【No.359】
ブレンディッド・ラーニング事始め その1-学生を自問自答へと誘うために-

○●○ブレンディッド・ラーニング事始め その1-学生を自問自答へと誘うために-○●○
 これまでも紹介してきた、中央教育審議会答申『学士課程教育の構築に向けて』(平成20年12月24日)では、「教育方法の改善」と題する項目で、「教育内容以上に,教育方法の改善」が重要であると指摘していた。「学士力は,課題探求や問題解決等の諸能力を中核としている。学生にそれを達成させるようにするには,既存の知識の一方向的な伝達だけでなく,討論を含む双方向型の授業を行うことや,学生が自ら研究に準ずる能動的な活動に参加する機会を設けることが不可欠である」との認識のもと、教育方法改善の方向性として、「双方向性を確保した教育システムが欠かせない」とし、大学に期待される取組は、1「学習の動機付けを図りつつ,双方向型の学習を展開するため,講義そのものを魅力あるものにするとともに,体験活動を含む多様な教育方法を積極的に取り入れる」、2「TA等を積極的に活用して,双方向型の学習や少人数指導を推進する」ことと並んで3「教育研究上の目的等に即して情報通信技術を積極的に取り入れ,教育方法の改善を図る」ことを提案した。
3については具体的に、「的確な授業設計を行った上で,例えば,以下のような取組について検討する」として、次の例を挙げた。①ビデオ・オン・デマンド・システム等,eラーニングの活用による遠隔教育、②学習管理システム(LMS: Learning Management System)を利用した事前・事後学習の推進、③教室の講義とeラーニングによる自習の組み合わせ,講義とインターネット上でのグループワークの組合せ(いわゆるブレンディッド型学習)の導入、および④携帯端末を活用した学生応答・理解度把握システム(いわゆるクリッカー技術)による双方向型授業の展開である。
 これらのうち、クリッカー技術の活用法について私はこのニュースでも取り上げ、学内外のFDセミナーや学会で報告してきた。今年5月の大学コンソーシアム石川のFDSDセミナーでも報告し、県内の高等教育機関から高い関心を集めた。『文部科学教育通信』(ジアース教育新社)での関連シリーズ連載も今月から始まり、各大学での先進的なクリッカー活用が紹介されることになっている。本学でも複数の学類で実践されており、授業改善に活かされることが期待できる。
 それでは、残る三つの取り組みについてはどうか。現在私が取り組んでいるのは、標題のブレンディッド・ラーニングである。その前提となっているのが、ポータルそして、LMSの存在である。
 本学は、国立大学の中ではいち早く、大学ポータルの整備に取り組んできた。その中心となってきた全学組織であるFD・ICT教育推進室の実務委員長は一昨年度まで当センターの堀井教授が務め、現在は山田准教授が重責を担っている。大学憲章に「学生の個性と学ぶ権利を尊重し,自学自習を基本とする」と謳う本学では、ノートパソコンを必携とし、学内無線ラン環境を整えてきた。そして学内専用「アカンサスポータル」(名称は、大学校章のモチーフとなっているアカンサス(葉あざみ)に由来)において、学内の種々の情報提供をするだけでなく、すべての授業科目を登録したLMSを、学生の学習環境として用意している。今期の中期計画には、「アカンサスポータル(学務や学習に関する情報を入手できる本学独自のワンストップサービスのサイト)を拡充することにより,多種の教育と多様な学生に対して,ICTの特長を生かした教育サービスを提供する」と規定している。
 さて、私が課題として長く取り組んできたのは、100人を超える多人数授業で学生たちに発言してもらうことである。10年近く前に学生が企画した授業を開講する取り組みを行ったのも、学生たちの関心の高いテーマであれば、大講義室でも発言したくなるだろうと考えてのことであった。そうした科目の一つに「生と死を見つめて」がある。コーディネーターは医薬保健学系の細見博志教授(一昨年、アルバート・R・ジョンセンの名著『生命倫理学の誕生』、全600頁以上の翻訳を上梓された)である。この科目では今年、230名の受講登録者(ほとんどが1年生)があったが、私は、1コマ90分のうち、30分ほどを、6名ずつのグループワークとその後の意見発表にあてた。受講生は期待にたがわず、4名が相次いで発言し、その場で指名した8名も、理由をつけた賛否の発言を見事に行ってくれた。教室授業でのグループワークと受講生の発言は、テーマ次第だが、それほど難しくはない。
 そして私は、ここ数年、学生の意見発表について、教室以外に、ポータルの会議室という新しいチャンネルを加えようと取り組んできた。従来はミニッツペーパーを用いて受講生の疑問を掘り起し、それを次回の授業冒頭で紹介してきたが、今では、24時間アクセス可能なポータル会議室上に授業データとともに掲載している。受講生たちは、授業終了直後から、授業振り返りを行える。会議室には、次々と意見が積み重なっていく。その中から、次の授業の開始時に教員が紹介すべき意見も得られる。
 ポータル上でも、教員は意見交換の最初のきっかけを作りさえすればいい。学生たちは教室内と同様、興味のある話題であれば、受講生集団として自問自答を自然に行うようになる。匿名が許されない会議室では、より説得力ある書き込みをしようとして、自ら必要な本を読み、引用を試みるようになる。限られた授業時間という制約の中ではなく、じっくりと考えて意見を書き込む。こうしたことが集団として習慣になれば、自学自習を行う、研究者マインドを持った学生たちが、切磋琢磨しあいつつ、次々と出てくることになるのである。     (文責:教育支援システム研究部門 青野 透)

●○●大学コンソーシアム石川2011年度第2回FDSDセミナー(6月24日開催)のご案内●○●
 大学コンソーシアム石川主催のFDSDセミナーが以下のとおり開催されます。東日本大震災により、各高等教育機関におけるリスク管理が喫緊の課題となっています。奮ってご参加ください。
時:6月24日(金)18:00~20:00  所:石川県政記念しいのき迎賓館3階 セミナールームB
テーマ:「高等教育機関の風評リスク対策とコミュニケーション戦略」
講 師:宇於崎 裕美 氏 (有限会社エンカツ社 代表取締役社長) 著書『不祥事が起こってしまった!-企業ブランド価値を守るクライシス・コミュニケーション』経営書院 2007年
内 容:高等教育機関のリスク,それは組織的な問題から起きたものか,それとも個人が引き起こしたものなのか。公益法人の高等教育機関が担う社会的責任や役割・義務は大きく,たとえ教員,職員,学生といった個人が起こした問題であっても「大学の信用・信頼」に何らかの影響は避けられない。事件,事故,自然災害、犯罪も含めそれらは時と場所を選ばずに起こる可能性はどこにでもだれにでもある。そのとき大学はどう対応すべきか。今回のセミナーでは,国内外の企業,非営利団体,大学・大学院等に対し、広報戦略とリスクマネジメントについての各種コンサルテーションを行っておられる有限会社エンカツ社代表取締役社長,宇於崎裕美氏をお迎えして、豊富なリスクマネジメントの事例から、高等教育機関のリスクとは何か,またリスクがクライシスになってしまったとき、組織として、あるいは組織人としてどのように対応すべきかなどあらためて考察したい。
参加のお申込み:次の要領で、メールでお申し込みください
件名「第2回FDSDセミナー申込」として、①機関名 ②所属 ③氏名をご記入のうえ
Mail:oono@ucon-i.jp(担当:大野) までご送信願います。※開催日の前日まで受付いたします。