【No.352】
国際シンポジウム「学士課程教育の質保証と教育内容の革新」参加報告

○●○ 第4回カリキュラム研究会のご案内 ○●○
日時:2011年5月10日(火)10時30分~12時
場所:角間キャンパス総合教育1号館2階大会議室
テーマ:「共通教育特設プログラム・「健康」の枠組みについて考える」
趣旨:教養教育のコア・カリキュラム化への起点として新設された共通教育特設プログラムでは、「環境・ESDリテラシー」や「英語国際コ ミュニケーション」等に関連する新設・既存の共通教育科目がパッケージ化され本年度より実施されている。新たな教養コアのテーマとして 「健康と自己管理」がカリキュラム検討委員会において提案されており、本年度共通教育委員会の下にWGを組織し、このテーマに関する共通教育科目のパッケージについて検討される。これは、第2期中期計画23年度計画に基づくものである。本研究会は共通教育委員会の下のWGと合同で開催し、教養コアとしての「健康」の枠組みをいかに設定すべきかについてWG委員、さらに共通教育に関わる多くの教員の参加のもとに議論したい。

○●○ 広島大学教育GP(新世代到達目標型教育プログラムの構築)国際シンポジウム
「学士課程教育の質保証と教育内容の革新」参加報告 ○●○
学校教育法・大学設置基準改正により、大学は「学生が修得すべき知識及び能力に関する情報」をはじめ修了(卒業)に関わる基準などを明確化しかつ公開することを求められ、進度の差こそあるものの国内の各大学で作業が進められているところである(関連記事は350、351号などに掲載)。デイプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシーをすでに大学WEBもしくは大学案内等に掲載しているところも複数見受けられる。これらに関連して、平成23年3月3日から4日にかけ、広島国際会議場で開催された広島大学教育GP(新世代到達目標型教育プログラムの構築)国際シンポジウム「学士課程教育の質保証と教育内容の革新」で報告された事例は、参照すべき内容がいくつか含まれていたので、ここで紹介したい。
Cynthia Schrager氏(UCバークレー校教育計画・施設担当副学長補佐)の「カリフォルニア大学バークレー校における学修を重視した学士課程教育の教育評価の文化の構築」では、世界最高レベルの研究大学の一つであるUCバークレーにおいて、アカデミックプログラム評価(academic program review)が研究領域および大学院プログラムに限定されていた中で、様々な要因(教育の説明責任重視から、例えばアメリカのアクレディテーションのプロセスに変化が現れたように)から学士課程教育の質の保証が重視され、そのための措置が漸次推し進められていることが示された。
 つまり、①2005年に研究領域と併せ、学士課程教育を包括する形でアカデミックプログラム評価を全面的に刷新し、評価の監督部門を当大学大学院部から教育担当副学長に移行したこと、②2007年に「学士課程教育計画」(Undergraduate student learning initiative)を始め、そこでは各学部に対し、各主専攻プログラムにおける学修到達目標を示し、カリキュラムをマッピング化させ、学生がどれほどそうした目標に到達したかを評価する計画を詳細に説明するよう求めている。学修到達目標は、アカデミックプログラム評価での自己点検における手続きの一つとして組み込まれており、外部の評価者そして学内の学術評議会で議論される対象となっている。近年では、学士課程教育計画への参加学部は増加し95%の学部が主専攻の学習到達目標を策定し、また4分の1が学修評価の取り組みに積極的に参加している状況で、学修評価の利用をさらに普及させるために、少額の学内補助金を出すなどの支援を行って、各学部におけるプログラム評価において、学生の学修のエビデンスをしっかり組み込むよう働きかけている。伝統的な研究大学にあって教員文化を変えるのは困難を伴うが(実際、卒業標準テスト(代表的なものにCLA)といったタイプの学修アセスメントの実施には抵抗する可能性が高い)異なるアプローチから、すでに教員が授業ないしカリキュラムの中で行う評価をより意識的に行うべく議論を続けていかなければならないと述べていた。
 小澤孝一郎氏 (広島大学学士課程会議議長)による「新世代到達目標型教育プログラムの構築」 報告では、平成18年より広島大学で導入された当該プログラム(通称「HiPROSPECTS」)について、育成する知識・技能が明確な到達目標として各教育プログラムで明示され、その目標に向けて授業科目が体系的に(再)配置され、結果約6000もの授業科目が、66の主専攻プログラム、52の副専攻プログラム、11の特定プログラムに編成(平成22年時点)されていること(詳細は、http://www.hiroshima-u.ac.jp/prog/hiprospects/p_22340a.htmlで参照のこと)、そしてこれにより卒業生の質の確保あるいは教育の質の向上を図っている。
 またその特徴として、①初年次教育において、分野をこえて混成グループで共通テーマについて討論するPBL教育を実施して、大学での学びと併せ基礎的な問題発見能力や調整能力を身につけさせることを目指していること、②上記のプログラムにあって、教養教育をしっかり位置づけながら、教養と専門を融合させた到達(学習)目標を明示すること、そしてそれにより入学から卒業に至るまでモチベーションを継続できるよう図っていること、③学生によるプログラム評価アンケートおよび教員ポートフオリオを導入し、すでに利用している評価ツールと組み合わせて、教育改善のシステム(PDCAサイクル)を構築しようとしているところにある。
 国内外の2つの事例を紹介したが、卒業(修了)時に達成すべき学習成果の達成度を測定する方法やさらにはその妥当性についての検証という点に至ると、必ずしも大学自体として明快に提示し得ていないように思われる。先進的であると目される大学でも、まだ模索段階とみられる。これらの大学も含めて、今後も情報収集に努めていきたい。                        (文責:評価システム研究部門 渡辺達雄)

