【No.571】
初年次教育におけるアクティブ・ラーニングについて

○●○ 初年次教育におけるアクティブ・ラーニングについて ○●○

 大学教育改革あるいは高大接続改革(入試改革との一体で)において、アクティブ・ラーニングは欠かせないキーワードの一つであり、本センターニュースでも様々な大学での実践や、学内および他大学も含めてAP事業推進にあたっての課題の提示がなされているところである。

 学生がどのように学び何を身につけるか(できるようになるか)という点に注力し、アクティブ・ラーニングによる教育実践を行うことは、高年次での専門科目やゼミ・実験科目等においては、ある意味では、実行しやすいし、可視化しやすいといえる。あるいは程度の差こそあれ、すでに実行されていると捉えることもできよう。問題は、学習観の大幅な転換を求められる初年次教育(科目)において、それをどのようにスムーズに、かつ(高年次にうまくつなげる形で)効果的に進めていくかが重要になってきてくると思われる。12月5日に、初年次教育学会実践交流会が金沢工業大学で開催され、様々な特色をもつ4つの県内外の大学から実践報告がなされており、本学の教育実践に対しても参考になると考えるので、簡単に紹介したい。

 石川県立看護大学(垣花渉氏)では初年次教育科目として「フィールド実習」(前期必修・1単位、班7名)があり、地域をフィールドに、スタディスキル教育が行われている。カリキュラム上の位置づけとして、看護学の基礎力(基礎教育)にあたるもので、自己の課題探求学習を図り、地域の課題解決学習へ展開できることを目指している。地域に根ざす看護職に必要な資質能力として、社会の一員という自覚や、相手の立場に立ち考え理解することが重要で、コミュニケーション能力や倫理観・責任感の育成のためにフィールド実習は地域に暮らす人と関わり、体験し、課題発見のための知識技術の修得をねらう。課題探求学習のプロセスとして、情報検索をし周辺知識を得て【講義】テーマを作成し、次に事前学習と調査内容の計画や地域との交渉を進め【ゼミ形式】、そして実際に地域実習を行い、成功失敗を繰り返しながら地域を知り、最後にプレゼン・報告書作成をし【本番】、併せて自己・他者評価を受けていくことになる。この道筋の中で学生は調べる・書く・意見を述べる、のスタディスキルを獲得していくが、例えば調べるスキルの実践では、信頼性ある根拠(客観的データ)での裏づけの重要性を説明したり、傾聴・ミラーリングを体験して、話し手・聞き手の信頼関係の構築に向け働きかけがなされる。また大事な部分として、3段階の振り返りで学習評価を行っていることで、例えば、【活動前】には学ぶ動機や関心を確認し(個人の目標)、【実習中】の振り返りとして、教員の役割は学生の活動の試行錯誤を、観察・分析しながら手助けし、一方学生は振り返りシート等を活用し、経験を客観的に分析していくようにし、【活動後】には活動を通した成長や変容に基づき主体的に学ぶ態度を確認し、次の目標を設定させている点である。

 さて、玉川大学の初年次教育として「一年次セミナー101・102」(プロジェクト型学習)が紹介(小島佐恵子氏・教育学部)された。アクティブ・ラーニングを活用した初年次教育として当該セミナーは、内容としてセルフマネジメントや文章表現、キャリア、リサイクル・プロジェクト等で構成されており、今回の報告ではリサイクル・プロジェクトが取り上げられている。プロジェクトの目的は、リサイクルについて学び、子どもの成長発達について理解しながら、リサイクル用品を使って子どものおもちゃを作成していき、活動の中で、計画・準備・実行・評価・改善の力を養うことをねらっている。実際に作成されたおもちゃは、大学祭において学部展示され子どもたちに実際に遊んでもらい、楽しさや安全性などを検証し、必要ならば改善が加えられていく。また(最終的な)評価として、チームの自己評価をレーダーチャートで記入し、個人では学修ポートフォリオに成果(ふりかえり)を記入していくことになっている。これらの活動を支えていく仕組としては、上級生や院生が活用され、当該科目も含め、先輩が説明・演示する機会が設けられていることや、ラーニングコモンズが積極的に活用され、仲間と議論する場として、疑問点を学ぶ場として、発表の場として、情報交換・共有、振り返りの場として機能していることは注目される点である。

 次に、金城大学短期大学(若月博延氏・ビジネス実務学科)における「日本語表現」に触れていきたい。報告では主に、実施に向けての教員側の組織的な取り組みにフォーカスがあてられている。所属学科教員として必ずしもビジネス領域の専門家(専門外)でないものの、文章を書けない学生(の実態)を分かっている教員が、チームワーク・ティーチングを試みている。複数教員での科目運営であるので、内容は同じであり、問題となる評価では、ルーブリックの活用を進めている。長時間の事前打ち合わせによる授業内容の相互理解などチーム・ティーチングの苦しさも吐露されているが、一方でファシリテーション(北陸地域連携FDなどでの研修を基礎に)による授業進度の統一や授業評価の統一(例えば文章評価ルーブリック基準の作成と適用)が図られた部分で成果も少しずつ現れているようである。

最後に、青山学院大学の初年次教育科目として「基礎演習」でのレポートライティング教育について報告(杉谷祐美子氏・人間科学部)がなされた。昨今の調査で明らかにされている学生の傾向(大学観)安易に流れる傾向は、当該大学でも表出しているようであり、それらを打開することも念頭に、初年次教育科目の教育目標が設定されている。基礎演習では、問題を多面的に考察する思考力、読む・書く・聴く・話すの学習スキル、大学での学びの姿勢の3つを身につけることを目標に、取り組みがなされている。論文の書き方の講義から始まり、かなり長文の論文作成を最終目標に、各回で提出物を持ち寄りグループで検討・相互批評したり、グループワークから気付いたことをワークシートにまとめる(振り返り)といった活動を行っている。授業アンケート結果によれば、論文作成の理解度(書く能力)は上がっているとの成果も出ているものの、一方で「学生の学習の文脈の中で個別に安心できる対応」(体制)をどのようにしていけるのか、学習支援のニーズに対する切実な課題も生じているようである。

以上の報告を踏まえて、意見交換がなされたが、いずれの実践にも共通する要素として、事前準備や事前教育・授業設計・各ステップでの振り返りの重要性や「グループ」(活動)の強調、関係者の「組織的連携」やSA・TAの確保と効果的な活用の大切さが指摘できると思われる。 一方で、各大学や地域の実情に根ざしたそれぞれの初年次教育(科目)の確立に努めており、また多様な学生層(学力面、動機、やる気など)に対して、どのようにレディネスを備えていくべきか(いくことができるのか)、教育効果の測定をどう行っていくのが適切なのかといった点について、様々な材料を提供してくれていて、本学の教育実践にあっても非常に参考になるものである。

 

(文責 評価システム研究部門 渡辺達雄)