【No.564】
バンコク訪問調査報告(ASEANおよびタイにおける高等教育事情)

○●○バンコク訪問調査報告(ASEANおよびタイにおける高等教育事情)○●○

 2015年9月10日にバンコクにあるSEAMEO RIHED[1](東南アジア教育大臣機構・高等教育開発センター)とONESQA[2](タイ国教育評価機構)を訪問した。今回の訪問調査は、大阪大学ASEANセンター(バンコクオフィス)長の望月太郎教授のお力添えにより実現したものであり、調査団は、早田幸政教授(中央大学)を団長とし、公益財団法人大学基準協会、大阪大学、山口大学などからのメンバーで構成されている。

 Southeast Asian Ministers of Education Organisation (SEAMEO)(東南アジア教育大臣機構)は東南アジア諸国における教育、科学、文化面での交流促進を目的として1965年に設立された機構である。ASEAN10ヶ国に東チモールを加えた11ヶ国がメンバーとなっている。その配下にあるSEAMEO RIHED(Regional Center for Higher Education and Development、高等教育開発センター)は、1959年にシンガポールに設立された機関を源流とし、1993年にSEAMEO配下のセンターとなった。SEAMEO RIHEDの活動目的は、域内における高等教育の調和(harmonization)を目指すことであり、そのため高等教育における政策、計画、管理運営を含む各種活動に対する相互理解、協力・連携、認識共有拡大を進めている。SEAMEO RIHEDには正式メンバーとしてのSEAMEOメンバー11ヶ国に加えて、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、オランダ、ニュージーランド、スペイン、英国が準会員として、International Council for Open and Distance Education(ICDE)[3]、British Council[4]、筑波大学が連携機関となっている。これらの他にも、いわゆるASEAN+3の+3メンバーである日本、中国、韓国との連携も行っている。

 SEAMEO RIHEDの具体的な活動としては、域内での学生・研究者交流を進めるものとしてのASEAN International Mobility for Students (AIMS)プログラム、域内での単位互換枠組みAcademic Credit Transfer Framework for Asia(ACTFA)、質保証活動としてのASEAN Quality Assurance Network (AQAN)およびASEAN Quality Assurance Framework for Higher Education (AQAFHE)、研究連携としてのASEAN Research ClusterおよびASEAN Citation Index、能力開発としての欧米等へ訪問調査および各種研修実施、E-Learning・Mobile Learning推進活動などがあげられる。今回はこれらのうち、AIMSとACTFAについて簡単に説明させていただく。

AIMSは、もともとマレーシア(M)、インドネシア(I)、タイ(T)で実施されていたM-I-T学生移動パイロットプロジェクト(3ヶ国22大学参加)を拡大したものであり、現在では7ヶ国61大学が参加し、10領域(Language and Culture, Hospitality and Tourism, International Business, Food Science and Technology, Agriculture, Engineering, Economics, Environmental Science and Management, Biodiversity, Marine Science)において1,200名以上の学士課程学生が交流している。

ACTFAは、これまでのASEAN Credit Transfer System (ACTS)がASEAN University Network(AUN)[5]参加のトップ大学[6]主導でうまく機能していない、また、それとは別のUniversity Mobility in Asia and the Pacific (UMAP)[7]における単位互換制度構築を目指した取り組みUMAP Credit Transfer Scheme (UCTS)も使いにくいとのことで、SEAMEO RIHEDが、他のプロジェクトと同様にアジア開発銀行(Asian Development Bank (ADB))の支援を受けて進めている新しい単位互換の仕組みである。ACTFAはACTS等の他の仕組みと異なり、各国固有のシステムを尊重する形での柔軟な枠組みであり、2015年現在、”Harmonization and Networking in Higher Education, Building a Common Credit Transfer System for Greater Mekong Subregion (GMS) and beyond.”というタイトルのプロジェクトとして実証実験中[8]である。

 次にONESQAについて述べる。ONESQAはOffice for National Education Standards and Quality Assessmentの略で、タイにおける高等教育機関を含む各種教育機関の外部評価を担うため2000年に国王令で設置された組織である。タイにおける外部評価において15年以上の経験を持ち、現在第三期の評価活動を行っている。外部評価の仕組みについては詳しく述べないが、基本的指標15項目、大学固有の指標2項目、社会責任に関する指標1項目の18項目に対して評価が行われる。特に興味深いのは、あらゆるデータを数値化し、指標毎に計算結果または閾値クリアで一定のポイントが与えられ、その合計点を活用しての評価となっている点である。

Indicator

Designation

Weight (point)

1

Graduates with bachelor degrees that have jobs within one year

5

5

Publication or dissemination of research or creative works

5

例えば、指標1の場合卒業生の就職状況に対して5ポイントが充てられているが、調査対象卒業生を分母に、1年以内に就職した卒業生数を分子とした計算結果に応じてポイントが付与される。また、指標5では教員の研究活動に対して5ポイントが割り当てられているが、学内・地域レベルの論文に対しては0.125点、全国レベル論文に対しては0.25点、多国間の場合0.5点、ASEANレベルの場合0.75点、国際レベルの場合1点が与えられ、大学常勤の全研究者数を分母に、論文合計点数を分子としそれに100を乗じたものに基づいてポイントが付与される。これらの指標についてはもちろん根拠資料、説明文書も求められるため単に数値だけで判断されるものでは無いが、非常に画期的な外部評価システムである。

 以上、簡単にSEAMEO RIHEおよびONESQAについて述べさせていただいたが、今後、ASEAN諸国からの留学生が増えるであろう金沢大学の教育質保証に少しでも貢献できるよう、これからもASEAN諸国における高等教育事情についての調査研究および情報提供を続けていきたい。(文責 評価システム研究部門 堀井祐介)

 

●○●第19回カリキュラム研究会のお知らせ●○●

日時:10月22日(木)10時30分~12時 会場:総合教育1号館2階大会議室

テーマ:「改めて考える大学入試~中等教育機関の立場から~」

発表者:坂詰貴司(芝中学校・芝高等学校教諭、大学教育開発・支援センター客員研究員)

●○●全学FD・SD研修会・第2回FDリーダー研修会のお知らせ●○●

テーマ:能動的学習を促す教育評価と授業設計

主催:教育企画会議FD委員会、大学教育再生加速プログラム(AP)検討委員会

後援:大学教育開発・支援センター

日時:11月2日(月)13時~17時    会場:自然研ワークショップ教室1

参加者:各学類から選出された教員1~2名(人間社会学域・理工学域については各学類のFDリーダー教員2名)、共通教育機構長が推薦した共通教育GS科目担当予定者・数名、学生部職員



[1]http://www.rihed.seameo.org/

[2]http://www.onesqa.or.th/en/index.php

[3]http://www.icde.org/

[4]http://www.britishcouncil.org/

[5]http://www.aunsec.org/index.php

[6]http://www.aunsec.org/aunmemberuniversities.php

[7]http://www.umap.org/UMAP_ST2/WebFrontPage/HomePage.aspx

[8]http://www.rihed.seameo.org/programmes/credit-transfer-system/