【No.565】
高大接続改革について

○●○ 高大接続改革について ○●○

 昨年12月末に「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」(中央教育審議会)が発表された。これまでは各フィールドで個別に改革の推進を行ってきた印象がある中、今回は一貫した接続の流れを持ち、まさに一体的な改革を行おうとするものである。社会や職業のあり方の変化は、知識技能を習得したか否かを問う段階をこえ、各自の目標を実現するために様々な能力をもつ子どもを成長させる新しい学校教育の在り方、それを公正に評価する方法(大学入学者選抜)、同様に多様な能力を伸ばし社会に送り出せる大学教育の在り方を問うている。

 社会ないし企業から求められる能力、あるいはいわゆる「真の学力」としての思考力・判断力・表現力・主体性・協働力の育成と評価が叫ばれているのに、上記の3領域は知識の暗記や再生(現)、に偏ったままとの批判は強い。また受け身の勉強から能動的な学習へと移行させるために、大学教育ではアクティブ・ラーニングの導入が図られ質的転換が目指されているものの、知識伝達注入型の高校の授業から抜け切れず、とくに大学教育の起点である初年次教育を中心に、その手腕が試されている。

 それぞれの領域の改革について少し見ていくと、高校教育改革においては、やはり「高等学校基礎学力テスト(仮)」に目が行く。テスト創設の目的は、むしろ高校教育の質の向上にあるようで、教育課程の見直し(アクティブ・ラーニングの充実やカリキュラムマネジメント)、教員の指導力向上、多面的な評価の推進を柱として、PDCAサイクルのための有効な道具立てとして活用しようとしている。

テストは、高校での多様な学習活動の中で、主に教科目や総合的な学習にかかる部分について、基礎的な学習の達成度を評価し、高校の学習改善に利用することが想定されている。テスト実施方式や出題方式は今後詰めていくであろうが、基礎的な知識技能を中心に、思考力・判断力・表現力を問う内容になるとされ、副次的には、推薦・AO入試受験者を念頭に、生徒が基礎学力を提示したりあるいは大学が基礎学力を把握するための方法としても想定されている・

 一方、大学入学者選抜改革については、知識の暗記再生や解法パターンの適用にとどまっているとの選抜に対する批判から、「学力の3要素」(先述の真の学力)を多面的に評価する方法に転換することが必要であるとされている。そのための評価方法として、自分の考えについての記述形式評価、活動報告書、エッセイに加え、「大学入学希望者学力評価テスト」の創設が注目されるところである。大学は、当テストを学力の3要素の多面・総合評価として利用し、個別試験において主体性・協働力(態度)を評価するように求められているが、そのためにアドミッションに関わる実施体制の整備充実が不可欠なものとなっている。大学入学希望者学力評価テストについては、想定が難しい部分は多く、例えば、高等学校基礎学力テストが複数回実施が検討されているが、当テストについては未定であることや、選択式でも深い思考力を問える形式とされる連動型複数選択問題の導入が検討されていたり、次期学習指導要領の下でCBT-IRTの導入・試行(平成36年度以降)も検討されているところである。大学入学希望者を決めるという重要性から、関連の改革会議資料上では、慎重な記述にとどまっていて、拙速な導入は考えていないものの、この部分については十分な情報の収集分析が必要であろう。

 最後に、大学教育改革についてみると、今後高校以下の教育改革の進展により能動的学習に習熟した生徒が大学に入学することに伴い、これまで以上に実質的な教育内容・方法の確立が求められてくることになる。ディプロマポリシー・カリキュラムポリシー・アドミッションポリシーの策定と公表が法令義務となることも検討されており(併せて、認証評価制度もこの方向性に沿って改革が進むことが想定される)、これらのポリシーに基づき、個々の大学は体系的なカリキュラム編成や学修成果の評価を実質化することが益々重要になり、教学マネジメントの役割も重要になってくるものと考えられる。

 いずれにしても、高校や大学がそれぞれの特色などを踏まえて検討するなかで、それぞれ内部で閉じた議論をしたり、従前のようなすりあわせに留まるのではなく、教育システム全体を念頭に、学校種を越えて、丁寧に対話を行い継続させていくことは何より重要にものになってこよう。

(文責 評価システム研究部門 渡辺達雄)

 

●○● 第19回カリキュラム研究会のお知らせ●○●

日時:10月22日(木)10時30分~12時 会場:総合教育1号館2階大会議室

テーマ:「改めて考える大学入試~中等教育機関の立場から~」

発表者:坂詰貴司(芝中学校・芝高等学校教諭、大学教育開発・支援センター客員研究員)

概要:長い間大きな変化が見られなかった大学入試が昨年12月の中教審の答申が発表され、大きく変化する可能性が出てきました。その後今年の1月に発表された「高大接続改革実行プラン」、9月には高大接続システム改革会議の「中間まとめ」など具体的な内容が明らかになってきました。その中で一番注目すべきなのは、大学入学希望者学力評価テスト(仮称)でしょうか。そして来年の大学入試では、東京大学と京都大学が揃って新しい入試を実施する予定です。このような状況の中で、中等教育機関の立場から改めて大学入試を考えていきたいと思います。

 

●○● 全学FDSD研修会・第2回FDリーダー研修会のお知らせ ●○●

テーマ:能動的学習を促す教育評価と授業設計

主催:教育企画会議FD委員会、大学教育再生加速プログラム(AP)検討委員会

後援:大学教育開発・支援センター

日時:11月2日(月)13時~17時    会場:自然研ワークショップ教室1

参加者:各学類から選出された教員1~2名(人間社会学域・理工学域については各学類のFDリーダー教員2名)、共通教育機構長が推薦した共通教育GS科目担当予定者・数名、学生部職員

【プログラム】講演:「能動的学習を促す教育評価」杉森公一(大学教育開発・支援センター)

ワークショップ:「能動的学習の実践例の報告」「授業カタログ」、参加者のシラバスをもとにグループ討論を行う。授業内外での学生の能動的活動に注目したルーブリック作成とシラバス再構築を試行する。

成果発表:グループ討論をもとに得られた成果を、作成されたルーブリック、授業シラバスを用いて発表し、相互評価・意見交換を行う。