【No.568】
アクティブ・ラーニング型授業における学修成果の評価

○●○アクティブ・ラーニング型授業における学修成果の評価○●○

2012年に中央教育審議会が取りまとめた「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」は、学士課程教育の質的転換を図るために今後速やかに取り組むべき具体的な事項のひとつとして、学修成果に係る評価等の基準などに関する情報発信を掲げている。そして、学修成果の具体的な評価方法として、学修行動調査や学修到達度調査、ルーブリック、学修ポートフォリオが挙げられた[1]。学修成果の評価に関しては、2011年に改正された大学設置基準(第二十五条の二)においても、客観性と厳格性の確保の視点から、学生に対してその基準を明示することが求められている。このように、学修(学習)成果の評価は、高等教育政策の焦点が「教員が何を教えるか」から「学生が何を学んだか」にシフトするなかで、教育における不可欠の要素として捉えられるようになってきている[2]

本学のAP事業においても、アクティブ・ラーニング型授業を通した学修成果を評価するにあたり、学修ポートフォリオをはじめとする多元的な評価方法を開発することとしている。この学修成果の評価に対する教職員の理解を深めることを目的として、11月2日、「能動的学修を促す教育評価と授業設計」をテーマに、第2回FDリーダー[3]研修会を実施した。教育評価の方法のなかでも、今回は、パフォーマンス評価[4]におけるツールのひとつであるルーブリックに焦点があてられた。ルーブリックとは、学生のパフォーマンスを質的に評価する課題等における評価軸を表などの形で可視化したもので、基本的には課題、評価観点(課題が求める具体的な知識、技能、態度)、評価尺度(達成レベル)、評価基準(各観点におけるそれぞれの尺度に対して満たすべき内容)の4要素により構成される。なお、本研修会は全学FD・SD研修会を兼ねて実施され、人間社会学域および理工学域における各学類のFDリーダーのほか、医薬保健学域のFD委員や来年度より開設される共通教育GS科目担当予定者を含め、約40名の教職員が参加した。

研修会は、杉森公一准教授(大学教育開発・支援センター)が講師となり、講演とワークショップ形式により進められた。まず導入部分の講演では、アクティブ・ラーニングについて簡潔に紹介されたうえで、学修到達目標(授業を通して学生が何を身につけるか)と学修活動(授業で学生はどのように学ぶか)、教育評価(学修成果はどのように評価されるか)の3つが相互に連関している授業が統合された授業であることとその重要性が説明された。それを受けて、参加者は各自担当している授業の学修到達目標・学修活動・教育評価を振り返り、4~5名のグループ(授業を担当している学域や科目に応じて編成)に分かれて、その結果を共有し相互に意見交換を行った。引き続いて、教育評価とルーブリックに関する講演が行われ、教育評価の種類やさまざまな方法が示されたうえで、ルーブリックとはなにか、なぜ広く用いられてきているのか、どのような種類や事例があるのかなどについて説明された。以上の講演と授業の振り返りを踏まえて、それぞれの参加者は自分が担当する授業で学生に課す課題のための(もしくは授業全体を通しての)ルーブリック作成に取り組んだ。その後、各自が作成したルーブリックについて、グループ内で発表し相互にフィードバックを行った。最後に、成果発表として、各グループから作成したルーブリックひとつとグループにおける議論の内容を紹介してもらい、全体での共有を図った。

本研修会は、アクティブ・ラーニング型授業による学修成果を評価する方法や、教育評価自体によってアクティブ・ラーニングを促せることについての理解を深めるとともに、実際にルーブリックの作成を経験することによって実践的なスキルの獲得を図るものとなった。グループでの議論では、にぎやかで活発な意見交換が行われており、他の(学類の)教員の授業実践について知ったり、自身の授業実践に対する他の教員からのフィードバックを得たり、授業に関わる悩みを共有したりと、普段なかなか実施することが難しい貴重な機会になったと思われる。成果発表では、レポートや野外学習、ディベート、実演といった多岐にわたる課題のためのルーブリックのほか、理系の科目における学修到達目標に対するルーブリック、学び方の指針を示すルーブリックと、さまざまなルーブリックの形が報告された。

全体を通して、参加者からは、他の教員が実施しているさまざまな学修活動や評価方法を知って刺激になった、授業の途中々々で学生の理解度を確認しながら授業を改善することの重要性がわかった、これまで評価観点は学生に示してきたが評価基準も提示するとより良くなることに気づいた、アクティブ・ラーニング型授業での評価方法(何をどう評価するか)の難しさを実感したといった感想が寄せられた。他方、アクティブ・ラーニングとルーブリックの関係性や、複数の科目を通してアクティブ・ラーニングを図っている場合の座学授業での評価方法などについて質疑が交わされた。

ルーブリックは、評価に要する時間の短縮、評価の一貫性と公平性の確保、学生の学習状況の把握、学生の学習促進と効果的なフィードバックなどの面で有効であるとされている[5]。同時に、回答結果やプロセスが一つに限られ評価基準が明確である課題など、課題や授業の内容、目標によってはルーブリックの使用が向かないこともある。また、ルーブリックで具体的な評価基準を示すことで、かえって学生の主体性や創造力をそいでしまう場合もあり、それぞれの授業や学生に応じて適切な評価観点や評価基準を設定することが重要である。これらの利点や留意点を知ったうえで、各教員の判断のもと、適宜、取り入れていくことが求められよう。

 

(文責 AP事業(アクティブ・ラーニング担当) 河内真美)



[1]中央教育審議会(2012)「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」、p.20。

[2]松下佳代(2012)「パフォーマンス評価による学習の質の評価―学習評価の構図の分析にもとづいて―」『京都大学高等教育研究』第18号、pp.75-76。

[3]FDリーダーは、アクティブ・ラーニングを取り入れた教員の教育方法と学生の学修方法の開発・普及にあたって、学類の中心的かつ指導的な役割を務める教員として、本学AP事業のもと創設された。人間社会学域と理工学域の各学類に2名ずつのFDリーダーが任命されている。

[4]パフォーマンス評価とは、「ある特定の文脈のもとで、さまざまな知識や技能などを用いながら行われる、学習者自身の作品や実演(パフォーマンス)を直接に評価する方法」(松下2012: 76)である。

[5]ダネル・スティーブンス、アントニア・レビ(佐藤浩章監訳)『大学教員のためのルーブリック評価入門』玉川大学出版部、pp.13-22、沖裕貴(2014)「大学におけるルーブリック評価導入の実際―公平で客観的かつ厳格な成績評価を目指して―」『立命館高等教育研究』14号、pp.77-78 を参照。