【No.345】
デンマークの教育プログラム評価について

○●○デンマークの教育プログラム評価について○●○

 「専門分野別教育プログラム認定・評価導入への実証的研究」(平成22年度科学研究費補助金(基盤(C)、課題番号22530912))により、今年度から3年の計画で、デンマークにおける教育プログラム認定・評価についての調査研究を行っている。その目的は、国際的な高等教育質保証の観点から、日本でも検討が進められている専門分野別教育プログラム認定・評価について、既に実施している欧米の事例を対象とした実証的研究を行い、日本での導入に有益な示唆を見いだすことである。今年度は、欧州での例としてデンマークにおける教育プログラム評価についての調査研究を進めている。

 現在、デンマークでは大学に対する機関別認証評価は存在せず、大学が提供する教育プログラムに対するアクレディテーションのみが行われている。大学法(universitetsloven)によれば、大学が提供する教育プログラムについては、大学に決定権はあるが、その教育プログラムに対して、全国組織であるアクレディテーション委員会による承認が必要であると定められている。また、アクレディテーション活動については、継続・高等教育プログラムアクレディテーション機関に関する法律(Lov om Akkrediteringsinstitutionen for vidergående uddannelser)により規定されている。これらの法律に従い、より具体的な活動はACE Denmark(http://acedenmark.dk/)が担っている。アクレディテーション委員会、ACE Denmarkの活動は、以前紹介させていただいた「欧州高等教育における質保証のための基準と指針(Standards and Guidelines for Quality Assurance in the European Higher Education Area)」に則り実施されており、また、ACE Denmarkは、ENQA(the European Association for Quality Assurance in Higher Education、欧州高等教育質保証ネットワーク)の正式メンバーでもある。

 ACE Denmarkが実施するアクレディテーションでは、教育プログラムの妥当性と質が、以下にあげる5つの決められた基準項目に合致しているかを調べ、アクレディテーション報告書を作成し、それに基づきアクレディテーション委員会が「可」、「条件付き可」、「否」の判断を下すことになっている。

基準1 労働市場における教育プログラムへの要求

基準項目1 教育プログラムに求められるもの

・教育機関は、教育プログラムと職業の関係を説明し、将来の卒業生となる顧客(入学者)を特定しなければならない。

・教育プログラムに需要があること、関係顧客や顧客グループを教育プログラム改善に関与していることを納得させ、同時に、その分野の同種の教育プログラムとの関係において、当該教育プログラムの特徴を説明しなければならない。

・教育機関は、その分野の同種の教育プログラム修了者(卒業生)の労働市場における状況について説明しなければならない。

現在提供されている教育プログラムのアクレディテーションに際しては、

・教育機関は、教育プログラムが、その妥当性と質について継続的に保証する観点から、顧客(入学者)、顧客グループ、卒業生との継続的対話の中で行われることを、文書で示さなければならない。

・教育機関は、就職率、失業率(非就職率)を示すことで、卒業生が関連する就職先を見つることについて文書で示さなければならない。

基準2 研究を基盤とした教育プログラムであるかどうか

基準項目2 教育プログラムは研究を基盤としたものであり、高いレベルでの活発な研究環境と密接なつながりを持つ

・教育プログラムは、当該専門分野における研究、場合によっては研究と実践の相互作用に根ざした知識、スキル、能力を学生に提供する。

・教育プログラムは、活発な研究活動を行う研究者によって作られる。

・学生は、広範囲にわたって活発な研究活動を行う研究者から学ぶ。

・教育プログラムは活発な研究環境と密接なつながりを持つ。

・教育プログラムの基礎となる研究環境は、高いレベルを備え、そのことは、関連する研究指標とともに明記される。

基準3 教育プログラムの専門性とレベルおよび内部質保証

基準項目3 教育プログラムの学習成果(learning outcome)に結びつく専門性と目的

・教育プログラムの学習成果(learning outcome)に結びつく目的、教育プログラムの名称、教育プログラム修了により得られる学位名称の間には関係がある。

・教育プログラムの学習成果(learning outcome)に結びつく目的は、デンマークの継続・高等教育プログラムの質保証枠組みにおける名称分類(学士課程、学士・修士一貫課程、修士)に適合している。

