【No.362】
東アジア地域の大学間交流に関わって

○●○ 第5回カリキュラム研究会のご案内 ○●○
日時:7月12日(火)10時30分~12時
場所:角間キャンパス総合教育1号館2階大会議室
テーマ:批判的思考力を養う共通教育科目の開発
報告者:西山宣昭、山田政寛(大学教育開発・支援センター)
趣旨:教育の質保証に向けた動きの中で、学士力としての批判的思考力をいかに学生に身につけさせるかについて活発な議論が行われている。根拠と結論の明確化、論証の検証、仮説の推論、推論の検証、仮説検証を行う批判的思考力は、研究能力としてばかりでなく学士力、社会人基礎力、就業力として重視される。本研究会では、本学で開講されている授業科目、他大学の事例を参考にして、批判的思考力を養うための教育方法と教材について議論するとともに、新規の共通教育科目の開発に向けた検討状況について報告する。各専門分野の授業科目等で批判的思考力の養成を意図した様々な取組が行われていると考えられるが、そのような取組を行う多くの教員の参加と進めている授業設計に対するご意見をお願いしたい。

○●○ 第10回学生・学習支援研究会「プレゼンテーション・セミナー」
開催のお知らせ ○●○ 
主催:大学教育開発・支援センター、共催:金沢大学附属図書館
日時:7月20日(水)14時45分~16時15分
場所:中央図書館3階 オープンスタジオ
講師:山田政寛(大学教育開発・支援センター)
対象:学生
趣旨:プレゼンテーションのコツを教えます。
※授業受講者やゼミ学生などに、是非参加を促して下さい。予約不要です。

○●○ 東アジア地域の大学間交流に関わって ○●○
 平成21年10月の日中韓サミットにおいて質の保証を伴った大学間交流の推進が取り上げられ、具体的にASEANへの拡張も視野に入れた日中韓を中心とする「キャンパス・アジア」構想として、構想の早期実現に向けこの間、3国の大学間で単位互換や(学生)交流プログラムなどを行うための有識者会議(日中韓大学間交流・連携推進会議)および専門家による各種ワーキングが開催されてきた。昨年末から今年にかけては、質の保証を伴ったガイドライン、さらに3国間の大学におけるパイロットプログラム等の枠組み(案)等が策定され、ガイドライン合意やプログラムの募集開始に向けた準備も進んでいるようである。
大学の質保証システムに関わるものであるからこそ、基礎資料の収集と論点整理が必要となるが、ここでは関連する研究報告書や学会(直近では、参加した第47回日本比較教育学会大会、6月25.26日・早稲田大学開催)の報告内容等に基づき簡単に紹介しつつ、アジア域内における現状と今後の課題について少し探っていきたい。
アジア地域の高等教育制度や各機関の教育実施状況は、歴史的経緯によりそれぞれ欧米の影響を受けていることに加え、各国独自の文化等にもとづき独自化(土着化)のプロセスを辿っている(特に近年はその傾向が強い)ため、欧米の高等教育状況に比べても、多くの異なる事例が存在しているといえる。しかし、各国の特徴を比較するとある指標では共通の傾向を見いだせる部分もかなり見い出せるので、その共通部分を可能な限り活用し、各国が最小限の制度改革や法改正を行うことで、ASEANにおけるACTS (ASEAN Credit Transfer System)やヨーロッパのECTS(欧州単位互換制度)を応用する形で浸透性のある枠組みを構築することが可能であるといえる。
一方でアジア諸国が抱える課題はやはり大きい。以下に主要な項目についてみていく。
① 単位と学習時間
単位互換をスムーズに行うために、アジアの高等教育で1単位につき学習時間をどのように考え、
また換算するのか協議する必要がある。講義時間によるのか実際の学生の学習時間によるのか、それを本当に行っているか、相互に確認できるようなチェック方法をどのように作っていくが重要になってこよう。
② 成績評価
成績評価の方法は、国家間はもちろん大学間でも異なっているので、最も難しい問題である。評価方法(種類)やそれらの点数配分等をシラバス等で説明していたり、さらに分布傾向を公開・(部局長等を中心に)チェックするところもあるが、結局授業を担当する教員が判断するものであるから評価基準を客観的に保証することが困難で、異なる機関で教員の成績評価結果について、その違いを理解することにはさらに困難が伴うであろう。またECTSでは相対的評価の使用を提唱しているということであるが、アジア地域では、プログラムや学年により絶対的評価と相対的評価の両方を使い分けているケースもある。以上のことから、絶対的評価を使う場合には、成績評価配分(割合)に一定のルールを作り公平性を保つことができるようなシステムを検討することも含めて、両方の評価方法の使用の可能性を残していくことも重要になってくる。
③ 学年歴
東京大学が秋入学導入の検討を始め、多くの大学がその行方を注視しているが、学年歴の違いは大学生交流にとって見落とすことのできない阻害要因になっているといえる(関連の調査では、中国や韓国、シンガポールなどの3月・9月パターンと、カンボジア、フィリピンなどの5ないし6月・11月パターンの2種類に分かれる)。雇用制度(時期)とも深く関連しているため、大幅な変更には困難が伴うのはいうまでもないが、学期期間に柔軟性をどれくらい持たせることができるか、あるいは短期の教育プログラムの開設(充実)および活用をどこまで行えるかという点で解決の一つの糸口がある。
④ 教育プログラムや大学情報の可視化
アジア域内の大学では、その教育内容を細かく公開していないところがまだまだ多い。また公開していても内容表示の方法や異なっていることもあり、教育情報の公開について、国家間大学間で共通項目を検討する必要が出てこよう。

上記以外の項目も含めて、大学に所属する教職員・学生が互いの共通点と相違点を可能な限り理解し、また質保証を中心に、相互に信頼関係を形成できるよう努めていかなければならない。
(文責:評価システム研究部門 渡辺達雄)