【No.580】
アクティブ・ラーニング型授業とALA活用の実践

○●○アクティブ・ラーニング型授業とALA活用の実践○●○

1.ケースメソッド型授業

筆者は、平成27年度後期人間社会学域共通科目「大学・学問論」において、「第7回:大学とIR」を担当した。当該授業は、「1.講義(世界の大学の起源→日本の大学の歴史から現在を説明)」、「2.ケースメソッド型授業(シンク・ペア・シェア→グループワーク→グループ発表)」「3.講義のまとめと質疑応答」で構成した。「講義」部分では大学の起源、日本の大学の成り立ちと歴史概観、日本の大学の現在を知り、学生自身が現在所属している「大学」を俯瞰して見ることができるようになること(=自らの立ち位置の相対化)を目的として、簡単な質疑応答も取り入れたインプット型の講義を行った。また、筆者自身の専門領域であるIRについても、大学のIR機能に求められる「エビデンス(数値等を用いた根拠)を示す重要性」や「教育、研究、社会貢献を担う公共の器である大学に求められるアカウンタビリティ(説明責任)」を学生に理解してもらうように促し、インプット部分の理解度を授業の最後のミニッツペーパーで確認した。

ケースメソッド型授業とは、ハーバードロースクールで生まれ、ハーバードビジネススクールで体系化された教授法を用いる授業を意味する。この授業の中では、唯一の正解があるわけではない不確定要素の多い状況の中で、他者の立場に立って意思決定をする疑似体験ができ、さらに一つの状況に対して、多くの異なった意見・視点が提示されることで自分の考え方の癖(バイアス)を認識していくプロセスを経験することができる。ケースメソッド型授業では、教員は正解を教えるのではなく全体討議を促すこと(ファシリテーション)に注力し、参加学生の発言と気づきが授業における最も重要な学修資源となることを重視している。すなわち、ケースメソッド型授業において、大学入学以前には学生にとって当然のように存在した「正しい答え」はなく、参加学生同士の意見交換を通じて“自ら考える力を養う”効果が期待できるのである。

2.本授業のケースについて

当該授業で用いたケース教材は、筆者がAP事業において知り合った人文学類4年生「田中太郎(仮名)」をモデルに作成したものである。ケース教材の作成にあたっては、モデルとなることの可否について田中の確認を得た上で、筆者が田中にインタビューを実施し、これに基づき筆者がケース原案を作成した後、田中による事実関係の整理・確認を経て、筆者が授業内容や目的に叶うようにブラッシュアップしてケース教材としてまとめた[1]。本ケース教材の内容を、図「本ケースの人物相関図とまとめ」を用いてに説明する。4年生である田中は、過去学内で公募された「学生企画プロジェクト」に参加し成功を収めた経験があった。

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田中と同じサークルに所属する1年生の佐藤は、将来国際機関で働くことを希望しており、これを聞いた田中は、先輩から紹介された県庁インターンシップに佐藤を誘う。佐藤はこれに同意し、インターンシップに臨むのであるが、インターンシップを終えた佐藤に対して、田中は言葉にならない「もどかしさ」を感じることとなった、というものである。本授業ではこのケース教材を受講学生が予め読んだ上で授業に参加し、グループワークを通して田中が感じた「もどかしさ」はどのようなものか学生間でディスカッションを行った。

 

 

3.ALA学生とつくり上げる授業

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当該授業では、本学大学教育再生加速プログラム(AP事業)におけるアクティブ・ラーニング・アドバイザー(ALA)制度[2]を活用し、授業時間内外でアクティブ・ラーニングの支援をするALA学生を1名雇用した。当該ALA学生の学修支援内容は、授業時間内のグループワーク支援(各班4~5名の全10班)と、授業時間外において、各班でまとめたグループワーク発表を記載したワークシートについて、教員(筆者)と一緒に振り返りを行うものであった。この振り返りの結果は「大学・学問論」のウェブクラスに掲載し、全受講学生へフィードバックをはかり、中間レポート作成の元となる資料とした。グループワークを経て、各班から出た田中が佐藤に感じた「もどかしさ」のまとめは2つの図の通りである。授業後の中間レポートでは、この資料でまとめられた他者の意見と自己の意見を、エビデンス(根拠)を用いて比較し論じるレポート作成を課題とした。

当該授業に関わる詳細な分析は、今後学会発表等でまとめる予定である。筆者が感じたALAの大きな効果は、本来教育の受け手である学生とともに授業を作っていける貴重な経験と、教員が気づかない学生の反応を、授業後の振り返りで知ることができた点である。ALAは学生の学修支援者だけではなく、授業者の行動を振り返る鏡にもなるのではないかと感じた。  (文責 AP事業特任助教(IR担当) 上畠洋佑)

 



[1]本ケースメソッド教材文量はA4サイズ4ページ(約3500文字)である。本教材に興味のある方は上畠にご連絡下さい。(Mail:yousukeu【at】staff.kanazawa-u.ac.jp)

[2]センターニュースNo.575「学修支援の担当者養成と実践」参照

(http://herd.w3.kanazawa-u.ac.jp/news/2016/201601_575.html)