基準項目4 教育プログラムの構成

・教育プログラムは、学習成果(learning outcome)に結びつく目的、入学資格、試験形態を補強する形で構成される。

・教育は教育的、資格を備えた教育者によって行われる。

・教育プログラムの物理的環境は、教育プログラムおよび学生数に適したものである。

・教育プログラムは、学生が国際的学習環境で学べる可能性を備えるよう構成されている。

基準項目5 教育プログラムに対する継続的内部質保証

・教育プログラムは、欧州基準や大学内教育プログラム内部質保証ガイドラインに照らした教育機関の質保証システムの一部にきちんと組み込まれている。

 基準の一番目に労働市場からの要求が置かれているのがデンマークの教育プログラム認定の特徴と言え、アウトカム評価重視の国際的質保証の流れが感じられる。今月には、実際にコペンハーゲンへ行き、ACE Denmark、コペンハーゲン大学、大学所管官庁である科学技術開発省大学機構庁を訪れ、教育プログラムアクレディテーションの運用実態等について調査する予定である。その結果も含めて、科研による調査研究の成果については、センターニュース等で報告していきたいと考えている。(文責 評価システム研究部門 堀井祐介)

 

○●○第3回カリキュラム研究会のご案内○●○

日時:3月11日(金)10時~11時30分              場所:角間キャンパス総合教育1号館2階大会議室

テーマ:「環境学とは何か―副専攻カリキュラムについて考える」

報告者:西山宣昭(大学教育開発・支援センター)

趣旨:本学の第2期中期計画4-3「現代的課題の一つである環境問題に関する見識を備えた人材を育成するため,学士課程(教養教育・専門教育)及び大学院博士前期課程に,それぞれの課程に応じた環境教育のプログラムを構築する。」における専門教育として、新規の文理融合型副専攻の必要性・可能性について検討したい。他大学の事例も参考にしながら参加者とともに考える。

 

○●○第8回大学教育セミナーのご案内○●○

金沢大学創基150年記念「講演会・シンポジウム」シリーズ第26回

主催:金沢大学大学教育開発・支援センター  共催:金沢大学カリキュラム検討委員会

テーマ:「環境学のフレームワークとESDカリキュラムの構築に向けて」

日時:平成23年3月16日(水) 14時~17時35分

場所:金沢大学角間キャンパス総合教育1号館2階大会議室

趣旨:地球環境という閉鎖系において、いかなる持続可能な社会を構築できるか、この問題に挑む人材を養成することは大学に課せられた重大な使命である。そのためには、自然環境、人間社会、そして両者の間の複雑な相互作用について、様々な学問分野のフレームワークに基づいて論理的かつ批判的分析を行い、課題を明確にし、その解決の糸口を見出す能力を養成する教育のデザインが求められる。本学の第2期中期計画には、「現代的課題の一つである環境問題に関する見識を備えた人材を育成するため,学士課程及び大学院博士前期課程に,それぞれの課程に応じた環境教育のプログラムを構築する。」と明文化され、これは平成20年9月、本学で組織された環境教育検討会の提言に基づいている。本セミナーでは、本学における共通教育、専門教育、大学院教育におけるESD(Education for Sustainable Development)カリキュラム構築の現状を把握するとともに、その指針となるべき学問分野間の協同の在り方、研究活動の教育デザインへの還元の可能性、さらに論理的思考力、批判的思考力、創造的思考力を養成するESDの教育方法について議論する。環境人材の育成は大学、企業、地域社会全体の問題であり、学外からも多くの参加者を得て議論したい。

*参加申し込みは、info-rche@ge.kanazawa-u.ac.jpまで氏名、ご所属、電子メールアドレスを明記の上、3月14日までにお願いします。参加費は無料です。