【No.563】
GS科目によってKUGSをいかに達成するか(その2)

●○●GS科目によってKUGSをいかに達成するか(その2)●○●

本学では、金沢大学<グローバル>スタンダード(KUGS)として定める国際通用性を持った5つの能力の滋養を担う共通教育新カリキュラムが来年度から実施される。この新カリキュラムの中核は、共通教育GS(グローバルスタンダード)科目の30科目から構成される。学習成果(Learning Outcomes)としてのKUGSは、共通教育GS科目および専門教育科目によって共有され、KUGSの達成のためのアクティブ・ラーニングに沿った授業内容・方法、さらにKUGS達成度評価(成績評価)方法についての検討がそれぞれSGU事業およびAP事業の一環として進められている。末尾の案内にある11月2日開催予定のFD研修会もまた全学的な検討の機会となる。筆者は共通教育GS科目の一つ「科学技術と科学方法論」の科目担当に加わるため、センターニュースNo.545(その1)ではシラバスの私案を記したが、本科目の主担当予定教員が作成された授業概要案の一部を御了解をいただいたので以下に紹介する。今後すべての科目担当者が確定した段階で、この原案の修正が行われる予定である。

「科学技術と科学方法論」

【授業の概要】前半2回では、「科学とは何か」「科学的とはどういう態度のことか」を取り扱った上で、現在に至る科学の発展の流れ(科学史)を理解して「科学技術」および「科学技術社会の様相」について議論、思考を深める。後半6回は、簡単な道具である「振り子」を題材として、探究のための要素的技法として全米科学振興協会(AAAS)が定義している「科学のプロセス・スキルズ(SPS)」を取り上げる。SPSをベースに、振り子を用いて実際に実験を行いながら、対照実験、因果律、再現性、定量性、斉一性原理、反証可能性基準等、現代科学の基盤となる諸概念について取り上げる。実際に科学研究を実施するうえでこれらの概念をどのように取り扱うのか、実践的に学ぶ。

【第1回 科学とは何か~その営みと歩み】

本日のキーワード 発見と正当化の文脈;演繹的推論;枚挙的帰納法;アブダクション;仮説演繹法;検証可能性基準;確証可能性基準;反証可能性基準;再現性;斉一性原理;科学史;パラダイムシフト;「生物」と「生命」;生気論;自然発生説;対照実験;機械的生命観;人工生命

現代社会は「科学の時代」と言われ、「我が国は科学技術立国である」とも言われる。古い考え方、間違った考え方を否定するときに「非科学的だ」といった表現をされもする。しかし、科学とは何を指すのか、科学的とはどういうことか、改めて議論になることは少ない。それらは、我々が疑問なく共有する概念なのだろうか。本日の前半ではまず「科学とはどのような営みであるか」について取り上げる。科学の立脚点(と考えられている事柄)を深く掘り下げ、我々が自明のものと捉えている科学の考え方が実は自明ではないことを学ぶ。後半は、科学の発展の歴史、科学史について取り上げる。個々の科学史の詳細を取り上げるのではなく、前半からの流れを受けて、科学が(あるいは哲学が)対象をどのように捉えてきたかについて、生命の捉え方の変遷を中心に取り上げる。本日は以下の進行で行う。

1.<話し合い/発表>導入として、「科学ではないもの」を考える。血液型占い、星占いなどの非科学、所謂「似非科学」を取り上げる。血液型や天体運行等、科学が対象とする事物・現象でありながら、科学ではない、科学的とは考えられないものである。他にどのようなものがあるか、議論して発表する。

2.<話し合い/発表>次に、それらを似非科学と断じた根拠について取り上げる。非科学を定義した命題が成立するならば、その対偶は科学を定義するであろう。このようにして、受講者による「科学の定義」を導き出す。

3.<ピア・インストラクション>ここまでの議論で「再現性」に関する意見が出てくるであろう。そこで、「再現性」とそれに関連して「自然の斉一性原理」を取り扱う。「太陽は東から昇る」など、自明とも思える命題をいくつか取り上げて「科学的真理だと確信するまでに何回試行するか?」を考えさせる。この作業を通して、「再現性と斉一性原理」が現代科学における大前提であり、かつこのこと自体を証明することはできないことを理解する。

