【No.569】
学士課程教育の学習成果(Learning Outcomes)―他大学の事例(1)

●○●学士課程教育の学習成果(Learning Outcomes)―他大学の事例(1)●○●

金沢大学<グローバル>スタンダード(KUGS)は、学士課程<グローバル>スタンダードと大学院課程<グローバル>スタンダードとからなり、前者は本学の学士課程教育の学習成果として5つの能力を明文化したものである。今後、これらの全学が共有する学習成果を各学類の専門分野の文脈で解釈し、学類ごとに定めている既存の学位授与方針およびカリキュラムマップ上に明記されている学習成果との整合性について検証する必要がある。一方、来年度からの開講に向けて現在開発が進められている共通教育GS(グローバルスタンダード)科目30科目と5つの能力(学習成果)との対応関係はすでに確定しており、KUGSが共通教育GS科目の教育内容・方法、成績評価基準のデザインの指針となる。KUGSの国際通用性の質保証の観点から、センターニュースNo.519、523、527、531において、アメリカの学士課程教育の学習成果の参照モデルとして知られるVALUE ルーブリック(Valid Assessment of Learning in Undergraduate Education  Rubrics)とKUGSとの対応関係に関する筆者の考察について報告した。また、本学と海外の大学との間での学習成果、カリキュラム、科目の対応関係を明示するツールとしてVALUE ルーブリックを活用することを想定して考察した。今回は、VALUE ルーブリックを実際に参照しているアメリカの代表的なリベラルアーツカレッジとして知られるカールトンカレッジ(Carleton College)の学習成果について、大学HPに掲載されている情報に基づき以下に紹介する。カールトンカレッジでは6つの学習成果が全学で共有されており、そのうち5つの学習成果はそれぞれ複数の要素に分割され、各要素についてさらに4段階のレベル評価基準(各レベルに学生が達していることを示す学生のパフォーマンスについての記述:ルーブリック、センターニュースNo.519)が明文化されている。6つの学習成果のうちの1つだけは、26のDepartmentsおよび15のProgramsの専門分野に関係づけられている。つまり、この学習成果の下位の階層に各Departmentおよび各Programが定める学習成果が位置づけられている。その1例として生物学分野の学習成果を以下に引用する。また、6つのうちの1つの学習成果に対するルーブリックは、VALUE ルーブリックに含まれる【Problem Solving】(センターニュースNo.531に掲載している。)をほぼ原形のまま引用している。VALUE ルーブリックの参照状況についてさらに情報を収集する必要があるが、KUGSとVALUE ルーブリックとの対応関係を明確にしておくことは国内外に向けた本学の教育の質保証の一環として有効であると思われる。

 

【Carleton College Student Learning Outcomes】

カールトンカレッジの学生は卒業に際し次のことができるようになっていなければならない。

1.グローバルな視点で人間、芸術、環境、文学、科学、社会に関する探究を継続する、つまり学び続けるために必要な知識を獲得していることを示している。

2.一つの分野における中核的な知識およびその分野での探究の方法の要素と体系を獲得していることを示している。

3.根拠を分析できる、すなわち、特定の理論的な方針、方法論、あるいは論証の前提となっている仮定を同定できる;相反する視点および代替となる仮説を提示できる;定量的な主張と定性的な主張とを見分けることができる。

4.問題を設定し解決できる、すなわち、情報を定位し分析し統合し評価できる;分類でき整合性や重要度を評価できる;1つの仮説あるいは結論を得るために状況、現象、疑問あるいは問題を明確にし、そして充分に推論した上での複数の結論あるいは解を得ることができるなど。

5.他者とコミュニケーションし有益な議論ができる。

6.各自が選択した学問分野において、特定の分野のあるいは複数の分野にまたがる研究、あるいは芸術の創作も含む単独での作業を行うことができる。

学習成果2を除いて、その他の5つの学習成果はさらに複数の要素に分割され、各要素は評価基準として明文化されている。学習成果4は、Defining the problem、Identifying strategies、Proposing solutions、Evaluating potential solutions、Implementing a solution、Evaluating outcomes、以上6つの要素に分割され、各要素に対して学生が示すべき具体的なパフォーマンスが記述されたルーブリックが設定されているが、このルーブリックはValue ルーブリックに含まれる【Problem Solving】(センターニュースNo.531)がほぼ原形のまま引用されている。学習成果2の達成の評価は26のDepartmentsおよび15のProgramsが定める学習成果の達成度の評価に委ねられている。以下に生物学の学習成果をHPから引用する。

 

【Department of Biology at Carleton】

【Core competency and Examples of core competency applied to biology practice】

1.科学の方法を適用する能力

 観察の方針の立案、仮説の検証、実験の設計、実験結果の評価、問題解決の方針の考案

2.定量的な推論を行う能力

 図表の作成と解釈、ばらつきのあるデータへの統計モデルの適用、数理モデリング、大規模データの処理と分析

3.モデリングとシミュレーションを行う能力

 力学系に対する計算論的モデルの作成、情報論的手法の適用、大規模なデータの処理と分析

4.科学の学際性をうまく活用する能力

 生物系に対する物理法則の適用、分子および生物系の化学、イメージング技術の活用

5.他の専門分野にも関わり協同する能力

 科学論文の作成、異分野の聴衆に対する科学的概念の説明、チームへの関与、他分野との協同、異文化感覚

6.科学と社会との関わりを理解する能力

 生物学の問題における社会的な文脈への気づき、社会問題を解決するための生物学の活用、生物研究における倫理的側面への気づき

 

                        (文責 大学教育研究開発部門 西山宣昭)

*上記の情報は以下のカールトンカレッジHPに基づいている。

https://apps.carleton.edu/campus/doc/faculty-resources/assessment/