【No.562】
アクティブ・ラーニング型授業の支援体制

○●○アクティブ・ラーニング型授業の支援体制○●○

1.「平成27年度全国大学教育研究センター等協議会」参加報告

8月26日(水)~27日(木)に筑波大学にて開催された「全国大学教育研究センター等協議会」に参加した。今年度は、「学生を中心とした大学への発展に向けて」を全体テーマとして、第1日目はチューニングに関する全体講演に続いてエンロールメント・マネジメントと学生参画型FDに関する分科会が行われ、それぞれの先進的な取り組みが報告された。第2日目はアクティブ・ラーニングの評価、FDの再検討、カリキュラムの体系化をテーマとする3つの分科会が行われた後、全体で集まり各分科会での報告内容や議論が共有された。ここでは、「アクティブ・ラーニングの評価」分科会の概要を紹介する。

本分科会では、各参加校におけるアクティブ・ラーニング(以下AL)の教授法や成績評価方法などの現状と課題が報告された。初年次対象科目へのALの導入、既存の科目におけるAL導入状況の評価・認定、FD研修の実施を通した教員の意識とスキルの向上など、AL型授業を全学的に展開するために各校で多様な方策が採られていることが浮きぼりになった。他方、AL型授業による学修成果の評価に関しては、リフレクションやポートフォリオを活用した自己評価や、ルーブリックの使用などを計画、検討している大学は多いものの、まだまだ課題となっていることが共有された。

意見交換では、AL型授業の支援体制やAL自体の評価などについて議論が交わされた。支援体制に関しては、TAやTF(ティーチング・フェロー、北海道大学)、ALA(金沢大学)といった学生の活用事例などが紹介された一方で、そのような体制がなくても例えばピア・ラーニングによりALは可能であるとの意見も出された。評価については、そもそもALに関わる学修活動そのものを評価する必要があるのかという論点が取りあげられた。

2日間の協議会は、「学生を中心とした大学」の実現に向けて大学教育が直面している課題の大きさと各大学の取り組みの多様さをあらためて実感する場となった。本学のAP事業が学生にとってより良い教育・学習を実現するためのものになっているかどうか、常に問いながら今後の取り組みを進めていきたい。

 

2.ALAが参画する授業―前期ALA採用科目への見学・ヒアリング結果―

 AP事業のもと、今年度前期から人間社会学域と理工学域において、アクティブ・ラーニング・アドバイザー(ALA)制度が試行的に導入された。ALAが参画して展開されているアクティブ・ラーニングの実施状況を把握し、ALA参画による効果と課題を明らかにするため、ALA採用科目に対する授業見学とヒアリングを行った。7月の1ヶ月間に、7科目の授業(授業時間外支援の場合はその活動時間)を訪問した。訪問者は、杉森公一准教授、上畠洋佑特任助教(ともに大学教育開発・支援センター)、筆者の3名である。

訪問時、まず授業中(あるいは支援活動時間中)は、アクティブ・ラーニングとしてどのような学修活動が行われているか、それらの学修活動にALAはどのように関わっているのかという2点に着目して、授業の様子を見学した。授業終了後、担当教員にはALAの採用を希望した経緯やALA参画による効果と課題、ALAには学修支援の効果と難しさやALA研修会の効果などについて聴き取りを行った。結果の一部を以下に示す。

まず、学修活動についてはグループでの調査・発表や、個人あるいはグループでの演習問題といった活動が行われていた。それらの活動に、様々な範囲におよぶ助言や声がけ、学生の質問への応答、フィードバックなど多様な形でALAは関わっていた(表1)。活動内容や授業の進行等により、1人あるいは1グループに対してALAが対応できる時間はまちまちであったが、共通して、学生の視線の高さに合わせての声がけ、学生が理解しているところを確認しながらつまずいているところを一緒に解決していくような助言といった、一方向的に教えるのではなく学生に寄り添いながら支援するという姿勢がみられた。

表1 ALA採用科目におけるアクティブ・ラーニングに関わる学修活動とALAの関わり

学修活動(授業時間内)

ALAの関わり

グループでの調査、発表、論文執筆

(課題解決学習)

・発表準備(内容検討や資料作成など)や発表練習に対するフィードバック。

・グループでの検討内容の確認、助言。

・最終発表会における司会進行。

個人やグループでの演習問題(解答、問題作成)

・机間巡視しながら各学生、グループの進捗状況を確認。適宜、手が止まっている学生などに具体的な助言やヒント提示、声がけ。

・質問への応答(図示等しながら)、解説。

・学生が難しいと感じている問題、箇所についての教員への情報提供、共有化。

学修活動(授業時間外)

ALAの関わり

グループでの調査、発表、論文執筆

(課題解決学習)

・発表に向けた内容検討や資料作成への助言。

・論文検索方法や論文執筆のうえでの助言、書いた論文の内容確認や添削など。

個人での演習問題

・学生(希望者)の解答の確認とフィードバック。

・学生からの質問への応答(図示等しながら)。

 

 ALA参画による効果については、「授業内容を理解できていない受講生にも指導できる機会となり、底上げに役立った」や「学生のモチベーションが上がる」といった学生の理解度や動機づけを上げる点や、教員より年齢も近く同様の経験をしているALAの方が相談しやすい点などを複数の教員が挙げた。また、学修支援にあたることでALA自身の授業内容への理解度も深まったという声も多く聞かれた。

 他方、ALA制度の課題としては、「時間割の都合でALAになる学生を見つけにくい」ことや「難易度が高い授業内容の場合、学修支援の効果はALAの能力に依存してしまう」ことなど、当該授業で必要な学修支援に適しており、かつその時間に空いているALAをいかに見つけられるかという点が指摘された。

授業見学とヒアリングを通して、学問領域、授業の目的や形態、受講生の学年や規模などに応じてさまざまな学修活動が展開され、ALAが多様な形で参画していることがわかった。また授業担当教員やALAが、ALAの参画は受講生とALA双方にとって教育的効果があると実感していることが示された。今回の試行により、ALA制度という授業と結びついた形での学生による学生の学修支援の可能性と意義が明らかになった。これらの実践例や成果の発信を通じて、ボトムアップによるALA制度の学内普及を図っていきたい。

同時に、学生のアクティブ・ラーニングの充実化と質向上に向けたより良いALA制度の実現には、ALA制度自体の改善のみならず、カリキュラム等学生の学修を取り巻く幅広い要素との調整が必要なことも示された。ALAの公募制導入も含めてそれらの課題を解決する短期的・中長期的方策を検討し、ALA制度の改善を進めていきたい。

最後になりますが、この場を借りて、授業への訪問を快く受け入れてくださった授業担当教員、ALAのみなさまに深く感謝を申し上げます。

(文責 AP事業(アクティブ・ラーニング担当) 河内真美)