4.<講義>これまでの話で見えてきたように、科学の定義はそれほど簡単ではない。このことについて講義する。天動説と地動説等、科学史上のエポックとなった概念をいくつか題材として取り上げ、発見と正当化の文脈、科学における推論の過程(演繹的推論、枚挙的帰納法、アブダクション、仮説演繹法)、正しさの証明方法(検証、確証、反証)について講義する。

5.<話し合い/発表>次に、科学の歴史を取り上げる。ここまで「科学とは何か」「科学の考え方」について取り上げてきたが、「科学とはそのようなものである」ということ自体は昔から諒解・共有されていたのだろうか。科学とはどのような道筋を歩んできたのか。このことを考えるため、まず、「生命」と「生物」について取り上げる。「生命とは何か」「生物とは何か」を受講者に考えさせ、発表させる。そのうえで、生物学辞典(岩波書店)において、この2つの用語が循環的に説明され、独立した定義になっていないことを伝える。

6.<講義>そのうえで生命観の変遷を取り上げる。具体的には、アリストテレスによる生気論的生命観、自然発生説とレディー-パスツールによる対照実験、顕微鏡と細胞説、「プリンキピア」と機械的生命観、散逸構造と人工生命を取り上げ、これらの考えが物理や化学など他領域の進展、パラダイムシフトの影響を受けて発展してきたことを伝える。

7.<次週準備(反転授業)>高校の歴史教科書に掲載される科学技術年表を配布し、内容を紹介する動画を作成し公開する。次週までに、この年表から現在の科学技術に繋がる歴史的な技術を選び出しておくよう指示する。

<レポート提出課題>「科学とは何か」について、高校生に解説するつもりで平易な説明を考え、レポートとして作成する。

【第2回 科学技術および科学技術社会の様相】、【第3回】~【第8回】は割愛。

以上、授業概要案の一部を紹介したが、今後は本授業の内容・方法がKUGSの達成に合致しているか、またその達成度をどのように評価したらよいのかについて科目担当者で協議する予定である。

                           (文責 大学教育研究開発部門 西山宣昭)

●○●第19回カリキュラム研究会のお知らせ●○●

日時:10月22日(木)10時30分~12時 会場:総合教育1号館2階大会議室

テーマ:「改めて考える大学入試~中等教育機関の立場から~」

発表者:坂詰 貴司(芝中学校・芝高等学校教諭、大学教育開発・支援センター客員研究員)

概要:長い間大きな変化が見られなかった大学入試が昨年12月の中教審の答申が発表され、大きく変化する可能性が出てきました。その後今年の1月に発表された「高大接続改革実行プラン」、9月には高大接続システム改革会議の「中間まとめ」など具体的な内容が明らかになってきました。その中で一番注目すべきなのは、大学入学希望者学力評価テスト(仮称)でしょうか。そして来年の大学入試では、東京大学と京都大学が揃って新しい入試を実施する予定です。このような状況の中で、中等教育機関の立場から改めて大学入試を考えていきたいと思います。

●○●全学FD・SD研修会・第2回FDリーダー研修会のお知らせ●○●

テーマ:能動的学習を促す教育評価と授業設計

主催:教育企画会議FD委員会、大学教育再生加速プログラム(AP)検討委員会

後援:大学教育開発・支援センター

日時:11月2日(月)13時~17時    会場:自然研ワークショップ教室1

参加者:各学類から選出された教員1~2名(人間社会学域・理工学域については各学類のFDリーダー教員2名)、共通教育機構長が推薦した共通教育GS科目担当予定者・数名、学生部職員

【プログラム】

講演:「能動的学習を促す教育評価」【大学教育開発・支援センター 杉森 公一】

ワークショップ:「能動的学習の実践例の報告」「授業カタログ」、参加者のシラバスをもとにグループ討論を行う。授業内外での学生の能動的活動に注目したルーブリック作成とシラバス再構築を試行する。

成果発表:グループ討論をもとに得られた成果を、作成されたルーブリック、授業シラバスを用いて発表し、相互評価・意見交換を行う。