【No.340】
CP・DP策定関連FD報告

現在、第2期中期目標・中期計画およびそれに伴う年度計画(平成22年度)i
学校教育学類・教育学研究科合同FD(2010年12月9日)では、「成績評価の厳格化」というテーマで、策定されたCP・DPを実質的なものにするための成績評価方法、成績評価基準のあり方について、説明させていただいた。人文学類FD(2010年12月15日)では、「CP、DP策定と成績評価」というテーマで、そのCP・DP策定に関して、意義、社会的背景、具体的作業、用語およびCP・DP策定と密接に関わる成績評価について説明させていただいた。両FD研修会とも上記中期計画および年度計画でのCP・DP策定作業に関連して開催されたものであるため、説明内容は基本的には同じである。 に従い、全学的取り組みとして進行中のCP・DP策定作業に関連して、2つの学類(学校教育学類、人文学類)のFD研修会に協力させていただいた。ちなみに、CPとはカリキュラムポリシー(教育課程編成方針)の略であり、DPとは、ディプロマポリシー(学位授与方針)の略である。

現在、学位の国際通用性や学位取得者の能力について、国内外で盛んに議論されている。ヨーロッパにおけるボローニャプロセス、アメリカにおける学習成果(アウトカムズ)重視教育への移行、OECDによる高等教育における学習成果の評価(AHELO)、文部科学省が学術会議へ依頼した「大学教育の分野別質保証の在り方について」iiなど具体的な活動と結びついた議論が行われている。これらの流れの中で、高等教育にはさらなる情報公開が求められているiii
より具体的には、教育課程を従来のような個々の科目の単純な足し算と考えるのではなく、一つの教育プログラムとして各科目のつながりがわかり、その教育プログラムを修了することで何が出来るようになるのかが見えるような形に変えることで情報公開につなげることが求められているのである。これが、「教育課程、教育成果、学習成果について可視化、明確化、自覚化」である。これには、学類レベルでは、教育プログラムという考え方の共有から始めることで対応可能であろうし、個人の教員レベルでは、従来、教員が経験に基づき行ってきた授業について、その教育内容、教育意図などを、学生、その家族、同僚教員、社会に対してわかりやすく提示することで対応できる。もちろん、この「わかりやすく提示する」ことに困難が伴うことは十分予想されることではあるが、現在の大学教育にはこれが求められているのである。

この「教育課程、教育成果、学習成果について可視化、明確化、自覚化」は、すでに医薬保健系、理工系では本格的に取り組まれているが、文系では全国的に見ても数件の先進事例がある程度である。

教育課程が体系的な教育プログラムとして提供されていれば、

  • 何を学んでいるのか、学んだのか、またどのような学習成果を身に付けたのかについて、学生自身や家族、社会に対して今まで以上に明確に説明することが出来る
  • どの大学で学ぼうと、同じ学位名称、(例えば学士(文学))を与えられた学生間で最低限の質は保証される(学位の国際通用性につながる)
  • 授業科目も、学習者である学生にとって単なる一履修科目ではなくなり、教育プログラム内の一科目という自覚を持って学ぶことになる。また、教授者である教員にとっても自分の所有物としての授業ではなくなり、自分の専門だけに特化することなく、他の科目との関連性を考えて教えることとなるiv

のである。

次に、学類が提供している教育が、体系的な教育プログラムであるかを確認する手段として、「カリキュラムマップ」がある。これは、CP、DPおよびそれらから導き出される学習成果と提供されている科目との関係性が一覧できるものであり、シラバス記述内容を基に作成される。

続いて、策定されたCP、DP、作成されたカリキュラムマップに従って教育を行う場合、成績評価はどのように行えばいいのかという問題について説明を行った。こちらについても、基本的には従来と大きく変える必要は無いと考えられるが、授業において、どのような主題、学習目標を設定し、どのような学習成果に結びつくのかを可視化、明確化、自覚化することが必要となる。今回のFD研修会では、このような成績評価の具体的実践事例として、米国ウィスコンシン州ミルウォーキーにあるアルバーノ・カレッジにおけるアビリティ・ベースのカリキュラムを参考例として紹介させていただいた。その内容については、「週刊センターニュース334号」を参考にしていただきたい。

これまでも、教員は、試験であれ、レポートであれ、「成績評価方法と計測するもの(答案、課題等)」との整合性を意識した採点、成績評価を行ってきていると思われるが、今後は、この点についてより強く認識し、対外的に明確に示せることが必要となる。もちろん、授業科目によっては、S、A、B、Cで測るのか、達成度(可否)で測るのか、絶対評価なのか、相対評価なのかの問題は残るが、それらは学類として教育プログラムにおける授業科目の位置づけを確認する作業の中で解決されていくものであろう。

上記内容の説明を行った後の、参加者からの質問、コメントとしては、「そもそもどうしてこのような作業が求められるのか」といったものから、「可視化、明確化する作業には多大な労力が伴うが、それを行ったとしても納得しない学生にはどのように対応すればいいのか」、「大学教育においても初等・中等教育のような観点別評価になるのか」、「同じ学位で同じレベルを保証するといった場合、日本の大学間に存在する偏差値、序列による差はどのように考えるのか」、「学習成果測定のレベルのイメージがわかない」といったようなものであった。

その場でも可能な範囲で回答したが、今後、学類内で活発な議論や各種作業が行われる場合、このような疑問、不安が出てくることは当然想定される。大学教育開発・支援センターとしては、それらの疑問、不安を少しでも解消するため、学類単位だけでなく、コース、専攻、場合によっては個人単位でも必要に応じて情報提供、アドバイス等出来る限り支援を行いたいと考えている。また、アカンサスポータル内「時間割」をクリックしていただくと、「アカンサスFD」というコースも設けており、そこには、各種情報を掲載しているので、参考にしていただきたい。(文責 評価システム研究部門 堀井祐介)

i 中期目標・中期計画
http://www.kanazawa-u.ac.jp/university/planning/10/cyu_mokuhyou.pdf
http://www.kanazawa-u.ac.jp/university/planning/10/cyu_keikaku.pdf
<学士課程・専門教育>【4】【4-1】
<成績評価>【10】【10-1】
年度計画(平成22年度)
http://www.kanazawa-u.ac.jp/university/planning/10/Nend_keikaku.pdf
<学士課程・専門教育>、<成績評価>
ii http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-k100-1.pdf
iii 高等教育における情報公開に関しては、「中長期的な大学教育の在り方に関する第四次報告」(平成22年6月29日)において、教育力の向上の観点から公表が求められる情報として、
(ア)学部・学科・課程,研究科・専攻ごとの教育研究上の目的
(イ)教育課程を通じて修得が期待される知識・能力の体系
(ウ)学修の成果に係る評価や卒業の認定に当たっての基準
があげられている。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/attach/1297035.htm
iv 教育プログラムへの授業科目提供という考え方においては、教員個人の研究内容と、授業科目内容が必ずしも100%一致する必要がなくなることも留意点としてあげられるかもしれない。