【No.348】
アクティブ・ラーニング事始め その2 多人数授業をどうするか

東北地方太平洋沖地震により被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。とくに当該地域の各高等教育機関におかれましては、学生の安否情報確認に始まり、新年度の学習・研究環境の整備に向けて多大のご苦労をされていることと存じます。一日も早い復旧を祈っております。

●○● アクティブ・ラーニング事始め その2 多人数授業をどうするか ●○●
 3月12日、名古屋大学で、大学教育改革フォーラムin東海2011(主催:FD・SDコンソーシアム名古屋等)が開催された。基調講演は「学生の学びを支援する大学改革」と題して、小笠原正明・筑波大学特任教授(大学教育学会長)によるものであった。小笠原教授は、欧米の高等教育事情にも詳しく、学生参加型授業をいち早く実践され、その成果を多くの論文、セミナー講演等で披瀝されてこられた。今回は、多人数授業におけるアクティブ・ラーニングが主たるテーマであった。階段教室・固定机教室でもグループワークは可能であること、TAの有効な活用法など、特にこれからアクティブ・ラーニングを試みようと思う教員には、貴重なヒントがちりばめられた内容であったが、私が注目したのは、とりわけそれが多人数授業を対象とした授業実践報告であるということであった。
 授業の内容を改善する、方法を改善する、そのために研究するというとき、教員は目の前の授業を思い浮かべるしかない。例えば、私の場合、2010年度に担当した科目は、共通教育科目として、「日本国憲法概説」、「医事法入門」、「生と死を見つめて」、「ジェンダー学入門」、「学生と大学システム」、「初学者発展ゼミ」、法学部専門科目として「法思想史」、薬学部専門科目として「医療・生命倫理」、人間社会学域共通科目として「大学・学問論」、および、大学院社会環境研究科の「基礎法特論 法思想と現代的課題」、「法思想史文献研究」、「医療と法思想」である(オムニバス科目、通年科目を含む)。「日本国憲法概説」は本学教養部着任以来、毎年担当してきたが、毎週1回15週講義の通常授業以外に、今年度初めて毎週2回(7.5週で終了)授業も担当した。「医事法入門」は、本学の授業を双方向遠隔授業システムを用いて配信し、福井大学医学部の学生も同時に受講する科目であった。この他、金沢医科大学大学院医学研究科で「医事法学」(主たる受講生は現役医師)を担当した。授業規模は様々で、受講生は十数名から二百数十名であった(受講生ゼロの大学院科目もあった)。私の場合は、これらの科目で何を自ら改善しなければならないと考えるのか、また、授業がない今の期間に、新年度に向けてどんなことをしたら「改善のための研究になるのか」が個人的課題となる。
 おそらく、その授業を受けたくて登録している受講生ばかりの専門演習や、逆に100人以上の授業であってオムニバス形式で1回だけの担当で学生に学習動機があろうがなかろうかに関わりなく一方的に伝えるだけで済ませてしまえる講義しか担当していなければ、そもそも、アクティブ・ラーニングの発想で授業を改善したいとのモチベーションも湧かないだろう。学生による授業評価を公開したり教員評価に直結するようなことをしない限り、むりやり教育改善意欲を創るなどできない。
 私のように、共通教育から大学院まで、数名から数百名まで、文系専門から理系専門まで、種々の授業を担当していると、内容についても方法についても反省することが多い。だが、少人数授業では概して、学生との応答関係さえとれていれば、次はどうすればいいということが見えてくる。信頼関係が曲がりなりも成立しているからである。だが、悩みの種は、いつの年でも、多人数授業である。
『大学時報』(日本私立大学連盟)編集部から依頼を受けて私は、同336号2011年1月小特集「クリッカーの活用」に、「クリッカーから始まる双方向多人数授業-学生が考え発言するアクティブ・ラーニングへ」という拙稿を掲載した。その際に編集部から示された企画の狙いは、<大人数講義形式の授業においては、学生の私語、遅刻、途中退席が目立つなど、授業運営に困難をきたす場合もみられる><学生に対して、大学や教員は、どのような刺激を与え、主体的に学ぼうとする姿勢や態度を持たせるか、いま極めて重要な課題となっている><そこでクリッカーに注目した>とするものであった。幸い私の授業は私語などはないが、それでもこうした授業になる不安は常にある。
FDは、教員の授業への現にある不安を減らすために行うのでなければ、誰も耳を傾けてくれない。今、最も重要なFDテーマは間違いなく、多人数授業についての教員の悩みに答えることである。少人数授業の改善は教員1人でもできることが多い。だが、多人数教室の授業が上記の状況になった場合に、これを打開することは容易ではない。なかなか上手くいかない多人数授業について、実践に裏打ちされた授業研究報告が、いろんな分野のいろんな科目の担当者から提供され集積され分析されて初めて、活路は見えてくる。大学設置基準が「組織的な研修と研究」を義務づけた意味はそこにある。
かつて、中央教育審議会大学分科会大学教育部会(第9回)(平成18年12月1日)は、「学士課程教育の現状と課題(重要な論点の例)」と題する資料で、教育方法についての三つの見直しのポイントを示し、その中で、「知識観・学力観の転換、学習成果(Learning Outcome)の重視などを踏まえ、教育方法の見直しが必要となるのではないか(少人数指導、学生の主体的な学習を引き出す教授法(アクティブ・ラーニング)の推進、eラーニング等のITを活用した教育の推進、様々な体験活動(奉仕体験、サービス・ラーニング、フィールドワーク、海外体験学習)など)」と指摘していた。多人数授業を少人数に代えることによって解決する問題は多い。だが、多人数授業は存在し続ける。だからこそ、多人数授業におけるアクティブ・ラーニングの推進が、小笠原教授などの実践報告が、貴重なのである(筑波大学の実践報告例となった授業の内容は、『現代人のための科学』(仮)として筑波大学出版会より本年7月刊行予定)。         (文責:教育支援システム研究部門 青野 透)

○●○第3回FD研究会-第3回教員アンケート調査結果の報告-開催のお知らせ○●○
 金沢大学は『金沢大学憲章』において、「教育改善のために教員が組織的に取り組むFD活動を推進して,専門知識と課題探求能力,さらには国際感覚と倫理観を有する人間性豊かな人材を育成する」ことを宣言している。また、周知のように、大学設置基準、大学院設置基準、および専門職大学院設置基準によって全ての課程で、「授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究」が法的に義務づけられている。当センターでは、本学において必要なFD(授業内容・方法の改善のための研修・研究)とは何かを検討するため、専任の全教員に対して、「第3回授業改善とFDに関するアンケート」を実施した。今回は授業改善に必要な知識や学内外の組織に対する認識が教員の経験年数や所属でどのように違いがあるかを検討するための設問を中心に行った。本年度実施した教員アンケートの結果について概要・要点について報告を行う。
企画者:山田政寛(大学教育開発・支援センター)
日時:2011年3月29日(火)16時30分~18時00分
場所:角間キャンパス 総合教育1号館2階大会議室
発表者:山田政寛(大学教育開発・支援センター)