【No.573】
IRerの(アン)ラーニング

○●○IRerの(アン)ラーニング○●○

1.第2回教学IR研修会

 2015年11月30日(月)に本学大学教育再生加速プログラム事業(以下「AP事業」)の一環として「アクティブ・ラーニングを支える学生調査と教学IR」をテーマとして、第2回教学IR研修会を開催した。この研修会では、金沢大学の学生のアクティブ・ラーニングに対する適合度や、学修活動や学生生活にかかわる特徴を把握するために昨年度(2015年2月)にインタビュー調査(フォーカスグループインタビュー)を実施した株式会社ラーニング・イニシアティブ代表の北島大器氏を講師として招き、質的調査を起点とした「教学IR[1]」の有用性や、調査の具体的な手法や分析結果について講演して頂いた。教学マネジメント改革を目的とした教学IRを実施する上で、「リサーチ・クエスチョン[2]」を形成することが重要であると言われている。学会や各種セミナーでは学生アンケートやGPA等の量的分析から「リサーチ・クエスチョン」を形成する事例が多く紹介されているが、本学がAP事業で実施する教学IRでは、質的調査(フォーカスグループインタビュー)により学生の生の声を聞くことを通して、「リサーチ・クエスチョン」を形成した後、量的なアプローチで検証していくプロセスを取り入れている。

・フォーカスグループインタビュー(FGI)調査の概要とイメージ(研修会資料より)

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2.フォーカスグループインタビュー調査

本年度も2015年12月上旬に計6日間かけて、人間社会学域・理工学域の12学類全学年から抽出した約200名の学生に対してフォーカスグループインタビュー(FGI)調査を実施した。筆者もほとんどのインタビューに同席し、FGI調査の内製化をはかるために数回インタビューファシリテーターを経験した。調査結果については2016年1月末までにまとめ、調査レポートを人間社会学域・理工学域にフィードバックすると共に、今後の本学AP事業推進に活用していく。インタビュー調査の詳細については次稿にて報告する。またAP事業で実践した取組は、学外へのグッドプラクティスとして発信していく使命が期待されている。この使命を果たすことを目的に、本調査結果から得られた知見は、今後各種学会やセミナー等で発信していく予定である。

3.IR担当者に必要なラーニングとアンラーニング

 IRをテーマにした各種学会・フォーラムの講演やワークショップは非常に盛況であり、満員御礼ということも珍しくない。参加者は恐らくIRの概念やその手法、事例を学ぶこと(ラーニング)を目的に参加しているのであろう。しかし本当にIR担当者は、ラーニングを蓄積するだけで良いのだろうかという疑問が筆者にはある。なぜなら下図の通り、IR実務を担う中で、時間の流れとともに学内外の変化が多く生まれるはずである。

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経営学習論の専門家であり、企業・組織における人々の学習・コミュニケーション・リーダーシップについて研究している中原淳准教授は、アンラーニングを「ルーティン化された行動・慣習、そして信念に関する変化」を扱った学習と説明した上で、「染み付いちゃったものを、痛みをともないながら、変えること」と平易に説明している[3]。筆者は上述のインタビュー調査を通してアンラーニングを経験した。これはIR実務に向かう上での、「集団としての学生」から「個人としての学生」への学生に対する意識変容である。比喩的な表現であるが、データの向こう側にいる学生を意識した「データの体温」を感じるようなった。IRのイメージは、教学データ(GPA等)、アンケートの統計的分析が特徴的に取り上げられ、勿論これも重要であるが、学生の生の声を抜きに分析結果が現実と大きく乖離する可能性も否定できない。IR実務を通した絶え間ないラーニングとアンラーニングを繰り返して、学外ではIRの新たな知識、スキル等を吸収し、また自らの実務経験も還元することが必要であると考える。(文責 AP事業特任助教(IR担当) 上畠洋佑)

 



[1]学生の教育・学修に係る学内のデータを収集し分析することを「教学IR」と定義する。

[2]「教学IR」を通して明らかにしたい教学マネジメント上の問いを「リサーチ・クエスチョン」と定義する。

[3]「アンラーニングとは何か?:『染み付いちゃったもの』をいかに変えるか?」参照

(URL:http://www.nakahara-lab.net/blog/2014/12/post_2319.html)