○●○ 新着資料のお知らせ ○●○
大学教育開発・支援センターに、全国の大学・大学教育センター、専門団体等から各種報告書が届いております。特色GPや特別教育研究経費によるプログラムの成果をまとめた報告も含まれております。資料は、図書室(総合教育1号館6階613号室。センター共同研究室向かい)に所蔵しております。ご関心のあるもの、参照したいものがございましたら、お貸しすることができますので、ご連絡いただければ幸いです。

・ 神代香代編『大学における学生支援担当教員の専門性向上方策のための調査研究:効果的なSDプログラムの確立』SDプログラム開発研究会、2010年1月
・ 蓮池通子・石野麻衣子・白澤麻由美『聴覚障害学生サポートネットワークの構築をめざして―アメリカ視察「高度専門領域に対応した手話通訳の養成Ⅱ」報告書』筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター、2010年6月
・ 『2010年度数学IRシンポジウム 島根大学における学生調査・数学データから探る教育の質保証・向上の方向性 報告書』島根大学教育開発センター、2011年3月
・ 名古屋SD研究会『教務のQ&A』名古屋大学高等教育研究センター、2011年3月
・ 『ティップス先生からの7つの提案 <大学院生編> 』名古屋大学高等教育研究センター、2011年3月
・ 『平成22年度特別経費・教育関係共同利用拠点報告書 FDネットワークの展開と大学教育改革の方向性を問う』(京都大学高等教育叢書30)京都大学高等教育研究開発推進センター、2011年3月
・ 『私立大学経営システム 現状と課題-財務並びに職員アンケート調査を踏まえて:第43回公開研究会から』(私学高等教育研究所シリーズ41)日本私立大学協会附置 私学高等教育研究所、2011年3月
・ 宮本陽一郎『TAとともに作る授業:「筑波大学と嘉納治五郎のレガシー」「青木彰記念講座」ジャーナリズムとメディアの現在』筑波大学教養教育機構、2011年3月
・ 平成20年度文部科学省 質の高い大学教育推進プログラム採択『筑波スタンダードに基づく教養教育の再構築~世界水準の教養教育を目指す全学的取組 最終報告』筑波大学教養教育機構、2011年3月
・ 『SDガイドブック』財団法人大学コンソーシアム京都SD(スタッフ・ディベロップメント)研修委員会、2010年3月
・ 『2009年度第1回短期大学合同FDシンポジウム報告書 短期大学における導入教育・リメディアル教育の問題』大学コンソーシアム石川、2011年3月
・ 『大学コンソーシアム石川SDフォーラム2010報告書 大学職員への期待ー自律性と組織力』大学コンソーシアム石川、2011年3月