【No.356】
CP・DP策定作業(山口大学の事例)

○●○CP・DP策定作業(山口大学の事例)○●○

 大学教育開発・支援センターによるCP・DP策定WG支援活動の一環として、2011年3月22日に愛媛大学、翌23日に山口大学を訪問し、両大学におけるCP・DP策定作業について情報収集を行った。前回担当の351号(愛媛大学の事例)に続き、今回は、山口大学での取り組みについて紹介させていただく[i]

 山口大学でのカリキュラムフローチャート(以下CF)作成は、カリキュラムマップ(以下CUM)改訂作業と並行で進められ約2年かかっている。これらの作業により、学内的に専門科目と共通教育科目を合体させた「学士課程」教育への意識を高める狙いがある。

 

CUM、CF作成作業

 平成21、22年度に大学教育センタースタッフがFDとして全学部を回り、CUM作成支援活動を実施。当初は手作業で、全ての授業科目を付箋に記入し、大きな模造紙に貼り付けていく作業から始めた。工学部機械工学科(JABEE認定)のCUMをモデルにして作業にかかったが、理工系はこのモデルをすんなりと受け入れられたが、文系学部で同様のモデルを作成するのは難しかったので、文系学部のCUMは愛媛大学を参考にした。CUM作成作業を、「教員がカリキュラム全体を理解し、授業目標設定を中心として、自分の授業の位置を考える作業」と位置付け、カリキュラム全体を外部の人、学生にわかりやすく提示することを目指した。

 各学部を回っている中で、徐々に作業目標が絞り込まれ、最終的には、「学生に対してカリキュラム全体像をA4一枚で示す」ことを目標とした。このA4一枚のCF作成にあたり、GP(Graduation Policy)を全て明記する、授業と授業群を関係づける、関係性を示す矢印は主要なつながりのみにする、というポイントが示された。これらの目標、ポイントに従い、CUMから項目を転写してCFを作成する作業を進めたが、上で述べたように、理工系学部では、工学部機械工学科をモデルとして作成作業が進んだが、文系では少し方法を変更し、CUMでの◎(GP達成のために、特に重要な事項)を拾い上げてCFへ転写することとした。繰り返しになるが、文系、理系関わらず、「GPの周知徹底」、「A4一枚のわかりやすい表作成」の2点だけを全学的なルールとして作業を進めていくこととなった。その結果、完成した人文学部言語文化学科英語学・英米文学コースにおけるCFでは、科目については、科目群(2~4年で履修する)で示されている。しかし、順序性(望ましい履修順序)がわかるように矢印がつけられている。

 CUM、CF作成の具体的な作業は、学科やコース担当者(教務委員やコース委員)が行っているが、実際のところ、全教員が関わっていないと出来ない作業であるため、科目群の矢印などの確認は全教員で行い、表などへの取りまとめはコース委員担当となっている。

 

教員の意識改革

 上記作業進行への支援として、大学教育センターとして、「教育は組織で行い。研究は個人(場合によっては組織もある)で行う」という考え方を学部教員に対して繰り返し説明してきた。その結果、各教員の教育に関する考え方も、従来の「単位さえ揃えたら卒業できる」という考えから、「コースとして教育が構造化されている」というようにかなり変わってきた。具体的には、4年進級時にコース変更を希望した学生にどう対応すればいいのかを議論するのが大きなきっかけとなった。

 

検証体制

 これらの作業結果に対する外部(学内他学部など)からのコメント、評価については、これからの作業である。ただ、現時点での外部の関与としては、「目標達成型大学教育改善プログラム」で雇用しているコーディネーターの先生(元高校校長)にわかりやすいGPを作る際のチェックポイントの提示をお願いしている。また、GP、CUM、CF作成に関するPDCAサイクルとしては、GPの達成度を記入し、卒後を見据えて学生に見せるようなポートフォリオの導入を考えている。

 

成績評価

成績評価については、成績分布共有システムにより全教員が全科目の成績分布を見ること(学内限定)が出来るようにしている。学生アンケートなどから、同じ科目名で成績分布が異なるのは不公平との声が出た場合、その声を教員にフィードバックして、成績分布を見て貰うようにした。また、各学部には、この共有システムをもとに翌年度のFD計画を立てるように依頼しており、改善につながる環境は整備されている。

 

共通教育との関わり

 平成18年度作業で、教養GPに関わる共通教育科目、専門GPに関わる学部専門科目のCUMを作成し、平成22年度には、専門GPに関わる共通教育科目、教養GPに関わる学部専門科目についてのCUM作成作業を行っている。それにより、共通教育科目と専門科目を一体化したCUMを作り、それをCFへ流し込んでいる。これらの作業のためには、教養のGPをきちんと考えないと駄目であり、山口大学では、教養GPを考えるとき健康科学などの項目も立てている。これらの作業の背景として、教育担当副学長理事の「学士課程教育」の責任は学部にある(教養、専門合わせて学部に責任がある)との発言がある。この発言は、大学におけるカリキュラム全体の再編にもつながる可能性があり、場合によっては、学部の視点から共通教育絞り込みを行うことや、また、学部が作ったCUM、CFで「◎=GP達成のために、特に重要な事項、○=GP達成のために、重要な事項」とならない共通教育科目は不必要と言われる可能性もある。

 

 以上、山口大学での事例について紹介させていただいた。CUM、CF作成作業としては金沢大学で行っているものと大きな違いは無い。しかし、「学士課程」への意識、およびそれに関連して共通教育科目のCUM、CF作成、検証体制検討等の部分は参考になると考えられる。特に、共通教育科目まで含めての「学士課程」教育への責任という考え方は、今後より一般的になっていくものと思われる。金沢大学においても、現在進められているCP・DP策定WGでの作業をさらに発展させ、「学士課程」教育という意識を教育課程で具体化する方向へ進んでいかなければならないのではないだろうか。(文責 評価システム研究部門 堀井祐介)

 



[i] 山口大学では、 一般的にDiploma Policy に相当するものをGraduation Policyと名付け、これに関連する活動で「目標達成型大学教育改善プログラム」というタイトルで平成20年度「質の高い大学教育推進プログラム(教育GP)」に採択されている。

http://www.epc.yamaguchi-u.ac.jp/gp.html

http://www.epc.yamaguchi-u.ac.jp/GoodPractice2008.html

山口大学でのGP策定は、基本はコース単位であるが、人文学部として、学位名称は一つなので学部、学科レベルでのすりあわせは必要と考えており、現在作業中である。