づき、各授業科目の成績評価方法が学習成果の達成度の測定に適合しているかどうかを各教員が検証するとともに、各教育組織のFDとして課題を共有することが望まれる。卒業時に達成されるべき学習成果の達成度の評価として、授業科目での試験やレポートではなく、知識やスキルを問題解決に運用できる総合的な能力を測定する学士課程教育の成果としての卒業研究の評価が考えられる。本学の工学部では早くから卒業研究の評価について検討が行われている。当センターでも卒業研究の評価に関する調査研究を今年度の重点課題の一つとし、アメリカの大学での卒業研究に当たるcapstone courseの評価に関する情報収集に着手している。
 知識の獲得の測定は容易だが、批判的思考力、問題発見力、問題解決力など高次の思考力を学習成果として設定するとき、最終的なアウトプットである卒業研究を評価するのではなく、プロセス評価として授業科目で高次の思考力がどの程度身についたかを評価することについては、そのような能力を測定可能な要素に分割できるかどうかなど評価の実施可能性についても議論がある。OECDが進めるAssessment of Higher Education Learning Outcomes(AHELO)でも、分析的推理、批判的思考、問題解決などをジェネリックスキル(汎用的技能)と定義して、それらの能力の評価方法について検討されている。 
本学が昨年度採択された就業力GPに関連する取組の一つとして、今年度から開設されている共通教育特設プログラムの中に新たなテーマ「キャリア形成(仮称)」を設け、ここに新規および既存の関連する共通教育科目をパッケージ化することについてWGを組織して検討が始まろうとしている。この動きを受けて当センターにおいても共通教育科目の開発に着手している。筆者は、新規のテーマ別科目(ゼミナール)「論理的思考と科学技術社会問題」について現在検討を進めている。人間社会学域の学域共通科目「クリティカル・シンキング」を参考にして、推論の妥当性の分析や根拠の前提の同定などを教科書[1]に沿ってトレーニングを行う。その上で、原子力発電を含むエネルギー問題、遺伝子組み換え作物の安全性の問題、抗がん剤の効用の問題など、新聞や雑誌などから賛否両論の豊富な一般市民向けの資料を入手できる問題を取り上げ、科学的な事実の理解やデータの収集などの授業時間外の学習に基づき、賛否両論の推論の妥当性の分析と独自の結論生成、新たな疑問に基づく問題発見などを討論形式で行う。このような学習によって、批判的思考力、問題発見力、問題解決力、コミュニケーションスキルを身につけることを目標とする。
このような高次の思考力が身についたかどうかをいかに測定すればよいのであろうか?上述したAHELOでもこの点を問題にしている。また、各専門分野で養成した思考力を他の領域に転移させることができるかどうかも問われる。AHELOがモデルとする非営利団体CAE(Council for Aid to
Education)によって作成されたCLA(The Collegiate Learning Assessent)のサンプル問題[2]を参考のため以下に紹介する。「あなたは、電気精密機器やナビゲーション装置メーカーであるダイナミック社の社長であるパット・ウイリアムズにアドバイスを行います。ダイナミック社販売部のメンバーであるサリー・エバンスは、ダイナミック社がスイフトエアー235という小型の自社用飛行機を買うことを推奨していました。彼女や他の販売部のメンバーは、顧客回りの際にそれを使うつもりです。パットがまさにスイフトエアー235購入の許可を出そうとしたとき、スイフトエアー235が巻き込まれた事故が起きました。 以下の資料に基づき問題に答えなさい。 (資料:1.事故についての新聞記事、2.社内通信記録、3.スイフトエアー235の性能表、4.スイフトエアー235と類似の飛行機を比べた雑誌記事からの抜粋、5.スイフトエアー180と235の写真と説明書) 問題1.スイフトエアー235の羽の形態がさらに飛行中の爆発を引き起こすという主張を支持する、あるいは否定するのに利用可能なデータを示しなさい。 問題2.あなたの結論の根拠は何か。 問題3.事故を引き起こした他の要因は何か、またそれは考慮に入れられるべきか。 問題4.ダイナミック社が飛行機を購入すべきかどうかについて、あなたが事前に勧告することは何か、またその勧告は何を論拠にしているか。」
批判的思考力、問題発見力、問題解決力など社会で求められる能力をいかに養成し、学習成果をいかに測定するかを各専門分野の内容に沿ってFDとして検討することが望まれる。
(文責 大学教育研究開発部門 西山宣昭)

[1]「論理のスキルアップ-実践クリティカル・リーズニング入門」 アン・トムソン(著)斉藤、小口(訳)春秋社(2008年)
[2]「批判的思考力とその育成」(近刊予定)第6章「批判的思考の測定 どのように測定し評価できるか」平山るみ、楠見孝(著)

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