【No.567】
欲張りな日本のIR

○●○欲張りな日本のIR○●○

1.データサイエンティスト領域から大学IRへの示唆

 大学におけるIRは、ビジネス領域において数年前から熱狂的な“ブーム”にあるビッグデータやデータサイエンティストと重ねあわせられることがある。IRを「大学のビッグデータ活用」、またIRerを「大学のデータサイエンティスト」と捉える傾向もある。この“ブーム”の火付け役となったのは、ハーバード・ビジネス・レビュー(2012年10月号)において、データサイエンティストを「21世紀で最もセクシーな職業」であると論じられた経緯に発すると言われている[1]。日本では、2013年に一般社団法人日本データサイエンティスト協会が設立され、2014年に日経BP社から「日経ビッグデータ」、2015年には岩波書店から「岩波データサイエンス」が刊行された。本稿では、データサイエンティスト領域においても、IRerの領域においても共通する「プロセスマネージャーの重要性」について、学術論文ではないが興味深い論考があったので紹介したい。ブログ「データ分析とインテリジェンス[2]」において管理者は、データ分析の最初に「必要なのは、データ分析をプロセスとして捉え、その全体をマネジメントできる人材である」と述べている。このプロセスマネージャーについては、次節で大学IRの文脈で述べていきたい。センターニュースNo.567図1.jpg


2.プロセスマネージャー

 

 プロセスマネージャーについて大学IRの文脈で語る前に、一般的な日米のIRオフィスの構成員の違いについて述べたい。図に示したように日米の企業等組織での採用形式が、総合職採用と専門職採用で対比されるように、大学におけるIRオフィスも、日本は総合職型傾向があり、アメリカはそれぞれの役割に応じて担当の職務に従事する専門職型であることが多い。日本において総合職型傾向になる理由は、IR創成期・発展期であるため、組織体制や業務分掌が明確化されていない点と、IRオフィスに必要とされる人・モノ・金が整理・整備されていない2点が考えられる。

センターニュースNo.567図2.jpg

 “総合職”として雇用されたIRerがまずやるべき仕事は、データクリーニング・分析作業やレポーティングは勿論であるが、平行して、IRオフィスを設立したばかりであるために、規程整備、IRの目的設定、意思決定プロセス把握、情報セキュリティ・リソース管理、組織内コミュケーションの構築など「プロセスマネージャー」としての役割も果たさなければならない。これをまとめると、前節で引用した「データ分析とインテリジェンス」の筆者が述べているように、データサイエンティスト領域においても、大学のIR領域においても、その立ち上げに必要な人材は、データ分析をIRオフィスの一つのプロセスとして捉え、オフィスの活動全体をマネジメントできる人材であるということになる。

3.欲張りな日本のIR

 このような日本のIRの現状を図に示して、筆者は「欲張りな日本のIR」と定義する。教員職でも職員職でもIRerとして雇用されると「アナリスト」「経営企画者」「マネージャー」「広報担当」「システムエンジニア」等、多様な役割が期待されることになる。しかし、筆者は否定的な意味合いで、大学組織がIRerの役割に対して“欲張り”であると述べているのではなく、IR創成期・発展期である日本では仕方がない現象であると考え、また現職IRerにとっては、貴重なチャンスであると捉えている。現在、国の政策形成過程で論じられている学長のリーダーシップを支える組織基盤整備の一つとしての、「高度専門職」又は「専門的職員」を配置する上で、制度設計上この現状への対応については、必ず検討しなければならないものであると筆者は考えている。

(文責 AP事業特任助教(IR担当) 上畠洋佑)



[1]浅川直輝「データサイエンティストって何なのさ」日経コンピュータ2014/11/21より

(URL:http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/watcher/14/334361/111900118/)

[2]データ分析とインテリジェンス「最初に必要なのはデータサイエンティストではなく

データ分析プロセスをマネジメントする人」

(URL:http://analysis-intelligence.net/?no=52)